コラム
2024年1月18日
開業医が利用できる補助金・助成金|医院開業時に使えるものも紹介!
目次
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現在、医院・クリニックを経営している医師や、これから開業しようとしている医師の中には、「利用できる補助金・助成金があるのかどうか知りたい」と考えている人も少なくないでしょう。開業医が経営に使える補助金・助成金はさまざまで、経営改善につながったり、人材育成に役立ったりするものがあります。また、医院開業時に利用することで、金銭的な負担を軽減するものもあります。そこで今回は、開業医が利用できる補助金・助成金にはどのようなものがあるのか、要件や支給額などについて詳しく解説します。
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開業医が利用できる補助金と助成金の違い
医院開業時、もしくは開業後に、補助金・助成金を申請することで、事業を展開する上でのサポートを受けることができます。補助金と助成金は、どちらも事業者の事業展開を支援することを目的として給付されるお金ですが、その性質は異なります。
補助金は、主に厚生労働省所管の支援金を指し、雇用・労働関係を対象としたものがほとんどです。原則として、国・地方公共団体が提示した受給要件を満たしていれば、誰でも受給することができます。ただし、以前と比較すると、開業時に利用できる助成金は少なくなっているのが現状です。
一方、助成金は、主に経済産業省所管の支援金を指し、研究開発・ITなどといった専門的な分野を対象としたものがほとんどです。また、受給要件を満たしていたとしても、審査に通らなければ、支援金を受給することができません。
補助金・助成金によっては、限度額や補助率が異なりますが、どれも基本的に受給した金額を返済する必要がないため、開業時に負担となる資金繰りなどを軽減することが可能となります。
開業医が経営に使える補助金・助成金
開業医が経営に活用できる補助金・助成金には、以下のようなものがあります。
- 医療施設等施設設備費補助金
- IT導入補助金
- 感染拡大防止支援金
- キャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)
- 職場定着支援助成金
- 地域雇用開発助成金
「医療施設等施設設備補助金」は、老朽化が著しい設備の新築・改修や、へき地・過疎化地域の診療所を対象とした補助金です。また、「IT導入補助金」は、ITツールを導入する経費を一部補助するものです。ここからは、それぞれの補助金・助成金とはどのようなものなのか、補助率、支給額、受給要件などについて、詳しく解説します。
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医療施設等施設設備費補助金
「医療施設等施設設備補助金」とは、へき地医療の確保、臨床研修医の研修環境などの充実を図ることを目的とした補助金で、厚生労働省所管のものです。具体的には、へき地診療所整備事業、過疎地域等特定診療所施設整備事業、医師臨床研修病院研修医環境整備事業などがあります。へき地で診療所を開設しており、建物が老朽化している場合などは、この補助金を利用することができるでしょう。
補助額には下限金額があり、地域別に1平方メートル当たりの単価表が定められています。補助率は、補助対象経費の3分の1~2分の1です。補助金を受給するための要件は、各事業によって異なるため、詳細については以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生省 医療施設等施設整備費補助金交付要綱
IT導入補助金
「IT導入補助金」とは、中小企業などが自社の課題解決などを目的としてITツールを導入する際、その一部の経費を補助するもので、経済産業省が実施しています。ソフトウェアの購入・導入にかかる費用が補助の対象となります。補助額は、A類型が30万~150万円未満、B類型が150万~450万円以下です。補助率は、2分の1以下となっています。また、現在はコロナ禍ということで、「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられており、特別枠C類型の補助額が30万~450万円以下、D類型が30万~150万円以下となっています。特別枠の補助率は、3分の2以内です。
IT補助金の対象となるのは、あらかじめIT補助金事務局に登録されているITツールのみです。事務局に登録されているITツールは、ソフトウェア(業務プロセス)、ソフトウェア(オプション)、役務(付帯サービス)の3つに分かれており、補助金を申請するためには、業務プロセスに関するソフトウェアを導入することが条件となります。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】: IT導入補助金
感染拡大防止支援金
「感染拡大防止支援金」とは、新型コロナウイルス感染症に罹患している疑いのある患者と、そうでない患者が混在しないための動線確保など、院内の感染拡大防止対策に取り組む医療機関・薬局に対して費用を補助するものです。この支援金は、厚生労働省所管となります。例えば、待合室を混雑させないようなレイアウト変更、電話などの通信機器を用いた診療体制の確保などを行っている場合には、この支援金を活用することができます。
補助額の上限は、以下の通りです。
● 病院:200万円+5万円×病床数
● 有床診療所(医科・歯科):200万円
● 無床診療所(医科・歯科):100万円
● 薬局、訪問看護ステーション、助産所:70万円
補助金を受給するためには、新型コロナウイルス感染症の院内感染の拡大防止に取り組んでいることが条件です。新型コロナウイルス感染症に罹患している患者を受け入れていない場合においても、受給可能です。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」とは、パート、アルバイト、派遣社員などの非正規雇用者を企業内でキャリアアップさせることを目的とした制度で、厚生労働省が実施しています。例えば、パート、アルバイトなどの非正規雇用者のキャリアアップを図って正社員としたり、賃金の規定を改定したりした場合、この助成金を活用することができます。雇用者は助成金で人材育成をすることができ、従業員はこれによってキャリアアップを目指すことができるため、双方にメリットがあるといえるでしょう。助成額は、1人当たり最大72万円となっています。何を目的としているのか、企業規模によって助成額が異なるため、どのケースに当てはまるかについては事前に確認しておきましょう。
助成金の受給は、1事業所ごとに年間最大20人までとなっています。助成を受けるためには、まずキャリアアップ計画書を作成し、都道府県労働局長の確認を得ます。また、就業規則などに正社員転換制度を明記することも条件です。このような事前準備をせずに非正規雇用の社員を正社員化したとしても、助成金を受給することができないため、注意が必要です。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 キャリアアップ助成金
人材開発支援助成金
「人材開発支援助成金」とは、キャリアアップ、キャリア形成の促進による企業の競争率向上を目的とした助成金です。これは、厚生労働省が実施しているもので、実地研修(OJT)、机上研修(OFF-JT)などを行う企業が対象となります。人材開発支援助成金は、「特定訓練コース」「一般訓練コース」「教育訓練休暇付与コース」など7つのコースに分かれており、それぞれ要件や支給額が異なります。
キャリアアップ助成金の対象者は非正規雇用の社員であるのに対し、人材開発支援助成金は正社員が対象です。また、キャリアアップ助成金は雇用の処遇・安定を推進することを目的としているのに対し、人材開発支援助成金は正社員が高いスキルを持つことによって企業が発展することを目的としています。例えば、特定訓練コースの場合、助成額は中小企業のOJTで1時間当たり665円、助成率は45%です。訓練開始日が属する会計年度の前年度の生産性と、その3年後の会計年度の生産性を比較し、6%伸びている場合に生産性要件が満たされ、OJTの助成額は840円、助成率は60%となります。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 人材開発支援助成金
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)
「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金)」とは、高齢者・障害者などを雇用している企業を対象としている助成金です。これは、厚生労働省が実施しているもので、対象者別に「特定就職者困難コース」「生涯現役コース」「被災者雇用開発コース」など8つのコースに分かれています。
各コースの対象者、期間などによって要件や助成額が異なります。例えば、60歳以上65歳未満の高齢者や、母子家庭の母親を雇用している場合、最大で60万円支給されます。また、重度障害者などを除く身体・知的障害者の場合は、最大で120万円支給されます。重度障害者の場合は、最大240万円が支給されます。補助を受けるためには、どのコースにおいても共通しているのが、ハローワーク、地方運輸局、民間の職業紹介事業者からの紹介による雇用であること、対象者を継続して雇用していることなどが要件となります。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
職場定着支援助成金
「職業定着支援助成金」とは、企業の離職率低下を目的としている助成金で、厚生労働省が実施しているものです。職場の環境改善・制度改革など、労働者の定着を図る場合に活用できます。職業定着支援助成金は、研修制度、健康づくり制度、評価・処遇制度などを計画した際に支給される「制度導入助成」と、目標を達成した際に助成金が支給される「目標達成助成」の2つに分かれています。
制度導入助成の場合の助成額は、以下の制度において、それぞれ各10万円支給されます。
● 研修制度
● 健康づくり制度
● 評価・処遇制度
● 短時間正社員制度
● メンター制度
また、目標達成助成の場合の助成額は、最大で75万円支給されます。
助成金の支給要件は、雇用管理制度整備計画書の策定と認定、雇用管理制度整備計画書に基づく制度の実施です。各制度によって、それぞれ満たすべき条件もあるため、どの制度を導入するのか、検討する段階で確認が必要です。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 職場定着支援助成金
地域雇用開発助成金
「地域雇用開発助成金」とは、雇用機会が不足している地域を対象としているもので、事業所の設置などを行い、地域に居住する求職者を雇用した場合に支給される助成金です。これは、厚生労働省が実施しています。この助成金を受給するためには、対象とされている地域の事業者である必要があります。また、求職者については、ハローワークなどを通して雇用しなければなりません。
助成額は、例えば、設置・設備費用が300万円以上1,000万円未満で、対象労働者の雇用人数が3~4人であるケースにおいては、基本48万円となります。創業の場合は、対象労働者の雇用人数は2人からとなり、初回の支給は100万円となります。助成金を受給するためには、雇用拡大を目的とした事業に使用されること、計画期間内(最長18カ月間)の間に設置などが終わることが要件となります。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
医院開業時に使える補助金・助成金
医院開業時に利用できる補助金・助成金には、以下のようなものがあります。
- 創業補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- トライアル雇用助成金
「創業補助金」とは、開業などの創業時に国・地方公共団体が必要な経費の一部を補助してくれるものです。また、「事業承継・引継ぎ補助金」とは、事業承継をきっかけとした新たな取り組みに対して支給される補助金です。「トライアル雇用助成金」とは、安定的な雇用が難しい求職者に対し、ハローワークなどを介して一定期間雇用した場合に助成金が支給される制度です。以下、それぞれの補助金・助成金がどのようなものなのか、補助率、支給額、受給要件などについて見ていきましょう。
創業補助金
「創業補助金」とは、創業時に必要となる経費の一部を国・地方公共団体が補助してくれるもので、経済産業省の中小企業庁が実施しています。各年度によって名称変更されていますが、2018年度からは「地域創造的起業補助金」と呼ばれています。基本的には返済不要ですが、補助金を受給してから一定期間内に一定の利益があると、返還義務が発生することもあるため、注意が必要です。また、申請期間は毎年異なるため、中小企業庁のホームページなどを随時チェックする必要があるでしょう。
補助額の上限は、200万円となっており、補助率は、2分の1以内です。創業補助金を受給するためには、使用目的が事業の遂行に必要なものであることを明確に特定できる経費、交付決定日以降、補助事業期間内の契約・発注により発生した経費、証拠書類などによって金額や支払いが確認できる経費の3つが要件となっています。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:中小企業ビジネス支援サイト 創業者向け補助金・給付金(都道府県別)
事業承継・引継ぎ補助金
「事業承継・引継ぎ補助金」とは、地域経済の活性化に貢献する中小企業者から事業承継を受けたことをきっかけとし、新たな取り組みを行う際に支給される補助金です。創業補助金と同様、経済産業省の中小企業庁が実施しています。例えば、医院・クリニックの前経営者から事業承継を受ける際、事業再編や事業統合などに伴う経営資源の引継ぎに必要となる経費の一部を補助してもらうことができます。
補助金は、「経営革新」と「専門家活用」の2つに分かれています。経営革新の経営者交代型の場合、補助額は150万円以上250万円以内、補助率は2分の1以内です。M&A型の場合、補助額は100万円以上500万円以内、補助率は2分の1です。専門家活用の買い手支援型の場合、補助額は50万円以上250万円以内、補助率は2分の1となっています。経営革新と専門家活用のそれぞれの型で異なりますが、例えば、経営革新の経営者交代型の場合、事業承継を契機に経営革新に取り組む中小企業者などであることが要件となっています。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:中小企業庁 事業承継の支援策
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」とは、就業が困難な求職者の救済措置として制定された制度で、雇用創出を目的としています。これは、厚生労働省(ハローワーク)が実施している助成金です。例えば、職業経験や長期のブランクで安定的な就業が難しい求職者を、ハローワークなどを通して一定期間雇用した場合、助成金の支給を受けることができます。トライアル雇用助成金の支給対象期間は、最長3カ月間となっており、助成額は対象者1人当たり月額4万円です。助成金を受給するためには、1週間当たりの所定労働時間が30時間を下回らないこと、一定期間解雇したことのない事業者であることが要件となっています。詳細については、以下のサイトをご確認ください。
【参考記事】:厚生労働省 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
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まとめ
現在、さまざまな補助金・助成金がある中、開業医が利用できるものも数多くあります。これらを利用することで、医院の経営改善に役立ったり、人材育成の助けとなったりします。また、開業時に助成金の支給を受けることで、開業時の資金運用にも役立つでしょう。まずは、どのような補助金・助成金があるのかを知り、要件や支給額などをしっかりと確認した上で、医院・クリニックの運営に有効活用してください。