コラム
2025.02.06
オンライン時代に生き残るクリニックとは。医療モールは次世代型へ。
開業を検討されている医師の皆様の中には、医療モールでの開業を候補に考えている方もおられるかと思います。
近年、クリニックの集患方法はオンライン化が進み、コロナ禍を経てオンライン診療が加速し、クリニックの経営方法自体が変化してきています。同時に、医療従事者の働き方改革や地域への貢献などクリニックの在り方にも変化が必要です。
この記事では、医療モールも含めた不動産開発を行ってきた筆者が、クリニックや医療を取り巻く環境の変化に対応していくための「医療モールの新しい取り組み」、「オンライン活用による集患へのアプローチや採用課題への効果」、「医療モールを通じた地域貢献」について解説します。 医療モールでの開業を検討している皆様の参考になれば幸いです。
医療モールの進化が問われる背景
この30年、従来型の医療モール(※1)は、その多くが旧態依然とした構造のままコピーされ建設され続けてきました。しかし現実には、集患方法の変化・オンライン診療の普及・クリニックマーケティング・地域との関わり等、クリニックを取り巻く環境は大きく変化しています。そのため、従来型の医療モールから次世代型モデルへと変化していく兆しが現れてきています。 次世代型の医療モールは、地域に暮らす人の医療に対するハードルを下げ、地域住民の日常的な場・街の新たな拠り所になる場となるような、患者・地域住民・地域との新しい関わり方が求められています。医療モールも、単なる医療機関の集合体から、地域住民の日常と医療を結びつける複合施設としての在り方が求められてきています。
(※1_商業施設内医療モールではなく、主要都市駅前立地等の調剤薬局・クリニック積層型の医療モール)
「医療」と「日常」の融合、集患から集客へ
医療モールは、その多くが駅前立地にあることから、人通りの多さや、立て看板・建物看板でクリニックの認知度を高め集患につながることが、メリットの一つでした。 しかし昨今は、いざ病気になってクリニックに行こうと思ったときには、インターネット検索が主な選院手法となっています。つまり立地だけで集患できる時代から、クリニックのオンライン上のプレゼンスが集患上重要となってきているのです。
街の暮らしの一部になるようなコンテンツ(カフェ、ジム等)が同施設内に併設されている施設の場合、その施設は地域の人と日常的な接点があります。気軽に街の人が立ち寄ることができる要素の盛り込まれた、病気でなくても日常的に訪れる場所の近くにクリニックがあると、日々の生活の延長からクリニックの認知を獲得することが可能になります。また、医療モールの施設自体がオンライン発信を行ったり、来客者や地域住民がSNSでその施設コンテンツに関し積極的な発信をしている場合は、その施設に入居するクリニックの印象も向上していきます。地域の人々の日常の施設利用を通じて、クリニックの認知度を上げる仕組みを作り、立地以外にも集患メリットに寄与する施策を持つ医療モールが求められ、登場しつつあるのです。
このような流れの中、今後医療モール内での開業を考える際には、立地メリットだけを見て安易に開業地を決めず、医療モール内にある他のクリニックや医療モールの施設自体が自身の目指す医療の方向性・方針・顧客層と合っているかどうかを綿密に調査確認していくことが重要であると筆者は考えます。
オンライン診療をサポートする医療モール
オンライン診療は、コロナ禍を経て20代-30代を中心に普及し始めました。現在10代のオンライン世代も今後成人していき、オンラインサービスに慣れた世代が、働く世代やファミリー世代へと成長していきます。また技術の発展とともに、オンライン診療で受診する人口も世代を超えて増えていくことが予想されます。
オンライン診療での薬の処方については、院内処方を実施するクリニックの場合、処方頻度の高い薬のオンライン処方が一定数以上になってくると、クリニック経営にもメリットが生まれます。クリニックが薬を院内処方する場合、1回のオンライン診療で自宅に薬が届くようになるため、患者の手間も軽減し、受診体験の向上に繋がりクリニックへの印象も向上します。オンライン診療の院内処方は、クリニック側だけでなく患者側にもメリットがあるのです。
しかし同時に、オンライン診療における院内処方には課題も生じます。ロットで購入する薬や、配送資材も大量のストックが必要なため、薬だけでなく資材の保管スペースが必要となることです。また、薬の梱包・配送の手間も発生します。しかし、この物流面の課題をもサポートする仕組みをもつ医療モールも昨今登場し始めています。
これからの世代やオンライン時代の流れに乗り、オンライン診療を行うクリニックを経営する場合は、オンライン診療に伴う課題へのサポートのある医療モールでの開業も、ひとつの選択肢となるかもしれません。
開業したい医療モールが自身の方向性、方針に合致しているかどうかを確認するための大前提として、どのような医療を提供していきたいのか、診療科目はどうするのか、顧客層はどうするのかといった開業コンセプトをきちんと明確にしておく必要があります。
まずは開業コンセプトを明確にした上で、自身の方向性、方針との親和性を精査し、「この医療モールが自身の方向性に合致していたから決断した」というプロセスを踏んでから決断するこが大切です。