コラム
2021.11.29
医者のメリット・デメリットとは|医師になるか迷っているときのヒント
クリニック開業のための物件マッチングプラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。
医師になるかどうかを検討している人の中には、医師の具体的な仕事内容、働き方の形態、年収などについて気になっている人も多いのではないでしょうか。一言で医師といっても、その働き方は多様で、病院に勤務している勤務医もいれば、医院・クリニックを経営している開業医もいます。また、働き方によってその仕事内容や年収も大きく異なります。
そこで今回は、医師の仕事の特徴、医師になるメリット・デメリット、医師になるかどうか迷っているときのヒントなどについて解説します。
医者の仕事の特徴
医師は、「臨床医」と「研究医」の2つに大別されます。臨床医は病気・けがの患者の診療を中心に行い、研究医は大学などで疾患のメカニズムなど基礎医学を研究します。さらに、実際に患者を診る臨床医は、「勤務医」と「開業医」に分けられます。
臨床医の主な仕事内容は、医院・クリニックを訪れた患者を診察し、病名が特定できれば、治療を行ったり、薬を処方したりします。病名が特定できなければ、精密検査を行ったり、専門機関に紹介したりします。また、臨床医は、患者を診るだけではなく、病院の経営、看護師をはじめとするスタッフの管理など、診療以外の仕事も多く、多忙であるケースが多いです。
研究医の主な仕事内容は、実験を行ったり、症例データを収集したりして論文を作成し、学会や専門誌に発表し、医学の進歩に貢献します。その他、保健所などの衛生行政に携わっている医師もいます。
勤務医か開業医かによっても異なる
臨床医の仕事は、勤務医か開業医かによっても異なります。勤務医は、病院や診療所などに雇用されて勤務する医師であり、開業医は、自身で医院・クリニックを経営し、医師であると同時に経営者でもあります。
勤務医の仕事は、診療科によって大きく異なります。例えば、外科と内科の場合では、1日のスケジュールが違います。外科の中でも消化器外科や脳外科などチーム単位で仕事を行う場合は、さらに働き方の形態が異なるでしょう。内科の場合は、午前中に診療を行いますが、外科の場合は、この時間帯に手術を行います。また、勤務医は当直業務のある日があり、その場合は日勤を終えた後に待機し、翌朝まで勤務します。さらにオンコール担当となる日もあり、呼び出しがあればすぐ病院に行く必要があります。また、大学に所属している勤務医の場合、診療を行いながら、論文執筆なども行う必要があります。
開業医の仕事は、勤務医とは異なり、チームプレイではありません。内科、小児科、耳鼻科などのクリニックが多く、医師自身とアルバイトの医師合わせて2~3人程度の規模であるため、病院のようなカンファレンスも必要ありません。診察を受けにくる患者も重篤な疾患であることが少なく、対応できない場合は、大学病院などに紹介することとなります。開業医は、勤務医と異なり、スタッフとの定期的な面談や給与の決定を行う必要があります。さらに、集患対策も自身で行わなければなりません。情報交換や病診連携を図るために、地域の医師会の会合などにも参加しなければならないでしょう。
勤務医・開業医の年収
以下の表は、医師の平均年収と、勤務医・開業医の平均年収をまとめたものです。
<医者の平均年収>
| 平均年収(万円) |
医師全体 | 約1,169万円 |
男性 | 約1,274万円 |
女性 | 約1,026万円 |
<勤務医・開業医の平均年収>
| 平均年収(万円) |
勤務医 | 約1,491万円 |
開業医 | 約2,763万円 |
医師全体の中でも、女性より男性の方がやや平均年収が高いことが分かります。会社員の場合、男性の平均年収は女性の1.43倍といわれているため、医師は会社員と比較してみても、性差の少ない職業であるといえるでしょう。
また、平均年収は、勤務医か開業医かによって大きく異なり、開業医の年収は勤務医の年収の約1.85倍です。さらに、診療科によっても年収は異なります。例えば、開業医における内科の平均年収は約2,424万円ですが、小児科の場合は約3,068万円、眼科の場合は約1,512万円となっています。同じ診療科であっても、診療方針や経営戦略によって大きく年収に差が出るケースもあります。
【参考記事】:医師(勤務医・開業医)の生涯年収の平均は?本当にもうかる仕事?
医者になるメリットとは
医師になるメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 人に感謝されることが多い
- 社会的信頼性があり尊敬される
- 働き方が多種多様
- なくなることのない職業のため安定している
医師の仕事は、患者の健康や生命を守ることです。治療が終わった後は、多くの患者から深く感謝されることでしょう。また、医師という職業は、社会的信頼性が高いため、周囲から尊敬される機会が多いです。勤務医、開業医、研究医などさまざまな働き方ができるのも大きな魅力といえるでしょう。さらに、高齢化が進む現在、医師が不足しているため、働き口に困ることなく安定的に働くことができます。
ここからは、それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
人に感謝されることが多い
医師は、患者を治療して病気を治したり、患者の健康を守るために検査などを行って病気の予防に努めたりします。そのため、患者の病気やけがが良くなったときには、感謝されることが多いでしょう。
多くの患者は、診察が終わった後、「ありがとうございました」「お世話になりました」と声を掛けてくれます。もちろん、他の職業でも人の役に立っているものはたくさんありますが、医師は患者やその家族に直接感謝を伝えてもらえる場面が多々あるといえるでしょう。また、患者やその家族に感謝されるだけではなく、医療行為は社会にも大きく貢献しているため、やりがいや達成感を得られることが多いといえます。
社会的信頼性があり尊敬される
医師は、高い社会的信頼性が得られる職業です。その理由としては、難関といわれる医学部に合格し、6年間にわたって知識と技術を学び続け、医師免許を取得していることが挙げられます。医学部の試験には面接もあり、学力だけではなく人格も問われるため、人間性が高い人でなければ医師になるのは難しいといえます。
医師は、周囲から「立派な人物である」と評価されることが多く、高い社会的信頼を得ることができます。また、社会的信頼性が高いため、一般の会社員などでは難しい高額の住宅ローンを組むことができたり、ハイクラスのクレジットカードの審査に通ったりもします。このように、医師は、学歴、お金、社会的地位の3つを全て満たしており、周囲から尊敬される存在であるといえるでしょう。
働き方が多種多様
医師は、多くの診療科の中から自身に合ったものを選択することができます。そして、病院・診療所などで勤務医として働いたり、医院・クリニックを開業して開業医として働いたり、大学・研究機関で研究医として働いたりすることができます。
キャリアにこだわりがなければ、アルバイトとして働くことも可能です。アルバイトとして働いたとしても、時給は高く、同年代の会社員よりもはるかに高い収入を得ることができるでしょう。
患者と直接コミュニケーションを図ることが苦手な人は、外科や麻酔科などを選ぶことができます。また、手先が器用でない人は、精神科や産業医などといった選択肢があるでしょう。
また、勤務医としてのスキルを積み上げてから、自信がついたところで開業医になることも可能です。医師も人間であるため、得手不得手がありますが、どのような場合においてもさまざまな選択肢があり、自身に合った働き方ができるのが大きなメリットであるといえるでしょう。
なくなることのない職業のため安定している
日本では現在、医師が不足しています。医師の数は、年々増加傾向にありますが、医師不足はまだまだ解消していません。医師不足の原因は、医師の数の絶対的な不足、地域による医師不足、業務拡大と働き方改革による医師不足など、さまざまです。このような状況から、医師免許を持っていれば、働き口に困ることはないといえるでしょう。
また、医師は世の中に必要不可欠な「エッセンシャルワーカー」です。人々の生活の根幹を支える医療に従事しているため、その仕事がなくなることはありません。
AI(人工知能)の台頭により、「将来的に仕事が奪われるのではないか」などと心配する人もいるかもしれませんが、診療の全てをAIが行うことは不可能でしょう。医療現場へのAIの導入によって仕事内容が変わることはあっても、医師の仕事がなくなることはありません。むしろ、AIの導入によって、新たな仕事が生まれる可能性もあるでしょう。このように、医師という職業は、長期的に安定して働くことができる仕事であるといえます。
医師になるデメリットとは
医師になることのデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 長時間労働・過重労働になりがち
- 責任やクレームによって精神的にダメージがある
- プライベートな時間が削られる
例えば、勤務医の場合、当直の日であれば、1日の仕事をこなしてから、さらに翌日まで働く必要があり、長時間労働となります。また、患者の健康や生命を守る仕事であるため、その責任は大きく、患者からクレームが入ることもあります。さらに、緊急の手術が入った場合は、プライベートな時間が減ることもあるでしょう。ただし、どのような職業にもメリットもあればデメリットがあり、医師に限ったことではありません。ここからは、それぞれのデメリットについて、詳しく解説します。
長時間労働・過重労働になりがち
勤務医の場合、当直の日には、その日だけではなく翌朝まで勤務する必要があり、手術が長時間にわたる事態もあり得るため、長時間労働となります。さらに、若手の頃は学ぶべきことが多いため、過重労働となりがちです。また、医師が不足している病院に勤務した場合も、診るべき患者数が増え、過重労働となってしまうこともあるでしょう。
開業医の場合、医院・クリニックの営業時間が終われば患者が来ることはありませんが、競争の激しい地域の場合は365日営業しているケースもあり、激務となってしまうことも考えられます。診療科によっては、1日中立ち仕事となってしまい、体力的に負担が出てくる場合もあるでしょう。
責任やクレームによって精神的にダメージがある
医師という職業は、人命に関わる仕事であるため、その責任は重大です。ミスは許されないため、常に神経を張り詰めておく必要があるでしょう。医療過誤があると、大きな訴訟問題に発展する可能性もあります。特に、開業医の場合は、患者からのさまざまなクレームに対応する必要があります。例えば、「待ち時間が長い」「治療内容の説明に納得がいかない」「接遇に不満がある」などといったケースです。対応を誤ると、クレーム、苦情がエスカレートすることもあり、本来の診療業務に支障を来す場合もあります。また、責任の大きさによるプレッシャー、クレーム対応へのストレスから、精神的にダメージを受けることもあるでしょう。
プライベートな時間が削られる
先述のように、医師の仕事は、長時間労働や過重労働になりがちであるため、家族や友人と過ごす時間を十分に取れないことも多いでしょう。
例えば、勤務医の場合は、オンコール担当の日だと家にいても呼び出されることがあるため、常に待機しておく必要があり、家族で外出するなどといった自由が利きません。また、長時間労働で疲労しているため、翌日が休みであったとしても、家族や友人と遠出を楽しむ体力がないこともあるでしょう。
開業医の場合は、医師であると同時に経営者でもあるため、日々の診療業務とは別に、さまざまな業務があります。その中で、技術を研さんしたり、最新の情報をキャッチアップしたりする必要があるため、医院・クリニックが休みだったとしても、休日を返上しなければならないこともあるでしょう。一般的に、勤務医と比べて開業医の方がプライベートな時間を取りやすい傾向にありますが、勤務医であっても開業医であっても多忙であることには変わりなく、プライベートな時間が少ないといえるでしょう。
医者になるか迷っているときのヒント
医師になるべきかどうか、迷っている人もいるかと思います。そのような場合は、以下の2つのポイントを参考にすると良いでしょう。
- 将来どうなりたいのかをイメージし、優先順位を明確にする
- 医師の中でもさまざまな働き方があることを知ると良い
医師は、まず研修医としての下積み時代があり、その後、勤務医となって経験を積んでいきます。そして、さまざまなスキルを身に付け、独り立ちできるようになった際に、開業医となることができます。まずは、自身の将来像をイメージし、優先順位を明確化することが大切でしょう。医師という職業には、メリットもあれば、デメリットもあります。女性であれば、もしかすると激務のために婚期が遅れることがあるかもしれません。そのようなことを含めた上でも、やはり人の生命に携わる医師という職業に就き、一人でも多くの患者を助けたいという気持ちがあれば、目指すと良いでしょう。
また、医師には多様な働き方があります。外科や内科などといった診療科もさまざまであり、働く形態においても、病院などに勤務する勤務医から、医院・クリニックの経営者となる開業医、医学の発展に寄与する研究医など、選択肢が多々あります。そのため、医師として不得手な分野があったとしても、得意とする分野を生かして働くことができるでしょう。まずは、どのような働き方があるのかを知った上で、自身に合った働き方を選択すると良いでしょう。
医師という職業は、継続的な学びの姿勢が求められる仕事です。そのため、知的向上心のある人に向いているでしょう。また、ハードな仕事でもあるため、体力と精神力に自信があるかどうかも大きなポイントであるといえます。さらに、人命に関わる仕事であるため、「人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」「人の命を助けたい」などといった使命感があることが大切でしょう。
まとめ
医師は、「臨床医」と「研究医」に分かれており、臨床医の中には「勤務医」と「開業医」があります。どの職に就くかによって仕事内容や年収が大きく異なってきますが、勤務医であれ、開業医であれ、患者の健康を守る仕事であることには変わりありません。
医師を目指すのであれば、まず医師になるというのはどのようなことなのか、メリット・デメリットを正しく理解することが大切でしょう。その上で、医師の多様な働き方の中から、自身に合ったものを選択してください。