コラム
2023.09.16
開業医のための閉院完全ガイド│理由、ながれ、データ、注意事項、医療法人の場合などを完全網羅
クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム 医院開業バンク 編集部です。 今回はすでに開業医である方が、閉院をする際に網羅しておくべき情報をお伝えします。閉院をお考えの際には、医院開業バンクの閉院相談サービスをご活用ください。 医院開業バンクでは、クリニックの開業・閉院・経営に関するお役立ち資料を無料でご提供中です。
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閉院とは
閉院とは
デジタル大辞泉によると、「病院など「院」と名のつく施設・機関がその業務を停止し、閉業すること。」とされています。「地域の医療に貢献したい」「自分の求める医療をより多くの患者に届けたい」そんな思いを抱いて開業をしたクリニックでも院長の高齢化や経営不振など、さまざまな理由で閉院を余儀なくされるケースが増えてきています。
今回は、開業医の閉院について、データやその理由、ながれ、注意点、閉院以外の選択肢など、さまざまな観点からまとめてみます。
閉院に関するデータ(閉院数、開院数、平均年齢 等)
クリニック経営者の平均年齢 66歳
過去10年で10歳も上昇しています。一方でクリニックも含めた医療業の後継者不在率は73.6%とされ、全産業平均の65.1%を大きく上回るというデータも出ています。経営者の高齢化と後継者不在が顕著なのがクリニック経営なのです。
クリニックの数 97,000軒
自由開業制のもとで医師の開業志向は根強く、クリニックは21年4月時点で約97,000軒と、10年間で10,000軒近く増加しています。特に東京や大阪など都市部を中心に開業が相次いでおり、患者の獲得競争が熾烈化しています。そのような中で、生き残りや集患増をかけて、自由診療の導入や在宅、オンライン診療の導入するクリニックも増えてきており、院長への負担は日に日に増してきています。
年間の閉院数 500件以上
さまざまな経営努力の結果、やむを得ず「閉院」という選択をするクリニックの数も増加傾向にあり、全国的な閉院数はここ数年、過去最高を更新し続けていいます。クリニックの開設数から閉院数(廃止・休止数)を除いた純増(減)数は、2008年度に初めて純減となり、その後、年度によって増減を繰り返し直近の2017年度調査では、58施設の純減となっています。
閉院のメリットとデメリット
医院の継続・閉院を巡って家族内で意見が割れる、対立するといったケースも見聞きします。一方でクリニックは地域のインフラでもあり、患者や地域への影響という点も見過ごせません。閉院のメリット、デメリット以下のとおりまとめてみました。
メリット
- 自分のタイミングで引退ができる
- 後継者問題で悩まなくて済む(家族を煩わせなくて済む)
デメリット
- 患者がかかりつけ医を失う
- 従業員が職を失う
- 地域医療が失われる
- 閉院するためにコストが掛かる
閉院の理由
クリニックごとに事情も異なることから、閉院の理由はさまざまですが、大別すると以下の4つの理由、または「院長の高齢化、経営難が追い打ちをかける」など、複数が絡まり合い閉院を選択されるケースが多くなっています。
- 院長の体調不良、高齢化
- 後継者不在
- 患者数減少による経営不振(コロナの影響)
- 経営実務の負担(医療と経営の両立)
閉院の手続き、ながれ、いつ始めるのか
実際に閉院を決められた際のながれは以下のとおりです。詳細は当社ダウンロード資料「開業医のための閉院完全ガイド」にまとめています。無料資料をご希望の方は下記から「閉院ガイド希望」とフォームでご送信ください。
事前準備
- 本当に閉院すべきか考える
- 閉院に向けてのスケジュール立案
後継者不在の場合は閉院以外の選択肢もあるため、即閉院ではなく、まずは他の方法も検討してみることをおすすめします。
医療法人の場合
- 各種解散に関する書類の提出
- 各種登記
- 清算手続き
- 官報での公告
- 出資持ち分の払い戻し(出資持分あり医療法人の場合)
- 患者や従業員、取引業者への説明
- 不動産等に関する対応
なお、医療法人は廃業(解散)の事由が医療法55条に「定款に定めた解散事由の発生」「他の医療法人との合併」「社員の欠乏」などの7つと定められており、この事由により解散認可申請と解散届など提出する書類が変わってきます。
個人の場合
- 各種廃止に関する書類の提出
- 患者や従業員、取引業者への説明
- 不動産等に関する対応
閉院準備はいつ始めるのか
不動産に関する対応等を考慮すると6ヶ月前~1年前から、詳細なスケジュールの検討などを始めることをおすすめします。また、さまざまな事情で急きょ診療所の継続が困難になった場合には、医療法第八条の二に基づき、「休止後10日以内に届出」が必要です。なお、休止は原則1年間は認められますが、1年を超える場合は保健所への相談が必要になってきます。閉院までのながれチェックリストを詳細は当社ダウンロード資料「開業医のための閉院完全ガイド」にまとめておりますので、ぜひご覧ください。
閉院にかかる費用
閉院にかかる金額については、クリニックの規模や選定業者によりさまざまですが、場合によっては1,000万円以上掛かるケースもあります。
閉院にかかる主な費用
- 建物の原状回復または取り壊しの費用
- 医療機器、什器、備品等の処分費用
- 医療用品、薬剤などの医療廃棄物の処分費用
- 従業員の退職金
- 借入金の残債の清算
- 登記や法務手続きに関する費用(専門家に依頼をする場合)
閉院に際しての課題・注意点
閉院に際しての課題
- 手続きが分からない(各種届出、従業員、法人解散)
- 不動産や医療機器、什器、備品の処分
- 退職金の受け取り方
- 従業員の処遇
- 閉院後の自分自身の生活(勤務先の確保)
- 出資金の払い戻し(出資持分あり医療法人の場合)
注意点
閉院後もカルテ(5年)、レントゲンフィルム(3年)など保管をしなければならないものがある
以上を診療を続けながら行うという点で、「大変」「難しい」と感じられるケースも多いようです。特に、カルテやレントゲンフィルムの保管については、「閉院して終わり」と対応が漏れてしまうケースもあるようですので注意が必要です。
閉院以外の選択肢 第三者への承継
既に開業しているクリニックを引き継ぎ運営することを指す医院の「承継」。
親族の中に既に開業している医師の方がいるのであれば例えば親子間でのクリニック承継、また親族に医師がいない場合でも第三者の医師が運営しているクリニックを譲り受ける方法があります。承継のメリット、デメリットは以下のとおりです。
メリット
- 患者の継続治療が可能である
- 医院売却では売却代金を受け取れる
- 医院売却では医院の価値も評価してもらえる
注意点
- 医院継承により治療中の患者が別医院へ移る
- 旧医院従業員との不仲や対立のリスク
ポイントは、「閉院前=開業中に承継をすること」です。診療時間を短縮したり、診療日を減らしたりした後の承継の場合は、営業権評価額=売却額が低くなってしまう可能性がるためです。
また、承継価格については、営業権評価額の他に、不動産や内装、機器、院長交代による患者減の考慮等、さまざまな条件が関係することから、目安を示すことは難しいです。金額の大小もそうですが、大切な医院、患者、従業員を信頼して任せられるかどうかが、承継における最も重要なポイントになります。承継・閉院どちらの判断をするにせよ、開業医引退後はその後の資産形成についても併せて考えておきたいところです。老後の資産形成についてはこちらの記事を参照ください。
【参考記事】:医師としての働き方と退職後の老後資金
【参考記事】:医師(勤務医・開業医)の生涯年収の平均は?本当にもうかる仕事?
当社で対応できること
閉院に関する各種対応・手続きおよびサポート
- -閉院手続きの書類作成代行
- -不動産の再利用
- -什器備品の売却、下取り先の紹介
- -再就職先の斡旋
- -法人解散手続き業務の支援(税理士、司法書士紹介)
- -閉院、承継、法人解散時に向けた税務対策
承継に関する各種対応・手続きおよびサポート
- -承継相手の募集(仲介会社紹介含む)
- -承継相手との条件調整支援(仲介会社紹介含む)
- -承継のための各種手続き代行・支援
- -再就職先の斡旋
- -閉院、承継、法人解散時に向けた税務対策
まとめ
クリニックの閉院について詳しく見てきました。日々の経営努力は当然のことながら、万が一への備えとして、承継や閉院についても日頃から考えておかれることをおすすめします。医院開業バンクの閉院サポートを併せてご検討ください。資料のダウンロードはこちらから。