コラム
2021.10.29
医院の新規開業の方法と注意点|コロナ時代の開業についても解説!
クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。
医師としてキャリアを積んだ人の中には、「自身の医院を開業したい」と考えている人も少なくないでしょう。医院を新規開業するためには、さまざまな準備と各種行政手続きが必要となります。開業を成功させるためには、しっかりとした計画を立て、それに沿って開業準備を進めることが大切です。ここでは、医院・クリニックの新規開業方法と開業時の注意点を解説するとともに、コロナ時代の新規開業についても説明します。ぜひ、理想のクリニック開業のための参考にしてください。
医院・クリニックの新規開業の方法
医院・クリニックを新規開業する際には、さまざまな手続きや準備が必要となります。まずは開業コンセプトを決め、開業地を選定し、資金調達をするなど、踏むべきステップが数多くあります。また、各種行政手続きも不可欠となるため、開業まで約1年半~2年の期間を見ておくと良いでしょう。
医院・クリニックを開業したいと思ったら、事前に開業地の人口構成など綿密な調査をし、検討を重ねる必要があります。資金調達のための事業計画書作成などについては、専門的な知識も必要となります。また、開業地を選定する場合についても、医療機関が入居できる物件にはさまざまな規定があるため、医療物件探しに精通した専門家のアドバイスを受けることにより、開業の準備がスムーズに進むでしょう。
医院・クリニックの開業には、サポートを行ってくれるサービスなどの利用がおすすめです。医院開業バンクでは、医院開業物件を多数掲載しており、検索・ピックアップ・比較検討が可能です。また、開業コンサルタントなどの専門家を簡単に探すことができ、疑問などがあれば相談することも可能です。開業を検討している人は、ぜひ医院開業バンクをご利用ください。
開業するための準備
開業するための準備に必要な項目としては、以下のようなものが挙げられます。
開業の準備項目 | 内容 |
開業コンセプトの決定 | 「どのような患者にどのような治療を提供したいのか」を決定する |
開業地の選定 | 医院・クリニックの形態および開業場所を選定する |
事業計画書の策定 | クリニックを軌道に乗せるための計画を立てる |
資金調達 | 金融機関との借り入れ交渉を行い、資金を調達する |
内装・設計 | 内装設計を決め、施工会社に発注する |
医療機器の選定 | 開業コンセプトに合った医療機器を選定する |
スタッフの採用 | 看護師や受付スタッフなどを募集、採用する |
広告・宣伝 | インターネットと紙媒体の両方を使って医院を宣伝する |
内覧会の実施 | 内覧会を行い、施設や診療内容を地域住民に周知する |
このように、開業するに当たってやるべきことは数多くあります。各ステップで留意しなければならないことはありますが、最初に決める開業コンセプトが全ての事業計画に大きく影響します。例えば、開業地の選定においては、開業コンセプトに合ったエリアを探す必要があり、内装・設計においては、医院・クリニックのデザインも開業コンセプトをベースに考えます。また、必要となる医療機器も開業コンセプトによって異なってきます。そのため、「どのような診療をしている医院・クリニックなのか」といった開業コンセプトについては、熟考することが大切です。考えがまとまらない場合は、開業コンサルタントや開業支援機構に相談すると良いでしょう。
また、開業資金を準備するための方法として資産形成も併せて行うことをおすすめします。「医師資産形成.com」などの医師専門の資産形成サービスがお勧めです。
開業に必要な行政手続き
医院開業時には、行政への届け出や手続きが必要となります。各種手続きには、以下のようなものが挙げられます。
手続き | 提出先 | 提出期限 |
診療所開設届 | 保健所 | 診療所開設日後10日以内 |
エックス線装置備付届 | 保健所 | 診療所開設日後10日以内 |
保険医療機関指定申請書 | 管轄の厚生局 | 保健医療機関の指定を受けようとするとき(毎月の指定申請締切日については窓口に問い合わせ) |
施設基準届出書 | 管轄の厚生局 | 毎月1日 |
個人事業開設届 | 管轄の税務署 | 事業の開始等の事実があった日から1月以内 |
青色申告承認申請書 | 管轄の税務署 | 青色申告しようとする年の3月15日まで |
源泉徴収の納期特例に関する届出書 | 管轄の税務署 | 提出期限なし |
スタッフの雇用保険、健康保険、厚生年金、労災保険 | ●雇用保険:管轄のハローワーク ●健康保険、厚生年金:管轄の年金事務所 ●労災保険:労働基準監督署 | ●雇用保険:翌月10日 ●健康保険、厚生年金:5日以内 ●労災保険:10日以内 |
防火管理責任者 | 管轄の消防署 | 防火管理責任者を選任したとき |
開業する地域や診療科によって必要となる手続きは異なりますが、一般的な医院・クリニックでは、上記の手続きが必要となります。自身の診療科や開業コンセプトを念頭に置いて、どのような手続きが必要なのかを事前にしっかりと確認し、申請漏れがないようにしましょう。手続きによっては、提出期限があるため、まずは開業が決まった段階で関係諸官庁に相談に行くことで、その後の手続きがスムーズに進むでしょう。
開業の流れ・スケジュール例
それでは、ここまで解説した開業準備や各種手続きなどについて、どのような流れで行えば良いのか、スケジュール例を紹介します。
12カ月前 | 6カ月前 | 4カ月前 | 1カ月前 | ~開業 |
開業コンセプトの決定 | 資金調達 | 内装・設計 | スタッフの採用 | 内覧会の実施 |
開業地の選定 | 医療機器の選定 | 広告・宣伝 |
上記はあくまで一例であり、医院・クリニックを戸建てにする場合は、建設期間があるため、開業までさらに長い期間を要します。テナントの場合であっても、開業地が決まってから約半年~9カ月の期間を見ておくと良いでしょう。開業地や物件選びが難航すると、開業までに数年かかるケースもあります。
開業前の職場に勤務しながら開業準備を進める場合は、休日を利用するしかないため、上記のスケジュール例よりも長い期間が必要となるでしょう。
また、医療モールなどに開業する場合は、すでにスケジュールが決まっていることが多く、自身の都合に合わせて開業準備を進められない点にも注意が必要です。
このように、医院・クリニックの開業には時間がかかり、その過程において金融機関の融資の審査など、さまざまなことが必要となります。そのため、自身の希望する開業予定日に合うように綿密なスケジュールを立て、準備を進めていくことが大切です。
医院の新規開業に必要な資金
医院の新規開業に必要となる資金を項目別にまとめると、以下のようになります。
項目 | 概要 | 金額の目安 |
内装造作費 | 院内の床、壁、天井の組み立て、装飾、照明、空調など | 約2,400万円 |
医療機器 | 電子カルテ、一般撮影装置、超音波診断装置、内視鏡など | 約2,000万円(内科) |
什器備品 | 待合室ソファ、診察机、椅子など | 約200万円 |
土地・建物費用 | 賃貸・分譲、診療科によって異なる | ●分譲:約3,000万円~(内科) ●賃貸(敷金・礼金・仲介手数料・前家賃):約400万円 |
医師会入会金 | 医師会に入会する場合に発生 | 約200万円 |
広告宣伝費 | ホームページ、チラシ、リーフレットなど | 約300万円 |
消耗品予備費 | 診察券などの印刷物、事務用品、医薬品など | 約200万円 |
医療機器に関しては、開業コンセプトや診療科によって大きく異なります。また、土地・建物費用も賃貸にするか、分譲にするかによって違い、診療科によっても必要な敷地面積が異なってきます。
医院新規開業時の注意点
医院新規開業時には、失敗しないように注意しなければならないことがあります。新規開業時の主な注意点としては、以下のようなものが挙げられます。
- 開業には綿密な計画性が必要
- 手続き申請は忘れずに行う
- 悪質な開業コンサルタントに注意
開業に際しては、無理のない資金計画を立てるなど、緻密な計画性が必要となります。また、行政手続きは数多くありますが、必要な手続きは全て申請しなければなりません。開業には、さまざまな専門的知識が必要なため、開業コンサルタントに相談することも多いかと思いますが、「サービスが充実していないにもかかわらず、料金が高い」などといった悪質なコンサルタントには、注意が必要です。
それでは、医院新規開業時の注意点を具体的に見ていきましょう。
開業には綿密な計画性が必要
スケジュール通りに進まないことは、開業が失敗する原因の一つです。開業を決めたとしても、実際に開業して患者が来院しなければ、医院が収入を得ることはできません。
勤務していた病院を辞めていた場合、開業準備が難航すると無収入の期間が長くなり、生活苦から勤務医に戻るといったケースもあります。そのため、遅滞や各種手続きの漏れがなく、開業準備を進めることが肝要です。一連の流れをスムーズに進めるためには、早い段階で専門家である開業コンサルタントに相談するのも方法の一つでしょう。また、金融機関の融資を円滑化させるためにも、無理のない資金計画を練るなど、緻密な計画性が必要であるといえるでしょう。
手続き申請は忘れずに行う
開業に当たっては、各種行政手続きが必要不可欠です。各種手続きは、それぞれの提出先や提出期限が異なり、開業する地域、診療科、開業コンセプトによっても必要な手続きが異なってくるため、事前に入念な確認が必要です。
開業のための手続きは多岐にわたるため、手続き漏れに十分注意しなければなりません。手続き漏れが発生した場合、その他の開業準備が整っていたとしても、開業できない場合があります。自身の医院にはどのような手続きが必要なのかを確認するためには、所管官庁に一度相談に行くことをおすすめします。また、手続きに不安がある場合は、開業コンサルタントに代行を依頼するのも良いでしょう。
悪質な開業コンサルタントに注意
医院を開業するためには、さまざまな準備や手続きが必要となり、専門知識を要する場面も数多くあります。そのため、サポートを行ってくれるサービスの利用がおすすめですが、中には悪質な開業コンサルタントも存在するため、注意が必要です。
本来、開業コンサルタントは、少しでも低コストで医師を開業に導き、経営の安定化のサポートをしなければなりません。しかし、自身の親しい業者を優先的に紹介し、あたかもその見積もりが最も安いように見せかけることもあります。また、契約締結時にバックマージンをもらうコンサルタントもいます。さらに、実際にはあまり経験がないにもかかわらず、「ノウハウや実績が豊富である」と見せかけ、高額な料金を請求するコンサルタントも存在します。
このような悪質な開業コンサルタントをしっかりと見極めるためにも、まずは開業コンサルタントの料金体系やサービス内容を比較検討することが大切です。また、契約時には口約束ではなく、しっかりと契約書を交わしましょう。
コロナ時代の医院の新規開業は成功するのか?
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、病院の経営は厳しい状態にあり、長期化が予想されています。日本病院会など3団体が公表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)」によると、全国の27.2%の病院で賞与が減額され、0.8%の病院で賞与が支給されていないことが分かりました。
新型コロナウイルス感染症防止のため、また、医療資源を新型コロナウイルス感染症患者に集約するために、多くの病院で予定されていた入院や手術が延期されています。さらには、患者の受診控えによる外来患者数減少などが原因で、病院経営が厳しい状況にあります。
このような「Withコロナ時代」の新規開業は、平時と異なり厳しい状況にあることは事実ですが、レイアウトや空調設備など感染防止対策を最大限に行い、万全の体制で開業に成功したというケースもあります。そのため、「コロナ禍中で新規開業しても成功しない」とは一概に言い切れません。
コロナ禍の現在において新規開業することには、メリットとデメリットの両方があります。
以下は、主なメリットとデメリットです。
<メリット>
- 新型コロナウイルス感染症による影響を考え、競合が開業を延ばしているため、ライバルが少ない
- 不動産賃貸や建物価格が下落しているため、開業準備のコストが下がる可能性がある
- 金融機関の金利が低い
- 事業縮小や撤退が増えていることから、テナントに空きが多い
<デメリット>
- 新型コロナウイルス感染症の拡大の状況により、患者数に影響が出る
- 感染防止対策のために初期投資額が膨らむ
- コロナ禍でも受診・通院が必要となる患者を確保するため、専門性を高める必要がある
「Afterコロナ時代」には、医院開業ラッシュが予想されています。そのような観点から見ると、「Withコロナ」の現在は、医院開業のチャンスであるともいえるのです。
まとめ
医院開業のための準備、必要となる行政手続き、スケジュール例について、詳しく紹介しました。開業を成功させるためには、緻密な計画性が必要不可欠となります。また、必要な行政手続きは全て行い、漏れがないよう事前にしっかりと確認することが大切です。開業準備においては、さまざまな専門知識が必要となるため、早い段階で開業コンサルタントなどの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。開業コンサルタントをお探しの場合は、ぜひ医院開業バンクをご利用ください。医院開業バンクでは、開業物件の比較ができ、専任コンサルタントにも無料相談が可能です。開業コンサルタントとともに、医院の開業を成功させてください。