コラム
2023.06.29
開業医の医院が潰れる理由|倒産を防ぐために大切なこと
クリニックが閉院する理由はさまざま。診療メインだった勤務医のときとは大きく異なり、開業医には経営やマーケティング、スタッフのマネジメントのスキルが求められるという点も大きな理由です。
閉院を防ぐためにはどうしたらいいのか?また実際に閉院をしようと思った際にはどう進めるべきなのか?経営面のコンサルティングから閉院のお手伝いまでトータルで当社がお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。
クリニックが閉院する理由
医院の開業を検討している医師の中には、倒産・廃業のリスクについて不安がある人も多いのではないでしょうか。開業医は、勤務医と違って、医師のスキルとともに経営者としての手腕も求められるため、経営の知識が足りなければ、倒産してしまう可能性もあります。
ここでは、開業した医院が失敗し、倒産・廃業してしまう理由を解説するとともに、倒産を防ぐために大切なこと、開業することによるメリットについて紹介します。開業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
医師の開業は倒産・廃業のリスクがある
医師が開業すると、勤務医と比較して「自身のペースで仕事ができる」「収入が増える」「独自の診療スタイルを築ける」などといったさまざまなメリットがありますが、倒産・廃業のリスクがあることも忘れてはなりません。
開業しても、経営者としてのスキルが足りなかったり、医院の立地条件が悪くて集患がうまくいかなかったりすると、倒産や廃業に追い込まれてしまうことがあります。その他、医師としての経験不足や、スタッフなどとの人間関係のトラブルも、倒産・廃業の原因となることもあるでしょう。
2021年6月時点の帝国データバンクの調査では、入院施設を持たないクリニック(無床診療所)の休廃業・解散が258件、倒産が9件となっており、過去最多を記録しています。このペースでいけば、2021年は、過去最多となった2019年の406件を大きく上回ることが予想されます。
このようなクリニックの倒産・廃業の背景には、一部地域に医院が集中することによる患者獲得の激化、開業医の高齢化、後継者不足などが挙げられます。さらには、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大によって患者の受診控えが進み、収益が大幅に悪化した医院が急増しています。
開業医の医院が潰れる理由
医師が開業した医院が潰れる主な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 経営のスキルが足りなかった
- 開業した場所の立地条件が良くなかった
- 医師としての知識・経験の不足
- スタッフなどとの人間関係トラブル
- 資金繰りがうまくいかず経営難となった
- 新型コロナウイルス感染症の影響
開業医は、医師であるとともに経営者でもあるため、経営のスキルを身に付ける必要があります。経営のスキル不足により、医院の経営が立ち行かなくなり、倒産に追い込まれるケースもあります。また、開業の際に選定した場所の立地条件が良くなかったため集患がうまくいかず、経営難に陥ることもあります。
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経営のスキルが足りなかった
開業医は、勤務医とは異なり、医師であると同時に経営者でもあります。「資金はどのくらいあり、毎月の経費はどのくらいかかるのか、収入はどのくらいになるのか」といったことをしっかりと把握しなければなりません。医師としての経験は豊富であるにもかかわらず、経営の基礎知識が欠如していると、医院の経営が立ち行かなくなることもあります。
また、開業医にとって、「患者=お客さま」という観点を持つことは、非常に重要です。開業した場合、自身の人柄や患者に接する態度で医院の評判が大きく左右されます。患者心理としては、仮に「家から近い」などといった利便性の高い医院であっても、良い印象を受けなければ、多少遠くても他の医院に行くでしょう。
このようなことを避けるためには、まず経営者としての基礎知識をしっかりと身に付け、一人一人の患者満足度を向上させるための取り組みが必要不可欠となるでしょう。
開業した場所の立地条件が良くなかった
開業した場所の立地条件が良くない場合、思うように患者が集まらず、経営難に陥るケースもあります。経営難に陥らないためにも、開業の際には、しっかりと開業地の選定を行うことが大切です。
開業地の選定においては、開業コンセプトに合ったエリアかどうかを見極めるようにしましょう。自宅からのアクセスや、街の雰囲気も加味する必要があります。人口が増加しているエリアは一見魅力的ですが、例えばターゲットとする患者が高齢者の場合、エリアに転入してくるのが子育て世帯中心であれば集患が難しいといえるでしょう。そのため、エリアの人口構成を事前に調べておく必要があります。
また、いくら駅からのアクセスが良い医院であっても、競合が多ければ来院する患者数は増えないでしょう。そのため、交通機関の状況とともに、競合の医院数や実態も併せて調査しておくことをおすすめします。開業地の選定の際には、それに精通した開業コンサルタントにアドバイスをもらうのも方法の一つです。
医師としての知識・経験の不足
勤務医時代に十分経験を積んで開業したつもりが、いざ開業すると「質問できる上司がいない」「技術を研さんする機会がない」と感じる医師も多いようです。
医師としての知識・経験不足は、受診する患者に不安感を与えることもあり、それによって、来院する患者数が減るケースもあるでしょう。患者数が減ることにより、医院の経営は苦しくなります。また、知識・経験不足によって医療ミスや判断ミスが起きるリスクもあり、一度そのようなことが起きると、医院の存続が危ぶまれる事態となります。
開業医は勤務医とは異なり、経営にも従事しなければなりませんが、うまく時間を作り最新の情報を常にキャッチアップするなど、効率的に知識を身に付けていくことも大切です。
スタッフなどとの人間関係トラブル
開業医は、スタッフにとって雇用主でもあります。スタッフなどとの間で人間関係のトラブルがあると、離職者が増え、医院を継続していくことが困難となってしまいます。スタッフ育成は、医院経営において非常に重要な要素です。開業医は、経営者として、職場の風通しが良いかどうか、スタッフの満足度が高いかどうかなどについて、常に気を配る必要があります。
開業する際には、少なくとも看護師や受付スタッフを雇用する必要があるため、定期的にスタッフとの面談の機会を設け、職場に対する意見を聞くなど、うまくコミュニケーションを図っていくことが求められるでしょう。
資金繰りがうまくいかず経営難となった
開業当初に多額の融資を受けたのは良いものの、その後、資金繰りが悪化して経営難に陥り、廃業を余儀なくされるといったケースもあります。経営上、売り上げは「売掛金」、支払いは「買掛金」といって、すぐに現金処理できない項目があります。また、医院では多くの入出金があり支払日もそれぞれ異なります。そのため、実際に使えるお金を把握できなくなり、黒字倒産となる可能性もあります。
このような事態を防ぐためには、「資金繰り表」を作成することが有用でしょう。入金時期と経費の支払い日をしっかりと管理することで、現金の過不足が明確化します。例えば、不足していることが分かった場合は、事前に一時的な資金調達をすることで黒字倒産を回避することができるでしょう。
さらには、「売上管理」「賃借対照表」「損益計算書」などの財務諸表の知識を身に付けることで、経営分析も可能となります。診療で忙しく、自身で作成することに自信がない場合は、専門家である税理士などに相談するのも方法の一つでしょう。税理士と繋がるには専門のプラットフォームから良い税理士を紹介してもらうことが近道です。士業専門紹介の「税理士ドットコム」などの税理士紹介サービスを上手く活用してみてはいかがでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の影響
2020年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、倒産する医院が増加傾向にあります。
一般社団法人日本病院会などの3団体が実施した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」によると、全国約1,200の病院の2020年4月の医業収入は、「マイナス10.5%」でした。また、「66.7%」の病院は赤字で、コロナ患者を受け入れた病院は「78.2%」が赤字となりました。これは、感染防止対策として患者の受診控えによる外来受診者の減少や、院内感染リスクを避けるために、医院が診療回数を減らしていることが、主な原因として挙げられます。
開業医の高齢化、後継者不足という課題に加え、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、収益が大幅に悪化する医院が現在急増しており、この傾向は長期化が予測されています。
倒産を防ぐために大切なこと
開業医として成功するためには、さまざまなスキルが必要です。開業後に成功している人に共通しているのは、医院経営を多角的に考えられる視野を持っていることであるといえます。例えば、提供する医療がどんなに優れていても、患者やスタッフとうまくコミュニケーションを図ることができなければ、医院の存続が難しくなるでしょう。
医院の倒産を防ぐためには、経営状態や患者動向をしっかりと把握する必要があります。そのためにも、1日の平均患者数、新患率、平均通院回数などをデータ化し、分析しておきましょう。また、治療内容、合併症率、院内感染率などを「見える化」することも重要です。
現状を正確に把握した上で、改善すべき点に対してはスタッフにも情報共有し、医院一丸となって対策を講じる必要があります。経営の体力のあるうちから、このような現状把握、情報共有、対策を行っておくことにより、医院が良い方向に向かうための効果的な予防策となるでしょう。
開業することにはメリットもある
医師の開業には、倒産・廃業のリスクがありますが、当然ながら開業して成功している人も多く、メリットもあります。開業することによるメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 自身のペースで仕事ができる
- 収入が増加する
- 理想の診療スタイルが築ける
勤務医の場合は、緊急手術で休日を返上したり、深夜に急患が入ったりすることがありますが、開業医の場合は、医院の休診日に休むことができ、家族と過ごす時間などを取ることができます。
また、厚生労働省が2019年に実施した「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)」によると、地域や診療科によって異なるものの、開業医の収入は、勤務医よりも約1,000万~2,000万円ほど高いと調査結果が出ています。
さらに、勤務医の場合は、理想の診療スタイルがあったとしても、ある程度の地位でなければ実現しにくい環境にありますが、開業医の場合は、自身が医院の経営者であるため、独自の診療スタイルを築きやすいでしょう。
このようなことから、倒産・廃業のリスクだけを考えて開業することを諦めるのではなく、まずは開業について開業コンサルタントなどの専門家に相談して検討すると良いでしょう。
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まとめ
開業医は、医師であると同時に経営者でもあるため、医院が倒産・廃業に追い込まれないためのさまざまなスキルが必要となります。開業後も医院を成功させるためには、診療だけではなく、患者やスタッフとのコミュニケーション、経営知識の習得などが重要となるでしょう。開業には倒産・廃業のリスクもありますが、準備段階から開業コンサルタントなどの専門家に適切なアドバイスをもらうことで、このようなリスクの可能性が低くなります。開業コンサルタントをお探しの場合は、検索や比較検討ができる医院開業バンクをご活用ください。