コラム
2021.10.09
クリニック開業準備にかかる期間やスケジュールについて解説
クリニック開業はほとんどの方にとって人生で一度限りの大事業。かかる期間も1年半~2年、長い方では数年と、時間と労力のかかることでもあります。だからこそ、スケジュール(事業計画)の作成や管理は非常に大切です。
ただ、先生ご自身が働きながら不動作会社や内装会社、機器、薬品の業者、関係省庁の窓口となり、スケジュールを含めた全てをコントロールするのは困難です。当社は先生の開業の伴走者として、事業計画やスケジュール作成はもちろんのこと、関係各所との調整や管理もさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。
勤務医としてキャリアを積んだ医師の中には、「自身のクリニックを開業したい」と思っている人も少なくないでしょう。しかし、クリニックの開業には、どのくらいの期間が必要なのか、どのような流れで開業すれば良いのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、クリニック開業準備にかかる期間、クリニック開業準備の流れ・スケジュール例など、開業に必要な知識について詳しく解説します。自身の理想のクリニック開業のための参考にしてください。
【参考記事】クリニック開業まず何から始める?│ビジョンの作り方・コツ・注意点やビジョンからコンセプトの作成まで
【参考記事】クリニックの事業計画の作り方│目的、必要なタイミング、メリット、項目、作成手順、フォーマットまで
クリニック開業準備にかかる期間
一般的に、「クリニックを開業する」と決めてから実際に開業するまでの期間は、約1年半~2年かかるといわれています。例えば、戸建てであれば、ある程度の建設期間が必要となり、テナントであっても開業地が決まってから約半年~9カ月以上の準備期間を見ておく必要があります。開業地や物件選びが難航すると、数年かかるケースもあります。
開業前の職場で勤務を続けながら準備する場合、勤務日には準備が進められず休日を利用するしかないため、開業準備期間も長くなります。
また、医療モールなどに開業する場合、すでにスケジュールが立てられているため、自身の都合に合わせて進行することができず、準備期間も比較的長期にわたります。
このように、クリニックの開業準備には時間がかかり、その過程においても事業計画の策定や資金調達などさまざまなことが必要となるため、自身の希望する開業予定日に間に合うよう、しっかり計画を立てて準備を進めることが大切です。
クリニック開業準備の流れ・スケジュール例
クリニックの開業準備には、さまざまなステップがあるため、まずは事前に計画を立てることが重要です。クリニック開業のスケジュール例は、以下のような流れになっています。
- 開業時期の決定や事業計画の策定【~12カ月前】
- 土地・物件選びと資金調達【~6カ月前】
- 内装業者や医療機器・設備の選定【~4カ月前】
- スタッフの採用やホームページ・広告作成【~1カ月前】
- 届け出・申請や内覧会の実施【~開業】
ただし、あくまでこのスケジュール例は目安であり、勤務を続けながらクリニックの開業準備を進める場合などは、これよりも時間がかかることがあるため、注意が必要です。
ここからは、クリニックの開業準備をどのように進めればいいのか、具体的に解説します。
①開業時期の決定や事業計画の策定【~12カ月前】
開業予定の約12カ月前までに、開業時期の決定や事業計画の策定をすると良いでしょう。
開業に適した時期は、診療科によって異なります。例えば、内科であれば風邪で来院する患者が増える秋から冬にかけての時期、小児科であれば予防接種の時期、耳鼻咽喉科であれば花粉症の患者が増える春先の時期などがおすすめです。地域ごとの特色やターゲットとする患者の年齢層によっても異なるため、しっかりと分析した上で、開業時期を決定しましょう。
事業計画の策定とは、クリニックを軌道に乗せるための計画づくりのことを指します。必要となる開業資金を決めて資金調達し、開業後に事業が計画通りに進んでいるかどうかを確認するために不可欠なステップです。
事業計画書を作成するには、「支出の内訳」「資金調達の内訳」「開業後初年度の収入見込み」「開業後初年度の支出見込み」の4つの項目が必要となります。事業計画書の内容が現実的でなければ、金融機関から融資を受ける際の審査に影響が出てきます。そのため、過剰投資は避け、無理のない収支計画を立てましょう。
その他にも、経営理念・診療コンセプトの決定、開業形態・規模の決定など、開業準備の開始時にやっておくべきことがあります。この時期に決めるべき項目としては、以下のようなものが挙げられます。
<開業準備の開始時に決めておくべきこと>
- 開業時期
- 事業計画
- 経営理念・診療コンセプト
- 開業形態・規模
- 開業エリア
- 資金調達方法
②土地・物件選びや資金調達【~6カ月前】
開業予定の約6カ月前までには、土地・物件選びや資金調達をしておくと良いでしょう。土地・物件選びにおいては、診療コンセプトに合ったものであるかどうかを、しっかりと検証する必要があります。
また、調達すべき資金は、開業資金も含め、目安として運転資金の総額の2割ほどを自身で準備しておいた方が良いでしょう。診療科によっても異なりますが、テナントで内科を開業する場合、1,000万円以上の貯金があることが望ましいといえます。
ただし、医院開業の融資は、金利が低く、資金調達しやすいため、自己資金の準備が少ないからといって開業できないというわけではありません。
開業地・建物の準備
開業地・建物が決まってからの次のステップである内装プラン、医療機器・設備の選定、実際の工事・納入には、時間を要します。そのため、遅くとも開業予定の6カ月前までには、開業地・建物の準備をする必要があるでしょう。
開業地を決めるに当たっては、診療コンセプトに合っているエリアかどうかが重要な要素となります。また、自宅からのアクセスや街の雰囲気も考慮する必要があるでしょう。人口が増えている人気エリアは魅力的ですが、例えば、ターゲットとする患者が高齢者の場合、エリアに転入してくるのが子育て世帯中心であれば、集患が難しいでしょう。そのため、事前にエリアの年齢構成を調査しておく必要があります。
物件探しにおいては、自身で探すのではなく、不動産会社や開業コンサルタントに依頼し、希望する条件に合った物件を紹介してもらいます。物件を紹介されたら、物件データをチェックし、気になる物件があれば現地に行き、自身の希望に沿っているかどうかを確認します。その際に注意しなければならないのが、医療機関が入れる物件であるかどうかといった点です。
医療機関が入居できる建物については、さまざまな規定があるため、契約直前で入居できないといったトラブルを避けるためにも、医療物件探しに精通した不動産会社や開業コンサルタントに依頼することをおすすめします。
資金調達方法
資金調達は、金融機関との借り入れ交渉や融資の審査があるため、開業予定の6カ月前までには開始する必要があるでしょう。
資金調達方法には、以下の4つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫
- 独立行政法人福祉医療機構
- 民間金融機関
- リース会社
それぞれ最大融資額や融資期間が異なるため、事前に条件を確認した上で、自身に最適な方法を選択しましょう。
融資を受ける際には、作成した事業計画書を基に審査が行われます。融資の審査の際にチェックされるポイントとしては、「内装が豪華すぎる」「医療機器のグレードが高すぎる」といった過剰投資がされていないかどうか、収支計画に無理がないかどうかといった点です。ポイントを押さえ、しっかりと作り込まれた事業計画書であれば審査も通りやすく、融資を受けやすいといえます。
自身で事業計画書を作成することも可能ですが、審査に不安がある場合は、融資をスムーズに受けるためにも専門家である開業コンサルタントに相談した方が良いでしょう。
③内装業者や医療機器・設備の選定【~4カ月前】
開業予定の約4カ月前までには、内装業者や医療機器・設備を選定すると良いでしょう。内装業者が決まったら、設計士と何回も打ち合わせし、クリニックのデザインや色調などを決めていきます。内装の図面が出来上がったら、施工に入ります。医療機器・設備の選定において重要なのは、診療コンセプトに合ったものを選ぶことです。
内装業者選び
開業予定の4カ月前に内装業者を選定するのは、選定後に打ち合わせを重ね、決まった図面を基に施工に入るためです。内装業者は、クリニックの内装工事経験が豊富な業者を選定するようにしましょう。医療業界に精通していない内装業者を選ぶと、「明るい窓際にエコー機器を設置する」「レントゲンのシールド設置にコストがかかる」などといったトラブルが発生する可能性もあります。
また、内装工事を発注する際には、「設計料」について事前に確認する必要があります。一般的に、内装工事の設計料は坪単価で算出されますが、業者によって設計図作成費用や工事現場監督費用などの設計監理料が別途請求される場合もあります。そのような場合、工事費用の10%前後が設計監理料として上乗せされるため、当初の見積もりよりも割高となります。
また、クリニックの設計や内装には、医療法や建築基準法が関わってくるため、開業コンサルタントに依頼し、設計や内装を一度チェックしてもらうことをおすすめします。
医療機器や設備の選定
クリニックの広さや動線を確認するためには、内装の決定と同時期に、導入する医療機器や設備の選定を行う必要があります。医療機器や設備の選定は、診療科によっても大きく異なりますが、コストがかかるため、診療コンセプトを実現するには何が必要かを考えます。精度の高い検査を行いたいのであれば、CT、エコー、MRIをはじめとした多種多様な機器が必要となるでしょう。対して、省コストで効率的な医療を目指す場合、最低限の機器をそろえ、精密検査などについては周辺の医療機関と連携すると良いでしょう。
また、同じ機器でもグレードが異なると金額に差が出てくるため、予算に見合っているかどうかも確認しておきましょう。コストや収益性を考慮した上で、購入するのか、リースにするのか、新品にするのか、中古にするのかを選びましょう。価格の透明性が低い機器もあるため、開業コンサルタントにアドバイスをもらったり、知り合いの開業医から情報を集めたりすると良いでしょう。
また、昨今どの診療科においても必須となっている「電子カルテ」を導入する場合は、連携する医療機器と照らし合わせ、この時期に選定することをおすすめします。
④スタッフの採用やホームページ・広告作成【~1カ月前】
開業予定の約1カ月前までに、スタッフの採用やホームページ・広告作成をすると良いでしょう。看護師、技師、受付スタッフ、事務員などの雇用に向けて、募集と採用面接を進めていく必要があります。同時に、新規開業の場合は、クリニックを地域住民などに周知させる必要があるため、PR活動を行う必要があるでしょう。
スタッフの募集・採用
開業のためのオープニングスタッフの採用には、採用基準の決定、求人サイトへの求人情報の掲載、採用面接、採用通知という流れがあるため、開業予定の1カ月前までには開始する必要があります。
一般的な規模のクリニックの場合は、看護師を数人、受付事務を2人程度、非正規雇用として採用するケースが多いです。選考の際には、ターゲットとする患者層に合った人を選ぶように心掛けましょう。また、経営理念や診療コンセプトに共感してくれる人材を選ぶことも大切です。
看護師を採用する際には、経験豊富な人材を採用すると、診療において心強い存在となります。受付事務は、レセプト業務や診療報酬に詳しい経験者を採用すると良いでしょう。また、採用において客観的に評価するためにも、採点表などを準備しておくことをおすすめします。なお、開業前の求人は、ハローワークに掲載できない点に注意が必要です。
ホームページ作成や広告などでの集患
新規開業時には、周辺住民などに周知させる必要があるため、少なくとも1カ月前までには、集患のためのPRを開始しましょう。
インターネットが広く普及している現在、患者の多くは、インターネットを通じて情報を入手します。そのため、クリニックのホームページ作成は必要不可欠です。クリニックのホームページに特化した制作会社もあるため、制作を依頼するのも方法の一つです。
最近は、パソコンではなくスマートフォンから閲覧する人も多いため、ホームページをスマートフォンの表示サイズに対応した「レスポンシブデザイン」の採用をおすすめします。医療機関がホームページで広告する際には、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」にのっとる必要があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
また、近隣住民へのポスティングチラシ、新聞の折り込み広告を利用した集患も有効です。地域ならではのルールがあるケースもあるため、事前に所轄の行政機関に確認しましょう。場合によっては、医師会の許可が必要になることもあるため、医師会にも事前に問い合わせしておいた方が良いでしょう。
⑤届け出・申請や内覧会の実施【~開業】
開業予定の1カ月前~開業までには、各種届け出・申請手続き、内覧会を実施すると良いでしょう。クリニックの開業に当たり、保健所に提出する「診療所開設届」をはじめ、さまざまな行政手続きが必要となります。また、これらの手続きと並行して内覧会を実施することで、クリニック、スタッフ、設備を地域住民に知ってもらう機会となり、効果的にPRすることができます。
各種届出・申請手続き
クリニックの開業には、行政機関への各種届け出などが必要となるため、開業予定の1カ月前には手続きを開始する必要があります。必要な手続きは多岐にわたり、この時期に手続きを行うためにも前もって準備しておいた方が良いでしょう。
各種届出・申請手続きには、以下のようなものが挙げられます。
- 開設許可:診療所開設届、エックス線装置備付届、保険医療機関指定申請書、施設基準届出書
- 税金関連:個人事業開設届、青色申告承認申請書、源泉徴収の納期特例に関する届出書
- 保険関連:スタッフの社会保険、労災保険、厚生年金
- 消防関連:防火管理責任者
開業する地域や診療科によって必要な手続きが異なるため、どのような手続きが必要なのかを事前にしっかりと確認し、申請漏れなどがないようにしましょう。申請内容によって、申請時期や提出期限が違う点にも注意が必要です。
スムーズに開業するためにも、関係諸官庁へ事前に相談に行くことをおすすめします。
内覧会の実施
開業前に内覧会を実施することは、クリニックのPRとして非常に効果的です。実際に、クリニックの設備や診療内容を地域住民へと周知させる絶好の機会であるといえるでしょう。また、来院する見込みのある患者と直接交流できる初めての場として利用できます。
内覧会を実施し、診療コンセプトなどを知ってもらうことで、口コミ効果も期待できます。一般的に、口コミは効果が出るまでに時間がかかるといわれていますが、開業前に内覧会を実施することで、口コミによる早めの集患につながります。ポイントとしては、多くの人が訪れる土・日・祝日に開催すると良いでしょう。また、お祝いの品をもらった際には、院長が直接受け取るなど、スタッフの対応の仕方もあらかじめ決めておくことをおすすめします。
また、内覧会の目的を明確化させておくことも大切です。口コミ効果を狙うのか、地域への感謝を示すのか、最終的な目標を設定します。目標設定に迷うようであれば、開業コンサルタントに相談すると良いでしょう。提案された内容を吟味し、かけられるコストと照らし合わせて判断しましょう。
クリニック開業で失敗しないためのポイント
クリニック開業で失敗しないためのポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 開業前の準備期間は十分な時間をかける
- 医療だけでなく経営面も意識する
- 予算やニーズに合った医療機器・設備にする
- 強みを生かしたクリニックを展開する
開業前は、気持ちがはやって、つい準備を急ぎがちですが、準備には十分な時間をかけることが大切です。今回紹介した準備期間はあくまで目安で、自身の状況と照らし合わせた上で、患者をしっかりと受け入れる体制を整える必要があるでしょう。開業前には、きちんと計画を立て、万が一予想外のトラブルが起こったとしても対応できるよう、ある程度余裕を持った準備期間を設けることをおすすめします。
また、開業後は、患者の治療に専念すれば良いというわけではありません。クリニックを経営していかなければならないため、経営の知識を身に付け、スタッフと密に連携し、クリニックを続けていく努力が必要です。開業するエリアについてよく理解し、患者一人一人が安心して治療を受けられる環境づくりを行いながら、クリニック経営についての造詣を深めていきましょう。
開業する際には、ハイグレードの医療機器なども魅力的ですが、予算と照らし合わせることが重要です。また、クリニックのニーズに合った医療機器でなければ、使用する機会が少なく、余計な出費となるでしょう。そのため、開業当初はよく利用するものなど優先度を考えた上で、機器をそろえましょう。
最後に、自身の強みを生かしたクリニックづくりをしていくことが大切です。専門医の資格があることを前面に押し出したり、患者との丁寧なコミュニケーションをアピールしたりすると良いでしょう。強みを生かす際には、弱みもしっかりと分析した上で、今後の診療コンセプトに反映させていくことをおすすめします。
まとめ
クリニックの開業にかかる期間、開業準備の流れ・スケジュール例などについて詳しく紹介しました。開業準備には長い期間がかかり、その過程も複雑であるため、全てを自身で行うと大きな負担になることもあります。開業を成功させるためには、専門家である開業コンサルタントを利用すると良いでしょう。開業コンサルタントを選ぶ際には、クリニックの開業物件検索サイトの「医院開業バンク」がお勧めです。
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参照:【医師開業・医院開業】支援会社のサポートの内容について説明参照:医師が開業するまでの手順は?成功の鍵はスムーズな手続きと十分な準備!