医療モールとは|開業検討時に知っておきたいメリット・デメリットを解説 | 医院開業バンク

コラム

2021.09.29

医療モールとは|開業検討時に知っておきたいメリット・デメリットを解説

開業を検討している医師の中には、医療モールでの開業を考えている人も多いのではないでしょうか。医療モールは、複数の異なる診療科のクリニックが1カ所に集まっており、患者にとっても利便性が高いことから、集患しやすいなど、さまざまなメリットがあります。

しかし、一言で医療モールといっても、その形態は「医療ビルタイプ」や「医療ビレッジタイプ」などさまざまで、それぞれ特徴も異なります。今回は、医療モールとはどのようなものか、医療モールの形態、メリット・デメリットについて解説します。

医療モールとは

医療モールとは、内科、小児科、耳鼻咽喉科、整形外科などの診療科の異なるクリニックと調剤薬局が同じ建物や敷地に集合している医療施設のことをいいます。

医療モールの役割は、患者に総合的な初期医療と専門医療を提供することです。駅などからのアクセスの良い立地に医療モールがあることで、患者は一度に複数の治療を受けることができます。これまで大学病院などに通っていた患者が同レベルの治療を受けられる医療モールに通うことで、大学病院は重症度の高い患者に集中して対応することができるなど、互いにメリットを享受することができます。

医療モールでの開業は、単独で開業しているクリニックと違って専門性の高いクリニックが複数集まり、患者にとっても利便性が高いことから、都心部を中心に増加傾向にあります。

医療モールの増加には、昨今の高齢化社会が大きく影響しています。高齢化に伴い、高齢患者数は増加の一途をたどっており、さらに開業医も高齢化しているため、新規開業医のニーズが高まっています。

また、高齢化に伴う医療費増加によって、保険制度の維持が困難になることから、政府は高齢者医療費削減のために、病床数の削減に取り組んでいます。病院施設数は減少するものの医師の数は増えているため、勤務医の就職先が不足していることからも開業する医師が増加しており、競争が激化している地域もあります。特に、クリニックの集中している都心部での集患は難しいため、相乗効果で集患が期待できる医療モールが注目されています。

医療モールの6つの形態

医療モールには、以下の6つの形態があります。

  • 医療ビルタイプ
  • 医療ビレッジタイプ
  • 商業施設併設タイプ
  • オフィス併設タイプ
  • レジデンス併設タイプ
  • 医療ドミナントタイプ

医療モールは、ビル内に複数のクリニックと調剤薬局が入っている「医療ビルタイプ」や、戸建てのクリニックが1カ所に集まっている「医療ビレッジタイプ」など、患者のニーズやライフスタイルに合わせて、さまざまな形態があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

医療ビルタイプ

「医療ビルタイプ」とは、ビル一棟のテナントが全てクリニック、もしくは調剤薬局で構成されている形態です。複数の診療科が集合しているため、地域のランドマークとして認知されやすいといえるでしょう。

設計時から医療施設専用のビルとして建設することが決まっていた場合、バリアフリーやエレベーターなど、患者の動線を考えられた造りになっていることが多いです。また、医療施設に必要な電力用量や給排水設備が備わっていることもあります。

 医療ビレッジタイプ

「医療ビレッジタイプ」とは、同じ敷地内に複数の異なる診療科のクリニックが集合している形態です。戸建てであるため、クリニックの設計の自由度は高く、外観、内装、設備に医療コンセプトを反映しやすいでしょう。

敷地内に共用の駐車スペースを大きく取ることで患者が来院しやすくなるため、集患が期待できます。

商業施設併設タイプ

「商業施設併設タイプ」とは、ショッピングモールや駅ビルなどの一角に、医療ゾーンを設ける形態です。商業施設は、地域でもさまざまな人が訪れるため、クリニックの認知度も高まり、買い物客の集患も期待できます。

さらには、クリニックの受診とともに買い物ができることから、患者本人だけではなく、同伴している家族にとっても利便性が高いでしょう。大型商業施設の場合、併設されている駐車場をクリニックのインフラとして活用できることも大きなポイントです。

オフィス併設タイプ

「オフィス併設タイプ」とは、オフィスビルの中に複数の異なるクリニックや調剤薬局が入っている形態です。勤務先に近い場所にクリニックがあることで、仕事帰りや出勤前に立ち寄ることができるため、慢性疾患を抱える患者を中心に、利便性が高いといえます。

立地によっては、オフィスビルのビジネスパーソンだけではなく、広範囲からの集患を望めるため、専門性の高い診療科にも向いている形態です。駅からのアクセスが良ければ、その駅の利用者だけではなく、途中下車の患者の利用も見込めるでしょう。

レジデンス併設タイプ

「レジデンス併設タイプ」とは、マンションの低層階にクリニックや調剤薬局が入っている形態です。マンションの住民の「かかりつけ医」としての役割を果たし、安定した収益が見込めるでしょう。

マンションの住民以外にも利用してもらうためには、看板を見やすくしたり、広告を出したりすると効果的です。また、できる限り開放的な設計にすることも大切です。

医療ドミナントタイプ

「医療ドミナントタイプ」とは、医療モールの6つの形態の中で最も規模が大きなもので、すでに開業しているクリニックの近隣に異なる診療科のクリニックを開院し、その一帯が医療エリア(地域内でクリニックが集まった場所)となる形態です。

医療ドミナントタイプでは、エリア内の異なる診療科のクリニックに通う患者が同じ調剤薬局を利用することができます。また、クリニック同士の連携により、実質的に医療モールとして機能し、患者にとっても利用しやすくなります。

医療モールに開業するときのメリット

医療モールにクリニックを開業するときのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 利便性によって集患しやすい
  • 初期投資を抑えることが可能
  • 他のクリニックと連携しやすい環境

医療モールにクリニックを開業する場合、単独開業と比較すると、患者にとっての利便性が高いため、集患しやすいといえます。

また、駐車場やトイレなどを他のクリニックと共有できるため、設備投資などの初期費用を抑えることができます。さらには、同じ医療モールに入っている医師同士で、情報を共有したり、患者を紹介したりすることが可能です。

ここからは、3つのメリットについて、詳しく解説します。

利便性によって集患しやすい

医療モールは、駅からのアクセスが良いなど好立地にあることが多いため、集患しやすいことが大きなメリットです。単独で開業する場合と比較して、複数のクリニックが入っている医療モールの方が地域住民の認知度が高くなりやすく、効率的に患者を集めることができます。

また、医療モール全体で健康相談会などのイベントを行うことで、異なる診療科のクリニックが共同で集患対策を行うことも可能です。単独で開業する場合、開業直後は集患に苦労することが多いですが、医療モールであれば、開業と同時に一定の患者数が見込めるでしょう。

初期投資を抑えることが可能

医療モールでの開業は、医療施設が入居する前提で建物が設計されている場合、駐車場やトイレなどを他のクリニックと共有できることが多いため、初期投資を抑えることができます。コストが軽減する分、患者にとってより快適で便利なクリニックへの設備投資に還元できるでしょう。

さらに医療モールの中には、開業までの賃料が無料となるフリーレントを設定されているケースもあり、家賃においても入居しやすい条件が整っているといえます。

他のクリニックと連携しやすい環境

患者の病状によっては、他科への紹介が必要となることがあります。医療モールでは、自身の専門ではない分野について、同じモール内の他のクリニックに紹介することができ、急を要する場合や、一つの疾患が原因となって別の症状が出ている場合などに、専門の医師に診てもらうことができます。そのため、効率的に自身の専門分野に集中して診療を行うことが可能です。

また、クリニックの経営や雇用しているスタッフなどについて、相談できる仲間がいることも大変心強いでしょう。


医療モールに開業するときのデメリット

医療モールでの開業には、さまざまなメリットがありますが、以下のようなデメリットも挙げられます。

  • 建物・施設のルールに従う必要がある
  • 他院とのコミュニケーション・人間関係の維持が必要

医療モールでは、建物・施設のルールがあるため、単独で開業する場合と比較して自由度が低く、設備やデザインなどを全て理想通りにすることができません。また、医療モールでは、他院との連携が取れない場合、医師間での情報共有や患者の紹介がスムーズにいかなくなるため、コミュニケーションや人間関係の維持が必要不可欠です。

ここからは、2つのデメリットについて、詳しく解説します。

建物・施設のルールに従う必要がある

単独で開業する場合は、立地、内装、設備など、全て自身の開業コンセプトに合ったものを選ぶことができます。

しかし、医療モールでは、複数の異なるクリニックが使用することを目的としているため、標榜できる科や診療時間などについて、施設のルールがある場合もあります。医療モールによっては、指定された業者からしか選べないなど自由度が低いこともあり、不便に感じる可能性もあるでしょう。

医療モールに開業する際には、事前に医療モールの企画会社などとしっかり話し合うことが大切です。

他院とのコミュニケーション・人間関係の維持が必要

開業を目指す医師の中には、医局の厳しい上下関係から解放されて理想の医療を実現したいという人も多いでしょう。医療モールには、医局のような上下関係はありませんが、他のクリニックと連携が取れない場合、医師間の情報共有や患者の紹介がスムーズにいかなくなるといったデメリットがあります。

そのため、同じ医療モール内に診療方針が異なる医師がいたとしても、コミュニケーションを図り、良好な人間関係を維持することが大切であるといえるでしょう。

開業の際には、すでに医療モールに入っている他のクリニックの医師についても、事前に情報収集することをおすすめします。とはいえ、事前に自分で収集できる情報にも限りがあるため、地場に強い開業コンサルタントなどと繋がっておくと良いでしょう。クリニック開業専門プラットフォームの医院開業バンクの専門家に相談してみることをおすすめします。

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まとめ

医療モールでの開業は、好立地にあることが多く、開業したばかりでも集患しやすいなど、さまざまなメリットがあります。また、医師にとってのメリットだけではなく、患者にとっても一度に複数の異なる診療科を受診できるなどといったメリットもあります。

医療モールでの開業を検討する際には、医療ビルタイプや医療ビレッジタイプなど、それぞれ特徴が異なる形態があるため、まずは自身に合った形態を見つけることが大切です。また、開業コンセプトと合っているかどうかについても、確認しながら進めていきましょう。

株式会社日本メディカルキャリア ライフ支援事業部

福松 洋祐

医師人生の集大成とも言える「クリニック開業」という機会に多く携わって参りました。今後開業を検討される先生方に少しでも多くの選択肢をお示しできるようご支援いたします。

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