病院開業・医院開業の手順と失敗しないためのポイント|コンサルタントを活用するメリットを解説! | 医院開業バンク

コラム

2021.07.25

病院開業・医院開業の手順と失敗しないためのポイント|コンサルタントを活用するメリットを解説!

勤務医としてキャリアを積んだ人の中には、「いつかは開業したい」と思っている人も少なくないでしょう。しかし、いざ開業するとなると、何から始めたらいいのか分からず、悩んでいる人も多いかと思います。開業するまでの手順には、開業コンセプトの設計から行政手続きに至るまで、さまざまなステップがあります。

今回は、病院を開業するまでの手順、失敗しないためのポイント、開業がスムーズにいくための開業コンサルタントの利用について解説します。

病院を開業するタイミングはいつ?

病院を開業するタイミングとしては、30歳前半の若いうちと、40歳前半から後半にかけての経験を積んでから開業するといった2パターンが考えられます。

若いうちに開業した方が良い理由と、経験を積んでから開業した方が良い理由としては、以下のようなものが挙げられます。

若いうちに開業した方が良い理由

  • 金融機関から資金を調達しやすい
  • 固定資産を長期的に活用できる
  • 長時間の診療や往診を行う体力がある
  • 分院展開など次のステップを視野に入れられる

経験を積んでから開業した方が良い理由

  • 自信を持って患者を診ることができる
  • 専門性の高い医療技術を提供できる
  • 病院や医局との人脈がある
  • 同期などに開業や経営について相談できる

日本医師会が2009年に実施した「開業動機と開業医(開設者)の実状に関するアンケート調査」によると、新規開業の場合、開業した年齢は平均で「41.3歳」です。

また、日本政策金融公庫が実施した「2020年度新規開業実態調査」によると、開業時の開業者の平均年齢は「43.7歳」となっています。

このことからも、一般的には40歳代前半に開業する人が多いといえるでしょう。しかし、置かれている環境などによっては、若いうちから開業した方が良い場合もあるため、一概にこのタイミングが良いとはいえません。

若いうちに開業したいと思った場合は、経験を積んでから開業するメリットを理解した上で、自身にとって最適なタイミングを判断すると良いでしょう。

関連記事:開業医の年齢に関するデータから見る実態|開業・継承・引退の年齢は?

病院を開業するまでの手順

病院を開業するまでの手順は、以下の9ステップです。

【病院の開業手順】

  1. 開業コンセプトの決定
  2. 開業地選定
  3. 事業計画策定
  4. 資金調達
  5. 内装設計
  6. 医療機器の決定
  7. 雇用準備
  8. 宣伝・広告
  9. 行政手続き

開業コンセプトの決定から、行政手続きまでのそれぞれのステップを具体的に見ていくとともに、失敗しないためのポイントも、併せて紹介します。

1:開業コンセプトの決定

開業コンセプトの決定は、どのような特徴のある病院なのかを明確化するものであり、事業計画全体に大きな影響を与えます。具体的には、「どのような患者に、どのような医療を提供したいのか」という「診療方針」を決めます。開業医は、医師であるとともに、経営者でもあるため、両者の役割を担っていくためのコンセプトが必要となります。

コンセプトによって基本理念や方針などが確立し、医師、経営者としてのバランスが取れるようになります。それによって、診療内容が明確化し、安定した病院経営につながります。また、コンセプトによって、ターゲットとする患者層が異なってくるため、開業地や必要となる医療機器も変わってきます。

「どのような診療をしているのか」というコンセプトは、病院の土台となるため、その土台がしっかりしていなければ、患者にとっても行くべき病院かどうかといった判断がつかなくなり、集客も成功しません。

開業コンセプトを決めるためには、なぜ開業したのか、どのような診療をしたいのかなど、できる限り、具体的に洗い出すことが大切です。その際、ポジティブな要素だけではなく、ネガティブなものまで、全て洗い出しておくと良いでしょう。

開業コンセプトの決定で失敗しないためのポイント

  • できるだけ具体的に洗い出す
  • 考えがまとまらない場合は、開業コンサルタントや開業支援機関などを活用すると良い

2:開業地選定

開業地選定では、まず、テナントなのか、戸建てなのか、医療モールなのか、単独なのか、などといった開業場所の形態を決めます。その際、ターゲットとする患者層のニーズや地域性を含めて検討することが大切です。開業場所の形態が決まったら、次はエリアを決めます。自宅からの距離、街の雰囲気なども含め、開業コンセプトに合ったエリアであるかどうかを、しっかりと考えましょう。

開業場所の形態とエリアが決まったら、次は物件探しです。不動産会社、開業コンサルタントに依頼し、希望する条件に合った物件を紹介してもらいます。物件を紹介されたら、物件データを確認したり、現地調査に行ったり、開業地として本当に適しているかどうかを検証します。

その際には、エリアの人口、年齢構成、人の動き、交通機関の状況、競合となる医院の数や実態を、しっかりと調査することが重要でしょう。開業エリアの調査を行うには「JMAP(地域医療情報システム)」というツールが便利です。診療圏調査に役立ちますので、開業地選定の際には一度見ておくと良いでしょう。

開業地選定で失敗しないためのポイント

  • 人気エリアが必ずしも良いというわけではない
  • 優先順位を付けること(理想を追求しすぎない)
  • 医療機関が入れる物件であることを前もって確認

開業地選定は、開業までのステップで最も時間がかかるため、開業に適した物件が見つからない場合、全体の進行が遅れる原因となり得ます。開業地がなかなか見つからない場合は、「医院開業バンク」をぜひご活用ください。「医院開業バンク」では、全国の医院の開業案件を多数掲載しており、検索・比較しやすいのが特徴です。

また、不明点などがあれば、開業コンサルタントなどの専門家に相談することもできます。

物件検索

3:事業計画策定

病院を軌道に乗せるために重要な事業計画策定は、必要な開業資金を決定して資金調達をするために、そして、開業後に事業が計画通りに進んでいるかどうかをチェックするために必要なステップです。事業計画書を作成するには、次のような項目が必要となります。

まずは、土地や建物、テナントの資金、医療機器、宣伝費などの支出の内訳です。そして、自己資金、借入金、リースなどの予定を記載した資金調達の内訳です。また、開業後初年度の収入見込みを算出する必要もあります。収入見込みは、「患者1人当たりの単価×想定来院数×診察日数」で計算します。さらには、人件費や生活費など、開業後初年度の支出見込みも合わせて算出します。

事業計画策定で失敗しないためのポイント

  • 過剰な投資計画をしない
  • 無理のない収支計画を立てる

4:資金調達

事業計画を策定したら、実際の資金調達に入ります。可能であれば、開業資金を含め、運転資金総額の2割程度をあらかじめ自身で用意しておいた方が良いでしょう。

ただし、医院開業の融資は、金利が非常に低く、資金調達しやすくなっています。これは、市場に資金が余っているにもかかわらず、金融機関が融資できる企業などが減っているからです。

自己資金の準備が少ないからといって、開業できないというわけではありません。資金が少ない場合は、初期費用がどのくらいかかるのか、毎月の返済額がどのくらいになるのか、などといった点を正確に把握した上で、無理のない収支計画を立てることが大切です。

<資金調達方法>

  • 日本政策金融公庫

新規事業に積極的に融資する政府系金融機関です。最大融資額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、融資期間は、設備資金で20年以内、運転資金で7年以内です。

  • 独立行政法人福祉医療機構

社会福祉施設、病院、診療所の建築資金などを融資する厚生労働省管轄の独立行政法人です。最大融資額は、建築資金72,000万円、融資期間は、耐火20年超30年以内です。

  • 民間金融機関

民間金融機関には、都市銀行をはじめ、地方銀行や信用金庫などがあり、それぞれの金融機関によって、融資内容も異なります。金融機関によっては、最大1億円程度の融資を受けることも可能で、融資期間は、約20年が目安です。

  • リース会社

医療機器をリース会社から借りる際に、追加で融資を受けられることもあります。各社によって融資内容は異なりますが、最大で4,000万円程度の融資を受けることができ、融資期間は、約7カ月が目安です。

資金調達で失敗しないためのポイント

  • 過剰な投資をしていないか
  • 収支計画に無理がないか
  • 事業計画書が綿密であるほど許可が出やすい

資金調達は、自身で行うこともできますが、審査などに不安がある場合は、開業コンサルタントの利用をおすすめします。開業コンサルタントによっては、知識、経験、料金体系も異なるため、比較検討した上で選ぶことが大切です。「医院開業バンク」は、開業コンサルタントの検索ができ、比較しやすい点が大きな特徴です。

知識・経験豊富な開業コンサルタントを選ぶ

関連記事:医者の開業資金・自己資金はいくら必要?|資金調達に失敗しないためのポイントを解説

5:内装設計

資金調達のめどが立ったら、内装設計に入ります。内装設計では、まず設計事務所を選びます。この際、医療業界に精通した事務所を選ぶことが大切です。

次に、設計士と内装の基本的なデザイン、色調などを打ち合わせします。開業コンセプトに合った設計図を作成してもらうためには、設計士に自身の希望を正確に伝え、できるだけ密にコミュニケーションを取るようにしましょう。内装の平面図ができたら、保健所に事前に確認に行く必要があります。

病院開設の際には、保健所の立ち入り検査があるため、保健所の規定から外れないよう、注意が必要です。内装設計の際には、清潔感があるかどうか、照明の明るさ、院内の動線などについてもしっかりと確認しておきましょう。

内装設計で失敗しないためのポイント

  • 医療業界に精通した設計事務所を選ぶ
  • 設計士とは密にコミュニケーションを図る
  • 保健所の立ち入り検査を考慮した設計にする

6:医療機器の決定

医療機器の決定においては、先に決めた開業コンセプトに合ったものを選ぶ必要があります。先端医療をコンセプトとしている場合と、在宅医療に取り組む場合とでは、導入する機器にも違いが出てくるでしょう。診療科によっても、導入する機器は異なりますが、新規開業の場合、どの科にも共通して必須となるのが「電子カルテ」です。病診連携を図るためにも、電子カルテを導入する病院は、増加傾向にあります。

エックス線、エコー、内視鏡など、その他の医療機器は、診療科に応じて必要なものを選ぶようにしましょう。同じ機器でもグレードが異なると金額に差が出てくるため、予算内に収まっているかどうかも確認してください。

機器のリースを検討している場合は、リース会社の審査期間(約23週間)も念頭に置いておきましょう。

医療機器の決定で失敗しないためのポイント

  • 予算に合ったグレードの医療機器を選ぶ
  • リースを検討している場合、審査期間も念頭に置いてスケジュールを組む

7:雇用準備

開業する際には、オープニングスタッフを採用する必要があります。採用に当たっては、まず採用基準をしっかりと決めます。基準を明確化することで、その後の流れがスムーズとなるでしょう。

次に、求人情報を求人サイトなどに掲載します。掲載媒体によってターゲット層が異なるため、掲載先の情報もしっかりと入手しておきましょう。掲載を見た応募者から連絡があったら、面接日時を決め、面接を行います。面接前には、「何人の面接を行って比較検討するのか」「理想とする人が応募してくるまで面接を続けるのか」などといったことを、あらかじめ決めておくと良いでしょう。

採用が決まったら、応募者に結果を通知します。これらにかかる期間は、一般的に23カ月程度です。採用後の研修期間も見越した上で、開業する34カ月前から募集を開始することをおすすめします。

開業する医師の中には、採用面接などが初めてだという人も少なくないでしょう。質問事項を事前に書き出したり、採点表を作成したりすることで、面接がスムーズとなります。

雇用準備で失敗しないためのポイント

  • スタッフの採用基準を明確化する
  • 面接の前に質問事項などを準備しておく
  • ハローワークは開業前の求人は出せないため、注意する

8:宣伝・広告

医院開業の宣伝・広告は、「Web(インターネット)」と「紙媒体」の両方を活用します。昨今では、インターネットが広く普及しているため、病院のホームページを作成して宣伝を行うことは、非常に効果的です。ターゲット層が高齢者の場合でも、家族がホームページを見る可能性があるため、どの年齢層にもアピールできるでしょう。

また、最近では、幅広い年齢層がスマートフォンを使用しているため、ホームページをパソコンだけではなく、スマートフォン表示にも対応させておくことが肝要です。紙媒体の場合、新聞の折り込み広告を利用したり、近隣住民へポスティングチラシを配布したりするといった方法があります。一般的に、開業医は地域に根ざした診療を行うため、紙媒体の利用は非常に有効です。

宣伝・広告で失敗しないためのポイント

  • 地域ならではのルールがあることもあるので注意
  • 医師会の許可が要るケースもある
  • 厚生労働省の「医療広告ガイドライン」にのっとる必要がある

9:行政手続き

開業に当たっては、保健所に提出する「診療所開設届」や、地方厚生局に提出する「保健医療機関指定申請書」をはじめ、各種行政手続きが必要となります。手続きには、以下のような項目があります。

開設許可

診療所開設届、エックス線装置備付届、保険医療機関指定申請書、施設基準届出書

税金関連

個人事業開設届、青色申告承認申請書、源泉徴収の納期特例に関する届出書

保険関連

スタッフの社会保険、労災保険、厚生年金

消防関連

防火管理責任者

一般的な病院の開業には、上記のような行政手続きが必要ですが、開業する地域や診療科によって、必要な申請書類が異なってきます。自身の診療科には、どのような手続きが必要なのかをしっかりと把握し、申請漏れがないようにしましょう。

行政手続きで失敗しないためのポイント

  • 診療科によって行政手続きが異なるため、事前確認が必要
  • 手続きに不安がある場合は、開業コンサルタントに代行を依頼する

病院開業コンサルタントを利用するメリット・デメリット

開業コンサルタントを利用するメリット・デメリットは、以下の通りです。

【開業コンサルタントを利用するメリット】

  • スケジュール通りスムーズに進められる
  • 各種手続きの代行を依頼できる

【開業コンサルタントを利用するデメリット】

  • 任せすぎると自身の意思が反映されなくなる
  • 費用がかかる

それぞれについて、詳細を見ていきましょう。

病院開業コンサルタントを利用するメリット

開業コンサルタントを利用するメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • スケジュール通りスムーズに進められる
  • 各種手続きの代行を依頼できる

開業コンサルタントは、開業における全てのステップを熟知しているため、開業に無駄な時間を割くことがなく、予定通りに進めていけるといった点が大きなメリットです。また、開業コンセプトの決定や事業計画書作成において、的確なアドバイスをもらうこともできます。

融資の交渉、各種手続きなどの代行を依頼できるため、多忙な勤務医であったとしても、開業の準備を滞りなく進めることができるでしょう。手続きには専門的な知識を要する場合が多いため、経験とノウハウのあるプロに任せることで安心できます。開業コンサルタントを選ぶ際のポイントとしては、経験豊富で長期的にサポートしてくれる人を探すことをおすすめします。

病院開業コンサルタントを利用するデメリット

開業コンサルタントを利用するデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • 任せすぎると自身の意思が反映されなくなる
  • 費用がかかる

開業コンサルタントは、医院開業に精通しているため、任せることで安心して開業までの道のりを歩むことができます。しかし、全てを任せてしまうと、実際に開業したときに自身がイメージしていたものと異なる可能性もあります。そのため、開業コンサルタントに依頼する場合は、しっかりと主導権を握っておくことが大切です。

また、選ぶコンサルタントによって料金体系や費用が異なるため、まずは比較検討した方が良いでしょう。

「医院開業バンク」では、最適な開業コンサルタントを検索することができる上、費用などについても比較しやすいため、ご活用することをおすすめします。

開業コンサルタント・専門家を比較する

関連記事:開業医向け医院開業コンサルタントの費用相場|スムーズに進めるコツを解説

まとめ

病院開業・医院開業の手順、失敗しないためのポイントについて、解説しました。開業するまでには、さまざまな困難がありますが、無事に開業できたときの達成感は、計り知れないでしょう。開業をよりスムーズに進めるためには、開業コンサルタントの利用をおすすめします。

開業コンサルタントを探す際には、「医院開業バンク」をご活用ください。専門家が検索できる上、費用などの比較検討も可能ですので、ぜひ開業の良きパートナーを見つけてください。

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福松 洋祐

医師人生の集大成とも言える「クリニック開業」という機会に多く携わって参りました。今後開業を検討される先生方に少しでも多くの選択肢をお示しできるようご支援いたします。

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