コラム
2021.07.28
医療モールでの開業が失敗してしまう理由とは|メリット・デメリットも紹介
開業を検討している医師で、医療モールでの開業を検討している人はいませんか?医療モールでの開業は、複数の診療科が集合しているというメリットがありますが、特有の失敗例もあります。この記事では、医療モールの特徴と失敗例、失敗しないためのポイントについて解説します。医療モールでの開業を検討している人は、参考にしてください。
医療モールとは
「医療モール」とは、内科、外科といった複数の診療科のクリニックや調剤薬局が、同じ地域内、敷地内、建物内などに集合している施設の総称です。医療モールには、下記の3つのような形態があります。
- ■複合施設型医療モール
- ■医療ビレッジ
- ■医療ビル
医療モールの形態 | 特徴 |
複合施設型医療モール | 駅周辺や複合商業施設に多数の診療科のクリニックが集まっている形態。広大な駐車場を持ち、特に地方においては認知度が高く、買い物ついでに立ち寄れるため、集患にも有利。 |
医療ビレッジ | 同じ敷地内に複数の診療科の戸建てクリニックが集合している形態。戸建てなので、クリニックごとの外観、内装、設備を反映させることができる。 |
医療ビル | ビル一棟のテナントが全てクリニックで構成されている形態。複数の診療科が集合しているため、総合的な医療施設として認知されやすい。多くの医療ビルでは、バリアフリー、エレベーター、電力容量、給排水設備を備えていることがある。 |
医師が開業する地域を選ぶ際、医療モールという選択肢もありますが、複数の診療科が集中しているが故のメリット、デメリットがあります。
医療モールに開業するメリット
- ■効率的に集患できる
- ■総合病院に近いサービスが提供できる
- ■初期費用を抑えられる
- ■専門家のアドバイスを受けることができる
多くの診療科が集中している便利な医療施設の集合体として認知されるため、個々のクリニックで集客するよりも、効率的に患者を集めることができます。自身の専門分野だけで対応できなくても、近隣にある他のクリニックを紹介できるため、複数の診療科に通う必要のある患者に対し、結果的に総合病院に近い医療サービスを提供することができます。
医療機関専用のモールなので、入居する際には、クリニックに必要な設備がある程度整っており、駐車場やトイレなども共有できるため、開業時の初期費用を抑えられる可能性がありますし、施設内にある他のクリニックも手掛けた実績のある医療モールの専門コンサルタントから、開業時の事業計画、資金調達のアドバイスを受けることができます。担当コンサルタントに相談するのが心配な場合は、コンサルタントの風評などについて他のクリニックに聞けば、容易に確認することができるでしょう。
医療モールに開業するデメリット
- ■モール内に合わない医師がいる
- ■医療モールの制約を受けることがある
他のクリニックと連携すれば、自身の専門外の診療科をすぐに紹介できるため、相乗効果を見込むことができます。しかし、中には、診療方針が合わない、単純に気が合わない医師がいるかもしれません。開業医を選んだ理由の一つに、勤務医の人間関係での悩みや、自身の思い通りの医療を実現したいという思いがあった場合は、慎重に判断する必要があるでしょう。医療モールの制約を受けることがある医療モールは、複数のクリニックが集合しているという前提で構成されるため、自身の診療科目や営業時間に制約を受けたり、設計や医薬品会社を特定の業者に指定されたりすることもあります。
クリニックの開業にあたってはこちらの記事も参考にしてください。 病院開業・医院開業の手順と失敗しないためのポイント|コンサルタントを活用するメリットを解説! 医師が開業に失敗しないためのポイント|手順や資金調達の方法 医師が開業するまでの手順は?成功の鍵はスムーズな手続きと十分な準備!医療モールでの開業は失敗してしまうこともある
医療モールでの開業は、メリットも大きいですが、医療モール特有の理由で失敗してしまうこともあります。以下、代表的な失敗例と、失敗してしまう理由を紹介します。開業を検討している人は、参考にしてください。
よくある失敗例
医療モールで開業した場合のよくある失敗例としては、以下のようなものが挙げられます。
「医療モールのテナントが埋まっていない」「テナントが撤退してしまった」などの要因があれば、医療モールとしての魅力は低下します。また、医療モール内が出身大学などの派閥で構成されているような場合では、想定していたよりも近隣のクリニックからの紹介が得られず、その不満からコミュニケーション不足が発生し、医療モール間の近隣クリニックとの連携というメリットを得られなくなり、最終的にクリニック経営が失敗してしまった、という事例もあります。テナント料が原因となる失敗例もあります。医療モールは、駐車場やトイレなどが共有でき、初期費用が抑えられるはずですが、駅周辺や複合施設など立地の良いエリアでは、そもそもの共益費を含めたテナント料が相対的に高く、実際に開業してみたら採算が合わなくてクリニックの経営の失敗につながってしまうことがあります。
また、商圏を見誤ってしまったが故の失敗例もあります。医療モールの地域特性から、患者や患者の紹介が特定の診療科のクリニックに集中し、「クリニックとの連携という優位性が思っていたよりも得られなかった」「自身が想定している患者ターゲット層が異なった」ということも挙げられます。
医療モールでの開業が失敗しないためのポイント
医療モールでの開業に失敗しないためのポイントは、次の通りです。
- ■十分な経営のスキルや計画性
- ■目指す方向性・方針が医療モールでの開業に合っているか
- ■同じ医療モールのクリニックとのコミュニケーション
クリニックの開業で失敗しないポイントとしては、基本的には通常の開業とあまり変わりがありません。開業医は、技術者であるとともに経営者であること、そして、開業コンセプトを明確にし、計画的に進めていくことが大切です。
十分な経営のスキルや計画性
医療モールに限らず、開業医として成功していくためには、経営者としての知識やスキルを身に付ける必要があります。自身の経営がうまくいっているのかどうかを知るためには、貸借対照表(バランスシート)、損益計算書、キャッシュ・フロー表といった財務諸表を読んで自身のクリニックの経営状態を分析し、改善につなげていくくらいのスキルを備えておきたいところです。
また、開業当初は、開業準備からスタッフの採用、集客など、全て自身で行う必要があり、多忙を極める可能性があります。信頼できる業務スタッフ、受付スタッフに長く働いてもらうためには、経営者としての人間力も大切です。医療モールで開業するに当たっては、事前準備も大切です。医療モールという優位性は享受できるかもしれませんが、クリニックを新規で開業する場合、患者ゼロの状態からスタートします。そのため、クリニック経営がすぐ軌道に乗るとは限りません。軌道に乗るまでには、1年以上かかることもあるといわれています。開業前には、どれくらいの期間でクリニックが軌道に乗るのか、軌道に乗るまでの資金はどのようにして、いくら準備しておけばいいのかなどの計画性も、重要になってくるでしょう。あまりにも多忙な場合は、全て自身でやろうとせず、専門家の力を借りることも大切です。
目指す方向性・方針が医療モールでの開業に合っているか
医療モールは、多くの診療科が隣接しているというメリットがあります。しかし、医療モールのメリットだけを見て安易に開業地を決めず、医療モール内にあるクリニックが自身の目指す医療の方向性、方針、顧客層が合っているかどうかを綿密に現地調査し、必ず確認することが必要です。場合によっては、開業を考えている医療モールですでに開業している医師にインタビューしてみるのも良いかもしれません。開業したい医療モールが、自身の方向性、方針に合致しているかどうかを確認するための大前提としては、どのような医療を提供していきたいのか、診療科目はどうするのか、顧客層はどうするのかといった開業コンセプトを明確にしておく必要があります。
まずは開業コンセプトを明確にし、精査した結果、「この医療モールの立地が、自身の方向性に合致していたから決断した」という手順で進めていくことを心掛けましょう。
同じ医療モールのクリニックとのコミュニケーション
複数の診療科が隣接している医療モールには、相応のメリットがあります。「医師は技術者」ですが、開業医の場合は「技術者であり、経営者」という側面もあります。経営者である以上、そこで働いている従業員、通院してくれる患者に対して適切な診療を提供し続けるためには、クリニックを存続させていく必要あります。医療モールは、同業種が隣接しているので、この相乗効果を利用しないという手はありません。医療モールのメリットを最大限に生かしていくためにも、他のクリニックや関連業者とのコミュニケーションを大切にすることを、心掛けましょう。
まとめ
医療モールで開業すると、複数のクリニックが相互の専門分野を補い合い、より高度な医療を提供することができます。一方で、近隣クリニックとのコミュニケーション不足などといった医療モール特有の要因から、クリニック経営の失敗につながる可能性もあります。医療モールでの開業の際には、自身の開業コンセプトに合致しているかどうかを確認した上で、進めていくことが大切です。
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