コラム
2021.06.22
開業に失敗する原因まとめ|医師が医院開業に失敗しないためのポイントを解説
クリニックの開業を検討している方の誰もが、失敗したくないと思っているでしょう。しかし、開業までにはたくさんのステップがあるため、全てを一人で行うことは困難です。
かといって時間をかけ過ぎていると、好立地の物件を逃してしまったり、無収入で生活費だけが出て行ってしまい、開業前に資金を減少させたりしてしまいます。この記事では、クリニックを失敗せずスムーズに開業する方法をご紹介します。
開業失敗例1:資金の使い道を間違えた
開業に向けて調達した資金も、使い道を間違えるとクリニックが軌道に乗る前に赤字になることがあります。
クリニック開業当初は開業資金、加えていざという時のため用意していた自己資金があればなおさら、「お金がたくさん手元にある」という気分になりがちです。
開業時に使用した初期費用は支出として管理がしやすいので、お金の流れを把握するのは比較的簡単です。しかしクリニック開業後は、借りた資金の返済がスタートします。
また、クリニックのスタッフへの給料、家賃支払いなどが並行して発生し、収入よりも支出が多くなっていることに気づかず、いつの間にか資金がショートしてしまう場合があります。
開業当初はお金が手元にたくさんあるため、つい高額な医療機器を導入したり高単価な客層を狙ってクリニックの内装にお金を使いすぎたりして、クリニックが軌道に乗る前に資金が底をつき失敗。これが、開業時の資金の使い道を間違えたケースです。
資金の使い道で失敗しないポイント
資金の使い道で失敗しないためには、開業時のコンセプトを明確にし、事業計画を念入りに立てることが大切です。
また、開業当初はクリニック自体の認知度も低く、すぐに売上が立たないので、ある程度の赤字期間も想定しておく必要があります。しかし、赤字が長く続けば、当然資金は減少していきます。赤字を少しでも防ぐためにはどうしたらよいでしょうか?
すでに開業している多くの開業医の方が、開業するクリニックの立地は重要だったと考えています。まず、立地を決めるには、在宅医療も対応するのか?診療科目はどうするか?駅前立地か、郊外型か?といったコンセプトを明確にすれば、クリニックの開業場所も自ずと絞られます。開業資金の大きな割合を占める物件価格や家賃の目処が付けば、それをもとに事業計画を作ります。
ローンの返済や人件費の支払いも含めたうえでどれくらいの期間で収益が黒字になるかを綿密に検討しておけば、資金の使い道で失敗するリスクを減らすことができます。
開業失敗例2:スケジュール通りに開業できない
開業がスケジュール通りにいかないことも失敗の原因の1つです。開業して、患者が来ない限り、クリニックに収入は入りません。
すでに勤務医を辞めて準備をしていた場合は、開業に時間がかかると、無収入で生活費をやりくりしなければいけない期間が長期間となり、生活苦から勤務医に逆戻りというケースもあります。
開業までには多くのステップがあり、自分だけの力では解決できない問題もあります。
例えば、コンセプトが決まり、自分が想定している患者層が明確になっても、開業するための物件探しはインターネット検索だけで判断することは難しく、最終的には現場で周辺状況を見る必要があるでしょう。かといって、やみくもに現地調査するのも大変です。また、資金調達の場面でも、金融機関が納得する事業計画を作れずになかなか融資が受けられない可能性もあります。
このように、開業に向けてのスケジュールの遅れも失敗につながるのです。
開業のスケジュールで失敗しないポイント
クリニック開業までのステップの中で特に難航するのは、開業地選定、事業計画の策定、そして資金調達です。
この流れをスムーズに進めるためには、開業コンセプトを明確にできたら各分野の専門家に相談することです。例えば、開業地の選定であれば、自分だけで考えてしまうと、仮に開業した後に、カルテの保管スペースが無かった、コンセントが足りなかったなど意外な見落としがあるかもしれません。
事業計画においても、専門家に相談をすればポイントをおさえた計画の作成ができ、さらに、精度の高い事業計画の存在はスムーズな融資につながります。
コンセプトは自分で決めるしかありませんが、専門家を活用することで、限られた期間内で開業までのステップをスムーズに済ませることができるため、スケジュールの遅れによって開業が失敗することは避けられるでしょう。
医院開設に適した案件探しや、専門家へのご相談は医院開業バンクをご活用ください。
開業失敗例3:患者さんが来ない
クリニックを無事に開業したものの、患者さんが来ないため売上が上がらず赤字経営となってしまうことがあります。
考えられる理由としては、考えた開業コンセプトがニーズに合っていなかった、宣伝ができていない、競合が多いといったことがあります。
それぞれのケースごとに例を挙げると、ニーズに合っていなかったケースとしては、駅の近くで開業したが、車の需要が高い地域のため、駐車場がなく不便である。
宣伝ができていないケースとしては、ホームページで自クリニックの良さが全くアピールできておらず、集客効果が見込めるサイトになっていない。また、実際に開業してみたら競合が思った以上に多く、新規で入り込む余地がなかったなどの理由が考えられます。
患者さん(お客さん)の数で失敗しないポイント
開業コンセプトを決めたら、コンセプトにあった開業地かを事前に確認しておくことが重要です。もしコンセプトと立地がどうしても合わないのであれば、立地からコンセプトを見出すことも検討する必要があるでしょう。いずれにしても、開業する際には立地は大変重要な要素で、その地域に多い年齢層や家族形態、例えば高齢者の数や学校の有無などといった近隣のニーズを正確に把握しておく必要があります。
また、ホームページ制作においては、自分の専門性は何かを十分に把握したうえで、本人の人となりを知ってもらうページを作るなど、見てくれた人が足を運びたくなるサイト内容や、医療に関する情報提供ブログを作成し、メインサイトへの導線を作るなど戦略的に行う必要があります。
患者が来ないという問題は、開業地の特性を正確に把握して、それに見合った効果的な広告をすることで解決ができるでしょう。
開業失敗例4:評判の低下
開業後しばらくは順調にクリニック経営ができていたとしても、クリニックの評判が悪くなり患者数が減少した結果、失敗してしまうこともあります。
患者の評判が低下する要因としては、スタッフの患者対応、自身の医療ミスや判断ミスなどが考えられます。スタッフの患者対応は、スタッフ教育が必要なケースもありますが、経営している本人が忙しすぎて適切なコミュニケーションがとれていないことが原因の場合もあります。
また、仮にクリニック内の人間関係がうまくいかず、スタッフがコロコロ変わると、クリニック内の人間関係が悪いことを患者が敏感に感じ取ってしまい、安心して診療を受けられず足が遠のいてしまうかもしれません。
評判維持で失敗しないポイント
クリニックの評判を落とさないために、スタッフ教育や職場環境、そして雇用環境の整備を整えることが大切です。
スタッフ教育としては、患者への対応やマナー研修も効果はありますが、何よりもスタッフとの毎日の些細なコミュニケーションも重要です。また、自分自身も経営者の勉強会に参加するなど自己研鑽を怠らないことが大切です。
一方、雇用環境という点では、能力に応じた給与体系や、スタッフが子育てや介護をしながら働き続けられる環境を用意し、福利厚生も充実させておきましょう。スタッフのモチベーションアップや長期的な雇用につながります。
自身のストレス管理も重要です。開業医は業務が多いので、スタッフに仕事を振り分けて、極力、診療だけに集中できる環境を作りましょう。ストレスも軽減され、スタッフに対してもゆとりをもって接することができるようになります。
開業失敗例5:金融面の知識不足
金融面での知識不足が原因でクリニック経営に失敗することがあります。
経営をしていると、売上は売掛金、仕入れは買掛金といってすぐに現金で処理できないことが多くあります。また、多くの入出金があり、支払日もバラバラであることが多いです。そのため、実際に使えるお金が今いくらなのかがわからなくなり、黒字倒産となる可能性があるのです。
例を挙げると、診療報酬が5月20日頃に入金されると想定していて、そのお金で5月21日にB社に対し200万円の支払いを予定していました。しかし、何らかの事情でもし5月20日に入金が無かった場合、B社に支払いはできません。クリニック中の現金を集めても50万円しかなく、結局支払えなかった。知らないうちに現金がなくなっていたのです。これが黒字倒産の状態です。
実際、このケースではすぐ倒産とならないかもしれません。しかし、このようなことが続いてしまうといずれ黒字倒産となるリスクは高いケースといえるでしょう。
金融面の知識不足によって失敗しないポイント
金融面の知識不足で失敗しないポイントとしては、資金繰り表を作成することです。入金時期と経費の支払い日を管理することで、現金の過不足を確認することができます。もし、足りないことがわかった場合、事前に一時的な資金調達をすることで黒字倒産のリスクを避けることができます。
資金繰り表に限らず、できれば売上管理や貸借対照表、損益計算書といった財務諸表の知識などを、身に付けておくと経営分析にも今後役立ちます。時間がない場合は、税理士などの専門家に相談することも検討してよい部分です。
開業失敗例6:全てをコンサルタント任せに開業
開業までのステップの中で、コンサルタントに依頼したほうがよい場面もありますが、全てをコンサルタント任せにすると失敗につながる可能性があります。
なぜなら、開業コンサルタントは慈善サービスではなく、商売として活動をしているからです。
例えば保険も同じで、必要のない保障は減らすことで保険料を削減することができますが、全部お任せするといわれたら、セールスマンは後で保障が出なかったとモメたくないので、高額なフルサポートプランを提示してくるでしょう。
開業コンサルタントにも同様のことが言えます。
また、全てをコンサルタント任せにすると、費用が高くなるケースが多いです。全ての主導権を相手に握られてしまうことが無いよう、紹介された商品や、提案された内容や予算が妥当かどうかをチェックできるくらいの知識は持っておく必要があります。
開業コンサルタントを利用して失敗しないポイント
開業コンサルタントを利用して失敗しないポイントは、開業の各ステップに精通したコンサルタントを活用することです。
クリニック専用の開業コンサルタントといっても、製薬・医薬品卸系や不動産系、士業(税理士、社労士、行政書士)系などそれぞれ得意分野があります。
どれもコンサルティング無料で利用できるケースが多いですが、製薬・医薬品卸系は最終的には医療機器を購入すること。不動産会社系は、物件の賃貸または購入・建築をしてもらうこと。士業系は顧問契約をしてもらうことなど、必ず無料の背後に目的が介在しているケースが多いです。中には、自社の商品を売ったらアフターフォローがあまり期待できないこともあるので、それぞれの特徴を理解したうえで依頼をするか、有料でもすべて一括で相談に乗ってくれるコンサルタントに依頼をするなど慎重に選ぶのが失敗しないポイントです。
医師の開業失敗例まとめ
医師の開業失敗例を改めてまとめてみます。
医院開業の失敗例 |
失敗しないためのポイント | |
1 |
資金の使い方を間違えた |
開業コンセプト・事業計画をしっかり練る |
2 | 開業スケジュール通りに進まない |
要所はコンサルタントを活用 |
3 | 患者さんが来ない |
開業地のニーズ調査・宣伝方法の確立 |
4 | 評判の低下 |
教育方法、労働環境、雇用条件の見直し |
5 | 金融面の知識不足 |
資金繰り表の作成、税理士など専門家へ相談 |
6 | 全てをコンサルタント任せ |
主導権を握る、慎重なコンサルタント選び |
ここで紹介した内容は、開業前に知っておけば防げることばかりです。開業医として現在検討している方は参考にしてください。
開業の失敗は開業前に防ぐことができる
クリニックの開業には途中に多くのステップが必要で、開業までスムーズに一人で行うのはかなり難しいのではないでしょうか?勤務医をしながらでは、忙しくて時間がとれず、良い物件があっても逃してしまうかもしれません。すでに退職して準備をしている場合は、スピードをもって取り組まないと、無収入で生活費だけがかかる日々が続いてしまいます。いずれにしても、開業を検討している場合は、スムーズかつスピーディに行うことが大切です。
開業までの各ステップをスムーズかつスピーディに済ませるためには、たとえ有料であっても各分野に精通した信頼できるコンサルタントを選ぶことが大切です。
コンサルタントによっては、知識、経験や報酬体系に違いがあるので、しっかり比較をすることが必要になります。
医院開業バンクは、専門家の検索や、比較がしやすいサイトとなっています。
まとめ
クリニックを開業するまでには複数のステップがあり、開業を考えた時から、経営者、人事部、総務部、営業、経理部といった会社であれば別々の担当者が行なう仕事を一人で行わなければなりません。そのため、開業にあたっての失敗事例も多く、仮に開業できたとしてもすぐに軌道に乗らない可能性もあります。
開業して早期に経営を安定させるためには、開業前に失敗しないための対策を立てておくことが重要です。なおかつ、現在勤務医でも、すでに退職している場合でも、信頼できる開業コンサルタントを見つけてスムーズかつスピーディに行うことで、早期に経営を軌道に乗せることが可能になります。
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