コラム
2021.06.21
開業医向け医院開業コンサルタントの費用相場|スムーズに進めるコツを解説
勤務医からの開業を考えているけれどどうしていいかわからず調べているうちに、開業コンサルタントという専門家がいることに気づいた人がいるかもしれません。
開業するなら効率的にしてみたいけれど、開業コンサルタントって何を支援してくれるのでしょうか?そんな疑問を持つ人や、開業コンサルタントを依頼しようか悩んでいる人向けに、具体的なサービスについて深堀りしています。
医院開業時にコンサルタントができること
医院開業時にしなければならないこと |
開業コンサルタントができること | ||
1 | 開業コンセプトの決定 |
経営理念の決定、医院の強み、診察スタイルの決定 |
ヒアリングを元にアドバイス |
2 | 開業地選定 |
立地調査、診療圏調査、将来性の予測、継承物件の検討 |
開業地選びのポイントの情報提供、物件探し、継承物件の提案 |
3 | 事業計画策定 |
経営基本計画、資金計画書、収支計画書、損益計算書・キャッシュフロー表の作成 |
資金計画書、収支計画書など融資に向けた資料作成のアドバイス |
4 | 資金調達 |
調達方法の検討、調達先の選定、金融機関への相談・申込・面談等 |
資金調達に向けてのアドバイス、事業計画を金融機関に説明するなど資金調達のサポート |
5 | 内装設計 |
建物本体工事との調整、設計・内装業者の選定、保健所への事前確認 |
内装工事の図面作成、開業時の保健所立入検査のアドバイス |
6 | 医療機器の決定 |
機器の選定・発注、内装業者との調整、納入スケジュールの調整、操作指導 |
近隣医療機関との連携の確認、機器の必要性についてのアドバイス |
7 | 雇用準備 |
人員計画の策定、就業時間・時給等の検討、各種規定の作成、求人広告、面接・採用、雇用契約 |
就業規則や雇用契約、給与体系、福利厚生などのアドバイス |
8 | 宣伝・広告 |
リーフレット・チラシ等の検討、看板・サインの検討、ホームページの作成、SEO対策 |
マーケティング、SEO対策支援 |
9 | 行政手続き | 開設届、保険医療機関指定申請、各種公費申請、消防関連 | 各種行政手続きの代行 |
かなり多くの工程がありますが、中でも時間がかかるのは、開業地選定、事業計画策定、資金調達の3つです。
なお、上記表の全ての業務を一括で請け負ってくれる開業コンサルタントも存在します。有料になりますが、費用の相場はおおよそ100~300万円。
一方、それぞれのステップごとにコンサルティングを受ける場合は、費用は無料であることが多いかもしれません。
しかし、例えば開業地の選定では不動産会社とやりとりをすることになりますが、物件の賃貸や物件の購入への期待を込めた価格設定となっていることがあります。なお、その他のステップについても同様の傾向です。
全てを自力で行うよりも、開業コンサルタントのサポートを受けながらの方がスムーズに開業までたどり着けます。
1:開業コンセプトの決定
開業コンセプトの決定とは、自分のクリニックの特徴を明確にすること。
つまり、どんな患者に対して医療を提供するのか、どのように患者や地域に貢献していくのかという診療方針を決めるなど、言わば企業の経営理念に相当する内容を定めることです。
自分がどんな患者に医療を提供するのかを決めると、開業すべきエリアはどこかが絞られ、必要な医療機器も自ずと決まってきます。
また、クリニックの診療方針を決めると、どれくらいの患者を受け入れられるのかという病院の規模が決まり、必要なスタッフの人数も定まっていきます。
開業コンセプトの明確化は、開業地選定の根拠となる重要なもので、開業地選定以降も、事業計画書作成、資金調達にも影響を及ぼします。開業コンサルタントは、まず開業コンセプトの重要性を伝え、ヒアリングをもとにコンセプト作成のサポートを行います。
2:開業地選定
開業地選定とは、自分がクリニックを開業する場所を決めることです。交通機関や地理的条件を見る立地調査や、具体的には通常の企業でいう市場調査にあたる、診療圏調査、将来性予測などを行い、開業地を確定していきます。
すでに開業している開業医の中でも、最初にもっと立地を調べておくべきだったという後悔の声は少なくありません。
診療圏調査は、国勢調査と厚生労働省が3年に1度実施している患者調査をもとに作成されているため、自身で調べることも可能ですが、開業地選定は、今後のクリニックの行方を左右する重要な問題です。
最終的には自分で判断することにはなりますが、開業コンサルタントから診療圏調査や将来性分析についてアドバイスを受けることもできます。場合によっては継承開業の提案をしてくれることもあります。
開業に適した案件が見つからない場合
開業地の選定は、クリニック開業までのステップのうち最も時間がかかる過程の1つです。
すでに開業に向けて退職をしてしまっている場合は、収入がないため開業までは生活費のために貯蓄を取り崩しているかもしれません。
また、開業したからといってすぐに経営が軌道に乗る保障はありません。一方、勤務医で働きながら開業準備をしている場合は、開業までの収入は問題ないかもしれませんが、激務の中いつまでも開業準備が長引いてしまえば疲労で業務に支障をきたしてしまうかもしれません。
開業地がなかなか見つからない場合は、医院開業バンクをご活用ください。新規・継承を問わず全国の豊富な医院開業案件を掲載しており、簡単に検索・比較ができます。また、疑問や案件について、開業コンサルタントなどの専門家に相談をすることも可能です。
3:事業計画策定
事業計画はクリニックを軌道に乗せるための計画づくりのことで、開業コンセプトの詳細を文章化した「経営基本計画」と、物件費用や医療機器といった開業に向けていくら用意する必要があるかを記載した「資金計画書」。
開業後の収入と支出の見込みを記載した「収支計画書」などを作成します。また、これらの書類をまとめたものを事業計画書といい、自身の開業の目標を達成するための指針となるものですが、金融機関から資金調達をする際にも非常に重要な書類になります。
事業計画書の内容が現実的でないと金融機関から判断されると、開業資金の融資の審査に悪い影響を与える可能性があります。自分でも作成可能ですが、開業コンサルタントから過去の経験に基づいた現実性のある資金計画や収支計画書、事業計画作成のサポートを受けることができます。
実際に開業してみたら想像以上に初期費用がかかった、思った以上に日頃の経費の支出が多かったなど想定外の出来事を避けることができます。
4:資金調達
事業計画を作成したら実際に、開業資金の融資を申し込みます。開業資金の調達方法は、融資希望額や、資金需要の緊急度などによって異なりますが、金融機関から融資を受けるのが一般的です。
しかしその他にも、日本政策金融公庫のように新規事業に積極的に融資をする政府系金融機関や、自治体の制度融資、返済期間が比較的長期でとれるため、毎月の返済額が軽減される民間金融機関の開業支援ローンなどさまざまな調達方法があります。
よりよい条件で資金調達を受けたほうが、今後のクリニックの経営に有利にはたらくため慎重に選びたいところですが、各資金調達方法について一つずつ調べていくのは膨大な作業です。
開業コンサルタントを活用すれば、自分のクリニックの状況にあった最適な資金調達方法や資金調達先を提案してくれます。
5:内装設計
内装設計においては、設計と内装業者の選定を行います。
また、建物本体の工事が行なわれていると、内装工事ができない場合があるので、日程調整が必要です。自身のクリニックのイメージを伝え、内装の平面プランができたら、保健所に事前確認に行きましょう。診療所を開設する際は保健所の立入検査があります。こだわりすぎて、保健所の規定から外れていることが無いよう注意が必要です。
経験豊富な開業コンサルタントのアドバイスを受けながら内装設計を進めていけば、保健所の立入検査も心配ありません。
6:医療機器の決定
医療機器の選定時も開業時のコンセプトが重要になってきます。最先端の医療を地域で導入したい、在宅医療を充実させたいというだけでも導入すべき医療機器は異なってくるでしょう。また、医療機器は高額なのでリースで利用をすることもありますが、毎月の固定費となるため、金額によってはクリニックの毎月の収支に影響を与えかねません。
自分の開業地で導入する医療機器のニーズが高いかどうかも検討が必要です。自前で高額な医療機器を購入するよりも、近隣の医療機関との連携をとったほうが良い場合もあります。
医療機器の導入に際してのアドバイスや、他の医療機関との連携の可能性についても開業コンサルタントのアドバイスを得ることで過剰な投資を避けることができます。
7:雇用準備
開業医は診療だけしていればよいわけではなく、会計や物品の購入、カルテの作成などさまざまな業務があるため、スタッフを採用する必要があります。想定できる業務からスタッフがどれくらい必要なのかを判断し、求人広告を出し、面接を行います。
また、求人を出すために、労働条件や給与の取り決めも必要になります。そして、実際に採用となれば雇用契約を結ぶことになります。
給与の相場や福利厚生、また労働条件の中身をどうしたらよいか、雇用契約の中に何を書いたらよいのかがわからないということもあるかもしれません。不明な点は、開業コンサルタントの支援を受けるようにしましょう。
8:宣伝・広告
クリニックを周知してもらうためには宣伝・広告を行う必要があります。まず、チラシやリーフレットや看板のデザイン、そしてホームページの作成が必要です。
また、自クリニックのホームページを多くの方に検索してもらい患者を増やすためには、検索で上位表示されるためにサイトのSEO対策を行い、来院を促すコンテンツ作りが大切です。
ただし、医師は人の身体や心の不調を治療するという社会的責任の大きい職種という特徴から、医師法や医療広告ガイドラインによって広告には一定の制限があり、地域によっては医師会の許可があるケースもあります。
せっかく作成した広告が無駄にならないよう、宣伝・広告のルールはしっかり把握しておきましょう。広告に関しても開業コンサルタントに相談をしてみるのもよいでしょう。
9:行政手続き
クリニック開設にあたり、多くの行政手続きが必要になります。以下は開業にともなう主な手続きです。
開設許可 |
診療所開設届、X線備付届、保険医療機関指定申請書、施設基準届出書 |
税金関連 |
個人事業開設届、青色申告承認申請書、源泉徴収の納期特例に関する届出書 |
保険関連 | スタッフの社会保険、労災保険、厚生年金 |
消防関連 | 防災管理者講習 |
税金関連、保険関連、消防関連については、一般的な開業とほぼ同じですが、開設許可だけは医療機関ならではのものがあります。特に保険医療機関指定申請書については、これを提出しないと患者は健康保険の適用を受けることができず、医療費が全額自己負担になってしまいます。
一つ一つの書類はさほど難しいものではありませんが、書類の数が多く内容を理解するだけでも大変です。適宜、開業コンサルタントのサポートを受けましょう。
開業コンサルタントを利用するメリット・デメリット
開業コンサルタントを利用する主なメリットとデメリットをまとめると以下の通りです。
>
【開業コンサルタントを利用するメリット】
- スケジュール通りスムーズに進められる
- 書類申請などの代行を依頼できる
- 勤務医として並行しながら業務を依頼できる
【開業コンサルタントを利用するデメリット】
|
開業コンサルタントを利用するメリット
- スケジュール通りスムーズに進められる
- 書類申請などの代行を依頼できる
- 勤務医として並行しながら依頼できる
有料の開業コンサルタントに任せることで、開業コンセプトや事業計画書作成のアドバイスを受けることができます。
開業地選定にも独自のノウハウがあるため、全て自分で行うよりも、開業までの時間の短縮が可能です。
融資の交渉や各種届出などもお任せすることができるため、忙しい勤務医でも、働きながら開業に向けて準備ができます。
開業コンサルタントを利用するデメリット
- お任せしすぎると自分の意思を反映させられなくなってしまう
- 費用がかかる
開業コンサルタントは開業までの全てのステップについてのノウハウを熟知しているため、開業までのスピードを早めることができます。
逆に、コンサルティング料を払わずに自力で物件探しをして、なかなか物件が見つからなったり、事業計画書ができず金融機関に交渉に行っていなかったりして開業が遅れてしまえば、収入を得るのがその分遅れてしまいます。
大変かもしれませんが、勤務医として働きながら開業コンサルタントに依頼をすることで収入を得ながら開業準備をしたほうが、開業のために退職をして貯蓄を取り崩しながら過ごすよりもメリットが大きいかもしれません。
ただし、あまりお任せしすぎると、開業コンサルタントの判断となってしまうので、いざ開業したら自分の意思が全く反映されていないクリニックだったということにもなりかねません。
頼れる開業コンサルタントだったとしても、あくまでも主導権は自分が持っていることは忘れないようにしましょう。
なお、開業コンサルタントによって料金体系や費用はそれぞれ異なっています。医院開業バンクで専門家を検索し、比較検討をしてみることをお勧めします。
まとめ
クリニックを開業するまでには多くのステップがあり、開業地の選定、事業計画策定、資金調達は特に時間がかかります。開業までの期間が長くなると、収入が発生してクリニックが軌道に乗るであろう時期が先延ばしになってしまいます。
医院開業バンクの開業コンサルタントを活用して、新規開業したクリニックの早期収益化を目指しましょう。