コラム
2020.07.10
令和の電子カルテ状況とカルテ検討のポイント
このページをご覧になられている多くの先生は、お勤め先で電子カルテをご利用された事があり、今後、ご開業を検討されている方が多いと思います。現在の一般診療所(※1)における電子カルテの状況、電子カルテ選定と並行して検討頂きたい内容を、4回に分けてご案内させて頂きます。
令和の電子カルテ状況とカルテ検討のポイント
2000年(平成12年)頃より普及し始めた電子カルテですが、一般診療所における普及率は、電子カルテシステム等の普及状況の推移(※2)によると、平成20年 (14.7%)平成23年 (21.2%) と、初回10年の普及率は、20%程でしたが、平成26年(35.0%)、平成29年(41.6%)、“一般診療所101,471施設に対し、42,167施設”で電子カルテが導入されていると厚生労働省より報告されております。(参考、平成29年度 400床以上の病院での電子カルテ導入率は、85.4%で推移)
電子カルテ導入件数は、新規開業時の導入を中心に現在も増えており、現時点(令和2年)の普及率は45%前後、約45,000施設で導入されていると想定されます。また、創成期より電子カルテを導入された先生方は、同メーカーの後継機種への入替え、異なるメーカー製品の採用を問わず、2世代目、3世代目への更新をされています。
電子カルテの導入形態
次に、電子カルテの導入形態についてご案内させて頂きます。 大きくは2パターン、“院内サーバー型(オンプレミス型)”と“クラウド型”の選択になりますが、医事会計・レセプト請求機能が、“一体型”か、“連動型”、どちらで導入するかを含めると、下記4パターンに分かれます。
(1)電子カルテ(オンプレミス型)X 医事会計(オンプレミス型)連動型での導入
(2)電子カルテ(オンプレミス型)X 医事会計(オンプレミス型)一体型での導入
(3)電子カルテ(クラウド型)X 医事会計(クラウド型/オンプレミス型)連動型での導入
(4)電子カルテ(クラウド型)X 医事会計(クラウド型)一体型での導入
トレンド化しているクラウド型電子カルテは、在宅・往診診療を中心とする施設を中心に採用されていましたが、外来診療を中心とする施設でも2016年頃より普及し始め、ここ最近では、クラウド型電子カルテ(クラウド型)を中心に検討される先生が増加傾向にあり、クラウド型製品の提供メーカーも年々増加しています。この傾向は、更に加速すると思われますが、電子カルテ導入施設全体(約45,000施設)から見ますと、多くの先生方は、オンプレミス型の電子カルテを導入されていますので、クラウド型電子カルテの導入率は2割前後と推測されます。
また、効率性・費用性の側面より、医事会計一体型で導入されている施設が多い傾向ですので、現時点では、“(2)電子カルテ(オンプレミス型)X 医事会計(オンプレミス型)一体型”での導入の施設が多い状況となります。
オンプレミス型とクラウド型のメリットとデメリット
ここで、簡単に、オンプレミス型と、クラウド型のメリット・デメリットについてご案内させて頂きます。
オンプレミス型は、ソフトウェアライセンスの購入、メーカー指定のハードウェア購入が必要となる場合が多く、クラウド型製品に比べ初期導入費用は高額になりますが、サポート面では「電話・メール・リモートサポート」に加え、「訪問サポート」が受けられる場合が多く、対面型サポートによる安心感が得られます。
また、製品・機能面では、カスタイマイズ性が高く、機器・検査連携面においても先生のニーズを満たす対応が期待されます。
一方、クラウド型は、先生自身でハードウェアの調達が可能、ソフトウェアライセンスの購入が無く、月額費用で利用できるため、オンプレミス型に比べ初期導入費用は安価で導入する事が可能です。また、サーバー保守管理、日々のデータバックアップ作業が不要となりますので、運用コストも下がる傾向にあります。しかし、その反面、システムの処理速度はネットワーク回線に依存する部分が大きく、「電話・メール・リモートサポート」が中心となり、対面型サポートが受けられないケースがあるようです。製品・機能面では、カスタマイズ性能、機器・検査連携対応が限定的であるケースががありますので、費用面だけではなく、各社の対応状況、サポート対応範囲をよく確認し、選考する事が必要となります。
電子カルテの導入理由
電子カルテの導入理由は複数ありますが、大きくわけると3つの側面に分かれます。
(1)効率化の側面:業務効率化・低減、カルテ記載の迅速化、カルテ保管スペースの省略
(2)費用性の側面:請求漏れ・算定漏れの回避、コスト削減
(3)患者視点側面:サービスの質の向上、患者待ち時間の短縮、安全性向上・医療ミスの防止
お勤め先の施設で、電子カルテをご利用になられている先生も多いかと思いますが、ご開業後は、医師と経営者としての視点も必要になりますので、(2)の側面(請求漏れ・算定漏れの回避、コスト削減)も重要ポイントとしていただき、比較検討頂きたいと思います。
電子カルテを選定する上で、複数社のシステム比較が必要となりますが、先生の情報収集方法は、知り合いの医師(特に開業されている医師)への相談が一番多く、次に、インターネット検索(各メーカーのホームページ・製品ページを確認)が多いようです。また、開業支援コンサルタントへの相談や、展示会・開業セミナー併設の機器展示への参加により、メーカー営業担当者からの説明・デモンストレーションを受けられたり、製品情報(カタログ・製品資料)を収集されています。
電子カルテ導入を検討・決定すべき時期
次に、電子カルテは開業が決まった後、“どの時期に検討・決定をすれば良いか”についてご案内させて頂きます。この相談は多数の先生から頂きますが、多くの先生は、開業5~6ヶ月前に検討を開始され、1次選考として4~5社のデモンストレーション(1社当りの面会は1時間前後)をご覧になられた後、初期費用・月額費用(保守費用)の確認を行われます。
その後、2~3社へ絞り込みをされ、最終選考(再デモンストレーション・運用確認・利用施設ヒアリング)を行い、遅くとも開業3ヶ月前には導入メーカーを決定されています。
まとめ
“少し早いのでは?”と感じられるかもしれませんが、システム納品は開業1ヶ月前になる事が多く、納品後は非常にタイトな日程で開業準備を行わなければなりませんので、電子カルテ導入に関する打合せ(オーダーセット・採用薬剤リスト・所見入力テンプレート・操作講習会のスケジュール調整など)や、医療機器、予約システム等とのシステム連携の打合せ等は、採用メーカー決定後、余裕を持って進める事で、開業前の運用シミュレーションや、各スタッフ様との運用確認時間が確保でき、開業直前の不安要素を少なくすることができますので、開業が決定した後、出来る限り早く、電子カルテの検討を進めて頂けますと宜しいかと思います。
次回は、“電子カルテをより効率的に運用するために検討したい院内システム“についてご案内させて頂きます。
【注釈】
(※1) 一般診療所とは、診療所のうち歯科医業のみを行う診療所を除いたものをいいます。
(※2) 電子カルテシステム等の普及状況の推移「出典:医療施設調査(厚生労働省)」より