コラム
2023.10.17
医療法人化するメリット・デメリット|従業員にどんな影響がある?
「医療法人化すると従業員には影響があるの?」法人化をお考えの方からよくいただく質問の一つです。メリット、デメリットの両方が存在しますので、ご自身のクリニックを法人化した場合どうなるのか?手順は?費用は?事業計画を含めて、専門家に相談してみることをおすすめします。当社では法人化のお手伝いも行っています。まずはお気軽にご相談ください。
クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。
医療法人化にはメリットとデメリットがあり、検討する際は自分の医院にあったメリットを見つけた上で、従業員にとってどんな影響をもたらすかについても目を向けて考えなければいけません。ここでは、医療法人化による医院と従業員へのメリット・デメリットに加え、医療法人化に必要な要件や費用についても併せて解説します。
【参考記事】医療法人にしない理由とは|法人化するメリット・デメリットを解説!
【参考記事】医療法人化のメリット・デメリットとは|設立検討のポイントも紹介!
医療法人とは
医療法人とは、医療法をもとに設立された病院や診療所、老人保健施設などを開設・所有をする法人のことです。個人経営で医院開業をしてしばらくたってから医療法人化するケースが一般的です。医療法人は各都道府県から認可を受けた医院なので、設立時には各都道府県知事に申請し、認可を受けることが必要となります。また、個人経営の医院では、経営者である院長が従業員に給与を支払いますが、医療法人化された医院は医院全体が1つの団体として扱われるため、院長も含め医院から給与が支払われるシステムとなります。
医療法人は医療法人財団と医療法人社団の2種類に分かれます。さらに医療法人社団では出資持分ありの医療法人と、出資持分なしの医療法人に分けられ、出資持分の有無により医院の資産を受け取る財産権を所有するか否かが決まります。一方、医療法人財団は出資持分なしであることが条件となります。
他にも特別な医療法人として、社会医療法人、特定医療法人も存在します。
医療法人化のメリット
医療法人を設立するメリットとしては主に以下の3つが挙げられます。
・給与所得控除など大きな節税効果が得られる
医療法人化することで、家族を従業員または役員として在籍させて給与を支払うことができます。給与の支払い金額が大きいほど、給与所得控除が受けられ、医院にかかる税金が軽減できます。また、個人経営の医院にかかっていた所得税や住民税などの個人課税も、法人課税に切り替わることで最高税率が下がり、大きな節税効果が得られることがあります。
・退職金が支給可能になる
個人経営の医院では退職金が支払えないケースも多かったですが、医療法人化すると退職金の支払いが可能となります。退職金は通常の給与よりも税金を軽減できるため、退職金の支払いは医院の節税効果にも繋がります。
・事業拡大ができる
医療法人化した医院では、分院や介護事業所といった複数の事業所を同時に経営することができます。また、医療法人化した医院は国が管理することになるため、院長が死亡した際にも法人として経営継続することができ、相続の際に有利となります。
医療法人化のデメリット
医療法人を設立するデメリットにも注目してみましょう。
・運営管理が複雑化する
医療法人化すると、国の法律に基づいた医院であることを証明し続けるために、毎年事業報告書や資産登記、理事会の議事録といったさまざまな書類の提出が必須となります。さらに事業報告書に沿った事業展開を行わなければいけないなど、個人経営時に比べて運営管理が複雑化されます。
・出資持分がない
医療法人では非営利性を求めるため、出資持分がない医院のみが対象となります。出資持分を持つ人がいないため、医院の資産は誰も受け取れず、医療法人解散後は国や地方公共団体に帰属することになるため、後継者がいないクリニックの場合、医療法人化によりかえって損をしてしまう場合があります。ただし、平成19年4月に行われた法改正により、現在は出資持分のない医療法人しか設立できなくなったため、その場合は医療法人を新設する際のデメリットとは言えないでしょう。
医療法人にするための具体的な手続きは厚生労働省のHPで詳しく参照することができます。
医療法人化による従業員への影響
医療法人化することになり、経営者だけでなく従業員にもさまざまな影響があります。従業員にとってのメリットとデメリットについても見ていきましょう。
従業員にとってのメリット
医療法人化による従業員にとってのメリットは以下の3つが挙げられます。
・急に職場を失うことが少ない
個人経営の医院であれば、後継者がいないなどで閉院してしまう可能性がありますが、医療法人は新たな経営者を立てて医院を継続させることができるため、従業員が急に職を失うといった心配は少ないです。
・経営が安定している
医療法人化できるということは、人員的・財産的どちらにおいても国が設ける一定の条件をクリアしていることを表すため、経営が安定している医院が多く見られます。また、医療法人化された医院は院長が主体でなく、客観的に医院監督する役員やコンサルタントが介入していることも多いため、今後も安定した経営を続けることができる可能性が高いです。
・厚生年金や社会保険に加入できる
医療法人化すると従業員全員の社会保険・厚生年金の加入が必要となります。これまで国民健康保険を自ら支払っていたという人も、職場で行ってもらえるため、保険に加入したい方にとっては大きなメリットになります。
従業員にとってのデメリット
従業員にとっての医療法人化によるデメリットは以下が挙げられます。
・家族経営の場合、疎外感を感じることがある
個人経営から医療法人になった医院の場合、家族で経営しているケースも多いです。家族ならではの連携が取れるのも魅力ですが、あまりに家族だけで一致団結するあまり、従業員がなじめず、疎外感を感じてモチベーションが下がってしまう可能性もあるため注意が必要です。
・患者数が多く忙しい医院が多い
病院名に「医療法人」とあるだけで、対外的な信頼度が高まる傾向にあります。充実した患者数を誇る医院も多いため、仕事が忙しいと感じる人も多いでしょう。一方で忙しい分、責任感を持てる仕事が好きな方ややりがいを持って取り組める方には向いています。
医療法人化の要件
医療法人設立には大きく分けて人的要件、施設・設備要件、資産要件の3つが求められます。それぞれの詳細をご紹介します。
・人的要件
医療法人設立にあたり、社員は3名以上必要となり、役員は理事長を含む理事3名、監事1名の計4名が最低ラインとなります。しかし、法人の理事就任を予定している方や医療機関職員は監事に就任できないため注意しましょう。
・施設・設備要件
1箇所以上の病院や診療所、老人保健施設を所有していることが条件で、賃貸借契約書や登記事項証明書、図面など正式な情報で医療施設が存在することを証明しなければいけません。建築中の場合は、認可の日までに完成することを証明する必要があります。施設と同時に医療行為に必要な設備や器具の確保についての報告も必要です。
・資産要件
設立後2カ月分の運転資金が現預金で確保されていることが条件です。これは予算書で判断されるため、予算書には審査されることを前提に正式な金額を記載しましょう。また、個人時代の設備を買い取る際は、その資金も別途必要となります。
医療法人化にかかる費用
医療法人化による手続きは専門的な知識が必要となるため、院長自身で行うのは難しいでしょう。医療法人化する際は、コンサルタントに依頼して行うことが一般的です。その場合、コンサルタントへの報酬額が医療法人化にかかる費用にプラスされることになります。
主に必要となる手続きの相場は以下となります。
・医療法人設立認可申請…60~100万円・医療法人の登記完了届出…10~15万円
・保健所への開設手続き…約25万円
・厚生局への保険医療機関指定申請…10万円
・役員変更届…5万円
・事業報告等提出書…5万円
金額は、すべての手続きを一任するか、一部は自身で負担するのかなど、依頼する内容によって異なりますが、トータルで依頼するとなると総額100万円は超えると考えておきましょう。開業に関わる費用の詳細については「開業費用基礎知識」の資料も参考になりますので費用面での情報収集をされている方はダウンロードしてみてください。
まとめ
「医療法人化は節税効果があってお得」と耳にする方も多いと思いますが、すべての医院にとって必ずしもメリットばかりとは限りません。また、一般的にデメリットとなりそうなポイントも医院によって異なります。医療法人化を前向きに検討したいけれども本当に医療法人化すべきかわからないという人は、開発支援サービスや専門のコンサルタントに相談し、プロの観点からアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。