コラム
2020.06.30
医師のクリニック開業資金に必要な金額|費用の内訳や融資を受ける条件
クリニックを開業するためには、医師としての手腕はもちろんのこと、多額の資金も必要です。必要な資金は診療科ごとに異なります。莫大な初期投資を理由に、開業を躊躇う人もいるのではないでしょうか。しかし、開業時にはすべてを自分で用意する必要はなく、融資を受けることも可能です。これからクリニックを開業したいと考えている方は、融資を受けることも検討してみてはいかがでしょうか。
クリニック開業資金の相場
クリニックの開業な必要な資金の相場について、内科、眼科、精神科の診療科ごとに紹介します。
また、診療科ごとの開業費用については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてください。
・内科
内科のクリニックを開業する際の必要資金の相場は、運転資金も含めて最低でも5000万円程度です。戸建て開業の場合には、1億円を超えることも少なくありません。
内科と一口に言っても、その領域は多岐に亘ります。そのため、以下の眼科や精神科と比較して、多くの設備や機器を用意することが必要です。結果として、必要な資金の額が膨らみます。
居抜き物件やリース品を利用することにより、ある程度初期費用を抑えることは可能です。
・眼科
眼科を開業する場合には、運転資金も含めて最低5000万円程度が開業資金の相場です。例えば、白内障などの手術も手掛ける場合には、手術用機器の手配やより広いクリニック面積が必要になるため、準備すべき資金も大きくなります。また、眼科には目の不自由な患者も多数訪れるため、バリアフリーを考慮したレイアウトにすることも欠かせません。
少しでも資金を抑えたい場合には、引き受ける治療の範囲を限定的にする必要があります。
・精神科
精神科のクリニックは、他の診療科よりも安く開業資金を抑えられます。その相場は1000万円程度です。精神科は、できるだけ人目につきにくい立地が理想とされるため、テナントの2階以上で運営されることが一般的です。そのため、かなり土地や建物の代金を抑えることができます。
用意すべき設備も電子カルテなど、それほど多くありません。しかし、他の診療科以上に患者のプライバシーを守れる空間にするための投資はしておいた方が良いでしょう。
クリニック開業資金の内訳
クリニックの開業資金は、主に設備資金と運転資金に分けられます。設備資金には以下のような項目が挙げられます。
■ 土地・建物購入費
■ 内装費
■ 医療機器購入費
■ 医療設備購入費
■ コンサルタント・開業支援サービス利用料
■ 保証金
戸建てクリニックの開業を考えている場合には、土地と建物の購入費の占める割合がかなり大きくなりがちです。
初期費用を抑えたい場合には、テナントを借りたり、居抜き物件を利用したりすることをおすすめします。医療機器や医療設備が、何がどれだけ必要かということについては、診療科ごと、クリニックの規模ごとに異なります。
また、運転資金としては以下のような項目が挙げられます。
■ 日本医師会入会費
■ 従業員給与
■ 広告宣伝費
■ 薬剤費
■ 福利厚生費
■ 家賃(テナント開業の場合)
運転資金は、開業後も継続的にかかってくるものです。しかし、開業直後には十分な入金も期待できない可能性があります。そのため、少なくとも2~3か月分くらいの運転資金は用意した上で、開業した方がいいでしょう。
クリニック開業資金の融資
クリニック開業に際して、自己資金だけで賄えない場合には、融資を受けることもできます。むしろ、融資を受けなければならないケースの方が多いでしょう。
主な融資の実施機関や金額、借入期間について紹介します。
実施機関 | 融資金額 | 借入期間 |
日本政策金融公庫 | 7200万円 | 20年 |
福祉医療機構 | 建築費として5億円 土地取得費として3億円 |
耐火建築物なら20年 耐火建築物以外なら15年 |
民間銀行 | 1億円 | 20年 |
実施機関により、受けられる融資金額や審査の厳しさには差があります。日本政策金融公庫の融資は、比較的審査が通りやすいということで有名です。
上記のほかにも、医療機器をリースしている会社からの融資を受けられることもあります。また、開業資金のみならず、運転資金についての融資を行っているのも通例です。
さらに、開業支援サービスを利用すれば、そのサービスの一環として融資を受けられることもあります。開業支援サービスがHPにおいて「自己資金ゼロ」を謳っているのは、そのためです。
・必要な自己資金
融資を受けるためには、必ずしも自己資金が必要という訳ではありません。しかし、選択する融資の種類によっては、「自己資金〇割以上」という条件が付されていることもあります。
融資の金額が大きくなればなるほど、それに付随して金利の金額も大きくなるので、開業資金の全額を融資に頼るというのはおすすめできません。出せる範囲で自己資金も織り交ぜつつ、資金計画を立てるのが良いでしょう。
・融資を受ける条件
クリニックの開業資金として融資を受けるためには、以下のような条件が付されていることがあります。
■ 保証人・連帯保証人の設定
■ 借入時年齢上限
■ 返済時年齢上限
■ 担保の設定
具体的にどのような条件が設けられているかは、融資元によって異なります。大手の銀行の場合には、保証人不要、担保不要といった条件で融資を実行していることも少なくありません。実際に融資を検討する際には、それぞれの融資機関で情報を確認しましょう。
・開業資金として融資を受ける手順
クリニック開業の資金として、融資を受けるためには、以下の手順を踏む必要があります。
1. 融資機関への問い合わせ
2. 事業計画書・趣意書の作成・提出
3. 融資機関の担当者との面接
事業計画書には、経営基本計画、設備計画、患者見込み計画、収支計画、担保明細などを細かく記載します。基本的にはこの書類で、将来的にきちんと返済される見込みがあるかを判断されるため、融資の可否に直結する非常に重要な書類と言えるでしょう。
また、融資機関との面接においては、経営者としての能力やこれまでの取引状況、信用状況なども見られます。
まとめ
クリニックを開業する際に、自己資金だけで賄えない場合には、融資を受けることができます。融資を受けるためには、各種書類を提出して、審査を受ける必要があるので、開業のスケジュールから逆算して、計画を練っておくのがおすすめです。
開業に必要な資金は、どんな物件を利用するのか、また専門領域を何にするのかといった様々な条件により、大きく異なります。自分の開業意向に合わせて、最適な資金繰りができるよう、計画を立てましょう。