医師のクリニック開業、勤務医とどう変わる?|開業資金の相場や開業医の平均年齢 | 医院開業バンク

コラム

2020.06.30

医師のクリニック開業、勤務医とどう変わる?|開業資金の相場や開業医の平均年齢

医師としてキャリアを積む上で、自らクリニックを開業したいと考えている人も多いと思います。自ら開業して働く医師を開業医といい、開業費は他医院に勤務する勤務医とは違ったメリットがある上、年収にも大きな差が生じるといわれています。今回は医師がクリニックを開業するメリットや開業時の資金の相場や平均年齢についても解説します。

医院開業でできること

医院開業をすることで、勤務医では実現しづらかったこともできるようになります。医院開業でできることとしては、大きく以下の3つが挙げられます。

・自由度の高い勤務ができる
・収入増を目指せる
・理想の医療を追求できる

勤務医の場合は勤務先の働き方に合わせて治療方法や勤務方法が決まりますが、自ら医院を開業することで、自由度の高い勤務方法や理想の医療が採用でき、働きやすい環境づくりが実現できます。また、勤務医は給与として収入を得ますが、開業医は事業収入から各経費を除いた金額を収入として受け取ることができるため、事業収入が上がるほど年収がアップしやすいことも大きなメリットです。

医院開業の問題点

一方、医院を開業するにあたり、注意しなければいけない問題点があります。

・医師としての業務以外に時間を取られる
・代わりがいないため休みにくい

医院開業すると、医師としての仕事はもちろん、医院を経営するために必要な経理や事務、雑務などをすべて自ら仕事の一環として行わなければいけません。そのため勤務医はノータッチで良かった分野にも時間を割かなければいけないため、医師としての業務以外に時間が取られる機会も増えます。また、勤務医と違い医師の代わりがいないため、体調不良など急な休みに対応できないだけでなく、学会や研修へ参加する時間も割くことが厳しいケースに陥ることもあるでしょう。

医院開業の流れ

医院を開業する際はどのような手順で進めていけば良いのでしょうか?医院開業の流れをご紹介します。

1.開業地を選定する
2.事業計画を立てる
3.資金を調達する
4.医院の設計・施工する
5.医療機器を選定・購入する
6.職員の求人・採用を行う
7.医院の宣伝・広告活動を行う
8.行政手続きを行う
9.開業

開業地を選定する段階から、成功するための医院づくりはスタートしています。どういう医院にしたいか理想のイメージをしっかりと持ち、医院としての強みや診療内容に合わせて計画的に進めていくことが大切です。

また、初期段階である開業地の選定や事業計画、資金調達は特に時間がかかりやすいものです。開業への取り組みは、遅くても開業予定日の1年半からはスタートし、なるべくスケジュールが後ろ倒れにならないように注意しましょう。

医院開業資金の相場

医院開業資金は、戸建ての医院で1億円、テナント物件はその半分といわれるように、戸建てで医院開業を行う場合、テナント物件で開業するよりも倍額以上資金が必要となるケースが多く見られます。開業資金には土地・建物費用や設備費用の他にも、机やイスなどの消耗品の購入や広告宣伝費、開業後の人件費や家賃の支払いに必要となる運転資金などが含まれます。

医院開業費用は自己資産と金融機関の融資の両方を充てる人がほとんどです。中には自己資産ですべて支払う方もいますが、1億円近い費用を自己資産として用意できる人は極めて少ないでしょう。ただし、融資を受けるからといって自己資産がなくて良いというわけではありません。

金融機関によっては「自己資産が1000万円以上」など、自己資産額に条件がつけられている場合があります。自己資金は開業資金の10~20%程度が相場といわれています。

医師の開業時の平均年齢

医師会が発表する「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」によると、医院を開業する医者の平均年齢は41.3歳で、開業医の平均年齢は年々高くなりつつあると記載されています。40歳前後で開業する人が多いのは、勤務医として一定期間キャリアを経た後に、将来のことを考え開業に至る人が多いからと考えられます。

開業医の平均年収

厚生労働省が発表する「第22回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告」(令和元年度実施)によると、開業医の平均年収は、約2763万円といわれています。勤務医の平均年収は約1491万円なので、開業医の方が勤務医よりも約1.8倍も多く収入を得ているのです。ただし、開業医の収入はあくまで「事業収入」となり、全体の事業収入から融資の借入額の返済やスタッフの給与など、医院に関する費用を除いた金額が実際の収入となるため、一定の収入が毎月得られる、確実に収入が得られるとは限りません。

医院開業に失敗するケース

医院開業では、医療だけではなく、広い知識や経験を活かして計画を立てていかなければいけません。医院開業で失敗するケースには以下のような問題が挙げられます。

・経営力や資金繰りの知識が不足
・スタッフの募集や教育でつまずく
・患者からの評判を上げられない

これらは本来医師の仕事ではなく、勤務医時は無縁だった分野だと感じる方も多いでしょう。医院開業の工程では、医療だけの知識では対応しきれない問題が多く、開業失敗の原因となってしまうのです。

経営力や資金繰りの知識が不足

医院開業をすると、医師として働く傍ら、経営や経理の仕事も同時に行うことになります。例えば、医師の腕も良く、開業当時は多くの患者さまが来院していたのに、数か月後は急に集患が少なくなり、その原因がわからないという事例があります。これは医師の実力不足ではないものの、集患するための宣伝力が足りないためや、運転資金に多くを割いたため広告宣伝費に回す資金がないなどの問題が考えられるでしょう。医師としての業務だけでなく、資金繰りや集患するための対策を考えることも、すべて自分の役割となります。

開業時から医師と経営の2つの視点を持って開業の工程を進めていくことが必要です。

スタッフの募集や教育でつまずく

医院開業では、スタッフの人材採用・教育も非常に重要なポイントです。スタッフの募集や教育には、時間をしっかりとかけて行うことが望まれます。例えばスタッフの人員が足りず、求人を出したものの応募がなく、多忙によりスタッフ同士にいざこざが起き始めた、という事例もあります。これは開業段階で人材計画をしっかり策定できていない上、スタッフのケアや管理が行き届いていないため生じた問題です。人員管理をしっかり行うためにも、開業時からスタッフの人員計画の策定や、教育のための研修準備を整えることが必要です。

患者からの評判を上げられない

医院開業してからしばらく経つのに、患者さまからの評判が思うように上がらず、集患が落ちてしまうケースがあります。開業した医院が長く愛されるためには、患者さまが求めるものをいかに医師・スタッフが理解し、医院づくりに反映できているかが試されます。例えば、予約の取りづらさは患者さまの評判を大きく左右するポイントです。人員不足で予約可能人数が限られている場合は、原因である人員不足を解決することが先決となります。また、電話で予約受付が繋がりにくい場合は、ネットからの予約受付を採用するなど、患者さまが予約を取りやすいシステムを取り入れる必要があります。また、患者さまに対するフォローを徹底するためにも医師・スタッフ含めて学べる場を作ることも必要です。これは医院の開業地の特色により、選ぶべき対応や求められる要素は異なるため、開業時の段階から、開業地に合わせたブランディングや事業計画を考える必要となります。

医院開業支援で専門コンサルに相談

医院開業で専門外の分野を進めていく際は、医師開業支援サービスを通して専門のコンサルタントに相談してみるのも1つの手でしょう。医院を開業するということは、医院を経営していくことです。つまり、医師としてのノウハウだけではなく、経営という観点から医院づくりを進めていかなければいけません。医院開業コンサルタントは、医院のブランディングから開業地の選定という初期段階から、開業後の経営まであらゆる分野をコンサルティングしてくれます。特に金融機関から融資を借りる際に、具体的な内容を記載した事業計画の提出が求められますが、これは医師の視点だけでなく経営者としての視点も求められます。専門のコンサルタントがプロ目線で、明確なブランディングから各手順の適切な選択、開業後の経営をサポートしてくれるため、医院開業が成功する可能性も上がりやすいです。

まとめ

医院開業することで、勤務医から開業医となり、医師としての自由性や収入の増額など、さまざまなメリットが得られることがわかりました。しかし、開業するに至っては医師のノウハウだけでは対応できない問題も多々生じます。医院開業支援を利用する際は、医院開業すべてを相談することもできれば、部分的な分野のみプロの力を借りることも可能です。医療以外の知識不足や開業後の経営に不安を覚える方は、ぜひ専門コンサルタントに相談してみましょう。

医院開業バンク編集部

編集部

医師の転職・採用支援に20年以上携わる医院開業バンク編集部が、開業に役立つ情報をお届けします。

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