コラム
2020.06.29
医者の医院・クリニック開業資金平均額|診療科目ごとの相場と融資申込の手順
クリニック開業資金とは
クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。
医院を開業する際には、土地や建物の費用や設備費に加え、さまざまな費用が必要となります。クリニックの診療科目によって必要となる条件や設備が異なるため、医院・クリニックによって医院開業費用は異なります。今回は診療科目ごとの医院開業費用の相場や、融資の申込や開業の手順についてご紹介します。
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クリニック開業資金の相場
医院・クリニックの開業に必要な資金の相場は、診療科目によって大きく変動します。これは土地・建物費用として約3000万円かかり、さらに診療内容に合わせた設備費用が必要となるためです。
診療科ごとに開業資金の相場をご紹介します。
耳鼻科
耳鼻科を取り扱う医院・クリニックでは、土地・建物費用に加え、設備費用が2000~2500万円かかるといわれており、相場としては5000~5500万円以上と考えておいて良いでしょう。
電子カルテやX線撮影機器、聴力検査室などの設備も必要ですが、耳鼻科は繁忙期に差し掛かると待合室が混雑しやすくなるため、土地や建物の広さを重視することも大切です。
開業費用を抑えるためには、立地場所に合わせてターゲットを絞り、取り扱う治療を選ぶことです。例えば都市部に医院・クリニックを開業するのであれば大人をターゲットに、花粉症やアレルギー対策など、専門性の高い耳鼻科治療を追求するのが良いですし、郊外部に開業する場合は子どもをターゲットに扁桃腺炎や副鼻腔炎にも対応できる診療を行うなど、専門性を絞ることで設備費用が抑えられる可能性があります。
整形外科
整形外科の医院・クリニックを開業する際は、土地・建物費用に加え、設備費用は1500万~3500万円が必要となり、相場としては4500~6500万円以上となります。
外科治療では通常の医院設備に加え、干渉波やマイクロ波、ウォーターベッドといった高額なリハビリ機器や、45㎡以上の広さを持つリハビリ施設が求められます。より多くの患者さまに利用してもらうべく治療内容を増やしたいところではありますが、なるべく治療内容の数を減らして医療機器を選定し、開業後の経営が軌道に乗った状態で、診療内容を拡大していくのも良いでしょう。
また、低コストながらも利便性の高い施術台やレントゲン設備もあるため、慎重に設備選びを行えば、開業費用を抑えることも可能です。
眼科
眼科のクリニックを開業する際は、土地・建物費用に加え、設備費用が2000~4500万円ほど必要となり、開業費用の相場としては5000~7500万円以上とされています。
眼圧計、視野計、眼底検査機器、視力検査機器といった眼科治療に必要な設備があるため、他の診療科目に比べても高くなるケースが多いです。
さらに診療室内は暗所になることが多いため、クリニックはバリアフリー仕様にしておくことも大切です。バリアフリー仕様にするには、建物費用がさらに高額となるため注意が必要です。
また、白内障手術などの手術を行うか否かで設備費用は大きく変わり、手術を行わない場合に比べて3000万円ほどコストが多くかかることがあります。開業費用を抑えたい方は、手術の有無について見直すのも良いでしょう。
外科
外科を取り扱う医院・クリニックを開業する際は、土地・建物費用に加え、設備費用が約1500万円程度必要となり、開業費用の合計は4500万円以上が相場となります。
ただし、診療内容によってはさまざまな設備が必要となり、より設備費用が高額となります。例えば脳外科の場合はMRIやCTの導入費用として6,000~7500万円ほど上乗せとなる場合もあります。診療内容を絞ることで、設備費用を抑えることができます。
内科
内科を取り扱う医院・クリニックを開業する際は、土地・建物費用に加え、設備費用は2000~3500万円が必要とされ、開業費用の相場としては5000~6500万円以上となります。特に内視鏡の購入費用は数百万円かかることもあり、また内視鏡を用いる際は50坪程度の診察室の広さが求められるため、設備費用と土地や建物の費用の両方が高くなる場合があります。
内科の開業費用を抑えるには、既存の土地や建物を利用して、土地・建物費用を抑えるのが良いでしょう。
精神科
精神科を取り扱う医院・クリニックを開業する際は、土地・建物費用に加え、設備費用が400万円~、開業費用全体の相場は3400万円~と、他の診療科目に比べて開業費用が安く抑えられるケースが多いです。
ただし、専門的な検査や治療を取り入れた場合は設備費用がいきなり高額となるケースもあるため、取り扱う治療内容には注意しましょう。
また、精神科は通院する患者さまのことを考え、プライバシーが守れる立地選びを行うことが大切です。なるべく駅から数分歩いた場所や2階以上のテナントなど、人目につきやすい場所を避けて土地・建物を選ぶようにしましょう。また、企業によっては精神科を取り扱う医院・クリニックの開業に対し、資金を出さない場合もあり、銀行融資が受けられない可能性もあるため、融資を受けることを検討している方は事前に調べておきましょう。
クリニック開業資金の融資
医院・クリニックの開業資金に対する融資は、政府系の金融機関や地方銀行を中心とした金融機関が医院・クリニック開業支援として、無担保&無保証人で借り入れを許諾しているケースも多く見られます。
医院・クリニック開業資金の融資には、企業ごとに融資可能金額や返済期間は異なるため、融資を受ける金融機関を検討する際は、複数の金融機関を比較してから決めるようにしましょう。
必要な自己資金
医院・クリニックを開業する際は、融資を受ける・受けないに関わらず、自己資産は必要となります。開業費用として金融機関から融資を受ける際は、「自己資産が〇円以上あること」と条件がつけられている場合があります。一般的には開業資金の10~20%程度の自己資産は必要となるでしょう。自己資産が少なくても開業できるケースもありますが、金融機関の信頼を得るためにも、無理のない事業計画書をしっかりと策定した上で相談を持ち掛けなければいけないため、融資に対するハードルは高くなってしまいます。
融資を受ける条件
融資を受ける際は、必ず医院・クリニック開業の意思を伝える「趣意書」と返済計画を記載した「事業計画書」の提出が求められます。
趣意書には医院を開業する理由や開業地の選定理由、提供する医療サービスの内容などを詳しく記載する必要があります。また、金融機関によっては先述したように
自己資産額や保証人がいることなどが条件として提示されることもあります。
ただし、無担保&無保証人、法定相続人が保証人として認められるケースなど、一般的な金融機関の融資よりも条件が緩和された開業支援ローンも存在します。
開業資金として融資を受ける手順
融資を受ける手続きの手順は以下のとおりです。
1.事業計画を立てる2.資金計画を立てる
3.金融機関に交渉する
4.銀行借入契約を行う
金融機関に融資の交渉をする際は、事業計画書の提出が必要となるため、事業計画を立てる段階から明確なビジョンを持って計画を立て、交渉・契約へと手続きを進めていきましょう。
クリニック開業スケジュール
医院・クリニックを開業する際は、ただ手続きを行えば良いというわけではありません。
開業までの手順やスケジュールは以下のとおりです。
・18か月前:開業地を選定する・18~12か月前:資金調達を行う
・12か月前:建物の設計・施工
・6か月前:医療機器の選定・購入
・3か月前:各種保険契約などの検討、医師会や町内会などへ挨拶回り
・2か月前:広告・宣伝の実施、スタッフ採用、開業手続き
・1か月前:スタッフ研修、内覧会・模擬演習の実施、ホームページの稼働
医院・クリニックの開業に向けて行動するのは、開業予定日の1年半前からが目安ですが、早いうちから動くことに越したことはありません。また、開業1か月前までやるべきことが多々あるため、後倒れにならないためにも、開業地の選定は遅くても開業日の1年前には済ませておきましょう。
まとめ
医院やクリニックを開業する際は、計画的な医院づくりがとても重要となります。特に診療内容によって土地・建物費用や設備費用がそれぞれ大きく変わるため、医院・クリニックに本当に必要な設備や環境を見出す視点や、開業後の経営を視野にいれたブランディング・対策が求められます。開業に必要な手順は、医師の知識や経験だけではカバーしづらい分野が多いです。経資金調達や経営を見据えた対策に不安のある方は、コンサルタントの力を借りるなど、プロの観点を取り入れてみてはいかがでしょうか。