医院継承の親子問題はどう回避する?手続き方法と失敗しないためのトラブル対策 | 医院開業バンク

コラム

2020.06.29

医院継承の親子問題はどう回避する?手続き方法と失敗しないためのトラブル対策

親の引退により、子がその意思を受け、医院を継承するというケースは多くあります。第三者に継承するケースと比較して、スムーズに手続きができそうなイメージもある親子継承ですが、実はそうではありません。親子継承ならではのトラブルも付きまといます。そこでこの記事では、親子間における医院継承で必要な手続きや起こりがちなトラブルについて、詳しく解説をしていきます。

医院継承の手続きと手順

親子継承に限定せず、一般的な医院継承は、以下の手順により手続きを進めていきます。

1.契約の締結:現院長及び新院長の間で、承継の契約を交わします。
2.所管の行政機関との事前協議:保健所や各種行政機関と事前協議を行います。
3.廃業届及び開業届の提出:現院長及び新院長の双方が提出します。所得税の青色申告を適用したい場合には、青色申告の申請書も必要です。
4.保険医療機関指定の申請:現院長及び新院長の双方が申請を行います。

基本的には、上記の手続きで承継は完了します。

廃業届と開業届

医院継承の際には、被継承者は廃業届を、継承者は開業届を所管の税務署及び都道府県税事務所、市町村にそれぞれ提出する必要があります。添付書類は特に必要ありません。提出期限は、開業から1か月以内です。

役所が受領した上で、何か不備や不明点がある場合には、追加で書類の提出を求められることもあります。

なお、現院長の廃業届は必須です。提出をしなければ、実態として事業を畳んだにも関わらず、個人事業税など余計な税金が課税されてしまう恐れがあります。

所得税の青色申告の承認申請書

勤務医から開業医になることは、サラリーマンを辞めて個人事業主になることと同じです。個人事業主になると、税金や保険料の手続きを自分で行わなければならなくなるため、大変になりますが、所得税の青色申告承認申請書を提出すれば、65万円の特別控除を受けることができるようになります。

青色申告の承認申請書は、開業届と一緒に所管の税務署に提出するのが通例です。提出期限は開業の日から2か月以内とされていますので、早めに用意することを心がけましょう。

親子間の医院継承で引き継がれるもの

親子間で医院の承継を行う場合、院長としての立場だけではなく、以下のものを引き継ぐことになります。

・土地や物件
・医療機器
・スタッフ

土地や物件

医院として利用している土地や物件といった不動産を引き継ぎます。新規開業する場合には莫大な資金を投じなければならないところですが、親子承継の場合には、かなり費用を抑えられる点がメリットです。

不動産の承継方法としては、主に以下の3種類があります。

・売買(0円の場合は贈与)
・賃貸借
・使用貸借

どのような承継方法にするかは、双方の意向のもと、話し合いで決定します。

医療機器

医院を継承すれば、院内に用意されている様々な医療機器もそのまま引き継ぐことができます。新規開業の場合には、自分で調達しなければならないケースもあり、その金額も1000万円は下りません。しかし、不動産の引き継ぎと同様に、親子継承の場合にはそのコストを大幅に抑えることができます。

スタッフ

医院継承はあくまで院長間でのみ行われるもので、その他のスタッフについては継続的に雇用されることが前提です。そのため、医院に精通したスタッフに最初から支えられて、仕事をすることができます。

新規スタッフの雇用のために求人を出したり、面接をしたり、教育をしたりするという時間も費用も必要ありません。新規開業の場合には、ただでさえやることが多く大変ですが、既に体制が整っているということは非常に大きなメリットになります。

親子間の医院継承で多いトラブルと対策

親子継承は、一般の医院継承に比べるとスムーズにいきますが、それでも絶対にトラブルが起きないとは限りません。具体的には、以下のようなトラブルが発生することが懸念されます。

・親子間の価値観・意向の違い
・評判や環境も引き継ぐ
・設備の修理が必要な場合も

それぞれ具体的に解説しましょう。

親子間の価値観・意向の違い

親子だからと言って、必ずしも価値観が一緒とは限りません。むしろ、真逆の価値観を抱いているというケースも少なくありません。医院の経営方針に食い違いがあれば、そもそも承継させてもらえなかったり、スタッフとの人間関係づくりに苦労したりすることもあるでしょう。

しかし、無理矢理価値観を合わせるというのは得策ではありません。まずは親の価値観を受け入れながらも、経営する中で少しずつ、自分の色を出していくというのが最もトラブルに繋がりにくい方法です。院長交代後、いきなりガラッと大きく変えることは、既存のスタッフからの反発も招きかねません。

評判や環境も引き継ぐ

親が良い評判を得ている医師であれば、その恩恵を受けることができます。しかし、悪評ばかりだった場合には、そのまま継承後の集患にも尾を引きかねません。また、開業する立地を自分で選べないというデメリットもあります。

このようなデメリットを懸念する場合には、初めから承継はしないという手もあります。家庭の方針で医院継承が既定路線となっている場合には難しい面もあるかもしれません。しかし、M&Aという方法もあるなど、子供の側から医院継承の他の選択肢について、提案してみても良いでしょう。

設備の修理が必要な場合も

医院継承のメリットの1つが、医療機器を新規で調達する必要がなく、初期費用を抑えられることです。しかし、医療機器や院内の設備が老朽化している場合には、その修理のための費用を払う必要があります。また、老朽化していなくても、自分が望まない機器を使っていたり、配置が気に入らなかったりするかもしれません。

大切なのは、いざ継承した段階で慌てて対応をすることです。医療機器の調達や内装の工事には、莫大な費用が発生するため、すぐには準備できません。継承前にしっかりと自分の目で状況を確認しておくことが大切です。また、たとえ気に入らない機器だったとしても、使えるならばOKと割り切る度量も持っておくと良いでしょう。自分のこだわりを出すのは、経営が軌道に乗ってから考えましょう。

まとめ

医院の親子継承は、新規開業と比較して大幅に初期費用を抑えることができるなど、多くのメリットがあります。しかし、親子継承だからこそ生じるデメリットにも目を向ける必要があります。親子ともに医師の家庭においては、継承が既定路線となっているケースも少なくないですが、継承する側の子供も、しっかりと自分なりの意見や信念を持っておかなければ、思わぬトラブルに苦しむ可能性もあるため、注意が必要です。

医院開業バンク編集部

編集部

医師の転職・採用支援に20年以上携わる医院開業バンク編集部が、開業に役立つ情報をお届けします。

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