コラム
2020.06.29
医院継承で発生する費用や譲渡対価の相場|内装リフォームや機器修理などそれぞれ紹介
医院を開業する際、新規開業ならば莫大な初期投資が必要ですが、継承の場合にはそのコストを大きく抑えられます。しかし、一切の資金が必要ではありません。具体的に、継承にいくら必要なのか、疑問に思われる方も少なくないでしょう。そこでこの記事では、医院継承に必要な資金の相場について詳しく解説をしていきます。
医院継承で発生する費用の相場
医院継承で発生する費用の内訳には、以下のようなものがあります。
・継承に関する手続き・内装の解体、リフォーム
・医療機器の解体・処分
・紙カルテの処分・データ移行
・広告物作成
それぞれ具体的に、どのくらいの費用が必要なのか、解説していきます。
継承に関する手続き
継承に関する手続きには、以下のようなものがあります。
・当事者間もしくは専門家を介した相談・医院の評価
・デューデリジェンスの実施
・契約の締結
・引継ぎ作業
専門のコンサルティングにすべてを一任するというケースであれば、数十万円相当の費用がかかることもあります。しかし、基本的に手続き的な面においては、それほど費用は発生しません。ただ、コンサルティングを一任すると長期戦になりがちで、例えば遠方の医院を継承する場合には、移動費などのコストがかさんでくる可能性はあります。
内装の解体・リフォーム
継承した医院の内装が気に入らないという場合には、内装工事をする必要があります。当然、無料で行うことはできません。一般的には、下記の計算式により内装工事費は算出されます。
内装工事費(概算) = 医院の広さ(坪) × 工事単価(万円/坪) (※2) × 115% (※3)
しかし、面積が大きければ大きいほど、費用も比例的に大きくなります。内装工事は、医院開業における大きなコストの1つです。そのため、一切の内装工事をしなければ、その分だけ費用は大きく抑えることができます。
医療機器の修理・処分
継承した医院の機器や設備を変更したい場合には、相応の費用が発生します。内装工事費と同様に、医院開業における大きなコストが医療機器の調達です。
医療機器の買い替えについては、購入する機器に応じて必要な金額は異なります。高い機器の場合には、1000万円以上がかかることもあります。また、既存の機器を処分するコストもかかります。
新たに医療機器を調達する必要がないという点が医院継承の大きなメリットですから、不必要な医療機器の購入には慎重になるべきです。
紙カルテの処分・データ移行
継承の契約内容にもよりますが、個人情報保護の観点から、カルテの引継ぎが困難な場合もあります。その場合には、既存のカルテの情報を継承者の持つデータに移行する必要があるため大きな手間となります。しかし、時間的な負担は大きくなりますが、費用的な負担はそこまで発生しません。
なお、継承に伴い大規模なシステム改修を図る場合には、新システムの導入により費用が発生します。
広告物作成
医院を継承すると、院名も変われば診療日、休診日も異なります。よって、医院の看板や院内掲示についての情報を刷新しなければなりません。例えば、看板の変更については以下のような費用がかかります。
・看板の撤去・看板の製作
・看板のデザイン
・看板の設置
どんな材質・内容のものを作るかにより大きく費用は上下しますが、最低でも10万円くらいは必要と考えておいた方がいいでしょう。また、院内掲示の張替えのため、デザイン費や印刷費も発生します。
譲渡対価とは
医院継承とは、前院長から見れば自分の資産を新院長に譲渡することと同じです。営業権の譲渡のようなものと考えればいいでしょう。親子継承や相続により、譲渡対価が発生しないこともありますが、医院継承に際しては、ビジネスを譲渡するための対価が発生するのが通例です。
譲渡対価の算定方法
譲渡対価は、以下の計算式により算出されます。
譲渡対価=譲渡対象資産+営業権
譲渡対象資産は時価評価で決まります。しかし、戸建て医院かテナント医院かによっても変わります。
営業権については、その医院にどれだけの潜在的・顕在的価値があるかにより決定します。いわば、どれだけの集患が期待できるかを金銭的価値に換算したもので、アクセスが良かったり、毎日の集患数が多かったりすると、その価格は上昇します。
営業権は、継承される側の希望と継承する側の希望を元に、話し合いや専門家による調整を通じて、最終的な価格が決定していきます。
なお、上記は個人経営の医院のケースです。医療法人経営の医院を継承する場合には、別途役員退職金などの費用も上乗せされて算出されることになります。
譲渡対価の相場
譲渡対価のうち、譲渡対象資産はその不動産の時価評価により大きく左右されます。一方で営業権は、「院長の年間所得×1年分」により算出されるのが一般的です。つまり、院長の年間所得が2000万円であったとすれば、営業権も2000万円になるということです。
他業界の場合には、会社継承に際して営業権は年間所得の2~3年分に設定されるのが一般的です。しかし、医院継承では患者離れなどの影響を懸念して、1年分に設定されるケースが多いです。
もちろん、実際には両者の希望のもと、話し合いや調整を通じて実際の営業権価格が決定していきます。
まとめ
医院継承は、新規開業と比較して大幅に費用を抑えることができます。しかし、当然無料で行えるということではありません。継承時には譲渡対価を支払う必要もあるので、数千万円程度は用意する必要があります。
もちろん、内装工事や医療機器の買い替えなどがある場合にも別途費用は発生します。それでも、集患対策に困らないなどメリットも大きいため、トータルで見れば大きくコスト削減を実現できる医院開業の手法といえるでしょう。