コラム
2020.06.26
【診療科別】医師の医院開業費用の相場|必要な自己資金と資金調達方法
クリニック開業において「お金」は最大の関心事です。金額の大小はもちろんのことながら、どこからどうやって借りるべきか、つまり資金調達についてもたくさんの質問をいただきます。
当社では専任の開業コンサルタントが事業計画の作成から資金の調達方法、融資のタイミングの相談まで、幅広くサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
医院開業費用の調達方法
勤務医をやめ、自分で開業して医院を運営していくためには、多額の費用が必要です。しかし、大きな金額を自己資金だけでは準備できないと感じる人も多くいるでしょう。開業のみならず、その後の経営に必要な運転資金も準備しなければならず、それが開業の足かせになるケースも少なくありません。しかし、すべてを自己資金で賄う必要はなく、様々な方法により資金を調達することができます。開業を考えている医師の方は、是非融資による資金調達を検討してみてはいかがでしょうか。
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医院開業に必要な費用と内訳
医院を開業する際には、テナントを借りる場合で5000万円程度、戸建てで開業する場合には最低でも1億円程度の費用がかかります。
具体的な内訳としては、主に以下のようなものが挙げられます。
- 敷金・礼金・仲介手数料(テナントを借りる場合)
- 家賃(テナントを借りる場合)
- 土地・建物購入費用(戸建て開業の場合)
- 内装工事費用
- 電子カルテ
- 空調
- 照明
上記は、どの診療科目にも共通して発生する費用です。このほかにも、診療科ごとに必要な機器や設備をそろえる必要があるため、さらに費用が大きく上乗せされることになります。
・整形外科
整形外科の開業に必要な費用の相場は、テナント開業で6000万円から8000万円、戸建て開業で1億2000万円から1億5000万円程度とされています。
整形外科を営むためには、医院の運営に通常必要な機器・備品に加えて、施術台やリハビリ機器、診察用ベッドなども必要です。
整形外科の開業に際して、初期費用を抑えるためのポイントは、高性能マッサージチェアなど、余計な器具を購入しないことです。高性能の器具は、アピールポイントにはなるものの、採算が取れない最たる例とされています。
・眼科
眼科の開業に必要な費用の相場は、最低でも5000万円以上です。戸建て開業の場合には、1億円を超えてくるでしょう。
実際に必要な費用は、眼科に含まれる医療の中でどこまでの範囲を網羅するか、にかかってきます。例えば、白内障などの手術まで手掛ける場合には、通常必要な器具に加えて、手術器具を用意しなければなりません。さらに、手術用スペース確保のために、必要な面積も広くなります。加えて、眼科には目の不自由な高齢者も多く訪れるため、他の診療科以上にバリアフリーを意識した環境を整える必要もあります。
費用を抑えるためには、できるだけ対象とする医療行為を限定したり、居抜き物件を利用したりする方法をとる場合もあります。
・耳鼻科
耳鼻科の開業に必要な費用は、テナント開業ならば5000万円、戸建て開業ならば1億円以上です。
耳鼻科を営む場合には、診療ユニットやネブライザー、ファイバーなど、様々な機器を用意しなければなりません。それぞれの購入(リース)費用はもちろん、メンテナンス料も高く設定されることがあります。
これらの機器のコストが高くつき、結果運転資金も増大、経営が圧迫されるケースも少なくありません。しかし、耳鼻科の開業のためには絶対に必要なものですので、複数の業者に見積もりを依頼し、比較しながら検討するようにしましょう。また、耳鼻科という特性上、他の診療科以上に、防音対策に力を入れる必要もあります。
・外科
外科については、対象とする診療領域により、かかる費用は大きく異なります。
外科は、他の診療科とは異なり、なかなか継続的な来客を期待することができません。そのため、できるだけ好立地での開業が必要となるため、テナント代や土地代が高くつくことがあります。
費用を抑えるための選択肢としては、やや立地に難があるところで開業するという方法があります。しかし、その場合には、通常開業する以上に集患対策に力を入れる必要があり、運転資金にあたる広告宣伝費が継続的に重くのしかかるという懸念も出てくるでしょう。
・内科
内科の開業に必要な資金は、最低でも5000万円程度です。内科は対象とする範囲が幅広いため、他の診療科以上に多くの医療機器や医療設備を充実させる必要があります。医療機器は日進月歩で進化しているので、必要な機器はリースとすることで、ある程度費用を抑えることが可能です。
また、居抜き物件を利用するのも、費用を抑えるための1つの方法です。
医院開業に必要な最低限の自己費用
実は、自己資金が0円でも医院を開業することができます。クリニック開業支援や開業コンサルタントを利用すれば、サービスの一環として融資を受けられる場合があるためです。しかし、融資を受ける元金が大きくなればなるほど発生する利子も大きくなるため、一切の自己資金を組み込まずに開業するというのは、あまりおすすめできません。
実際に、開業医の開業資金の平均は1000万円程度です。あとは、融資を受けることにより、必要な資金を賄うというケースが多くあります。
医院開業費用の資金調達手段
開業に必要な資金を自己資金で賄えない場合には、融資を受けることができます。具体的な資金調達手段としては、以下の4つがあります。
- 日本政策金融公庫
- 民間銀行
- 福祉医療機構
- リース会社
それぞれについて、詳しく解説していきましょう。
・日本政策金融公庫
日本政策金融公庫を使えば、無担保、無保証人で融資を受けることができます。自己資金も必要ありません。
借入可能額は、最大7200万円で設備資金としては20年間借りることができます。
審査から最短2週間で入金されるというスピード感が魅力で、急いで資金が必要だという人におすすめの融資です。しかし、1億円を超える費用が必要な場合には、全資金を賄うことはできないので注意が必要です。
参考:日本政策金融公庫ホームページ・民間銀行
民間銀行の融資内容は、その金融機関により異なります。一般に、メガバンクや都市銀行はリスク回避の傾向にあるため、初めて開業する医師に対しての融資は、やや慎重という印象です。
融資内容としては、最大で1億円程度の借り入れも可能で、期間は20年程度です。担保や保証人の有無などは、それぞれの融資元の金融機関によって大きく異なります。
審査が厳しい分、より大きな金額の融資を受けることも可能です。そのため、好立地での開業、戸建て開業を検討している方にはおすすめの融資方法となります。
・福祉医療機構
福祉医療機構の融資は、0.9%の固定金利で受けられることが大きな特徴です。建築費として最大5億円の融資を、20年(場合によっては15年)の期間受けることができるので、戸建て開業を検討している方には特におすすめと言えるでしょう。
好条件での融資を受けられる分、担保と連帯保証人が融資の条件となります。しかし、金利を上乗せすることで、保証の免除も可能です。
・リース会社
リース会社から、医療機器のリースをする際に、オプションとして融資を受けられることもあります。融資内容は、最大4000万円、返済期間は7か月程度です。リース会社を仲介する形となるため、金利もやや高くなるのが難点です。
リース会社からの融資を受けるためには、医療機器のリースが条件となります。そのため、リースする予定の場合には、ついでのような形で融資も受けられるため、手軽に手続きを済ませたいと考えている方におすすめです。
まとめ
医院を開業するためには、それなりに大きな資金が必要となります。自己資金だけで賄えるケースは多くありません。しかし、融資を受けることで、開業費用の相場とされる金額を調達することは十分に可能です。当然、金利を上乗せして返済する必要がありますが、経営が軌道に乗れば、将来的には十分にペイできるでしょう。