コラム
2020.06.26
クリニック・医院開業するなら知っておきたい基礎知識|開業の手順や必要資金
勤務医としての経験を積んできた医師の中には、「自分のクリニックを開業しよう」と考える人もいるでしょう。勤務医はブラックな労働環境に置かれることも多く、その環境から抜け出したいと考える人も少なくありません。しかし、クリニックを開業することには、当然様々なリスクも伴うものです。開業を志す場合には、しっかりと開業のメリットとデメリットを把握し、適切な判断ができるようにしましょう。
クリニック開業のメリット
クリニックを開業することのメリットとして、主に次の3点が挙げられます。
■ 収入アップが期待できる
■ 自由度の高い勤務ができる
■ 理想の医療を追求できる
それぞれについて、具体的に解説していきます。
・収入アップが期待できる
クリニックを開業することの最も大きなメリットが収入アップです。開業医になると、車両費や交際費、福利厚生費といった間接費用を経費で落とすことができます。より多くの患者が来院し、売上が上がれば、それがダイレクトに自分の総収入に反映されることも、収入アップに寄与します。
一方、勤務医の場合は、可処分所得から間接費用が引かれることになります。
勤務医と比較すると、開業医の平均年収は約1.7倍になるとされています。(厚生労働省「勤務医の給料と開業医の収支差額について」より)レーシックやアンチエイジングなど、保険適用外の分野における開業に成功した場合には、さらなる収入アップの可能性もあり、年収1億円超えも夢ではありません。
・自由度の高い勤務ができる
勤務医がサラリーマンならば、開業医は自営業者です。サラリーマンが毎日決められた通りに出勤しなければならないように、勤務医も決められた勤務日と勤務時間に従う必要があります。しかし開業医の場合には、自由に診療日と休診日を設定することができます。場合によっては「今日は診療しない」という判断を下すことも可能です。
また、欠員が出るから急に交代で勤務してほしいというような依頼を受けたり、病院の他のスタッフに関する自分には無関係なクレームを受けたりするストレスもありません。
・理想の医療を追求できる
開業医の場合、勤務医とは異なり、仕事の裁量権は自分にあります。そのため、自分自身のポリシーを貫いて診療することができます。組織内の政治に左右されることもなく、煩わしい人間関係からも解放されるのです。
また、プライベートの時間もしっかりと確保することができます。その時間に、自己研鑽に励むことで、さらに質の高い医療を提供できるようになることもあるでしょう。
開業前には「どんな医療を提供するか」というコンセプトを決めます。その中で「自分がやりたい医療」を決め、それに特化してクリニック運営を行うことになるので、自分の理想に近い医療を提供できるようになります。
クリニック開業のデメリット
クリニックを開業することには、当然デメリットもあります。開業することによるリスクについても、しっかりと把握しておきましょう。
具体的に、クリニック開業のデメリットとしては以下の事項が挙げられます 。
■ 経営や労務管理など事務仕事が発生する
■ 代わりがいないため休みにくい
それぞれ具体的に解説していきます。
・経営や労務管理など事務仕事が発生する
開業医になると、立場は労働者から自営業者・経営者へと変わります。そのため、勤務医時代には病院が全てやってくれていたことも、自分でこなさなければなりません。
税金の確定申告や年金、保険料の支払い、院内の衛生管理など、その内容は多岐に亘ります。また、スタッフを雇用する場合には、求人から面接、雇用契約の締結、労務管理など経営者としての仕事も自分でしなければなりません。
さらに、何か院内で問題が起きた際には、トップである自分が責任を負わなければならないこともあります。思うように患者が集まらない場合には、集患対策も自分で考えなければなりません。
開業医になると、勤務医時代には特に気にすることもなかった様々な負担を一身に負わなければならなくなるのです。
・代わりがいないため休みにくい
1人でクリニックを開業した場合、医師は自分しかいません。医療行為は、医師免許を有する人間でなければ行うことができないので、自分の体調が悪いから、誰かに診療を代わってもらうということは、当然不可能です 。
そのため、「体調が悪いから今日は休む」などと融通は利きません。もちろん、独断でそのような判断をすることも可能と言えば可能です。しかし、あまりにも身勝手な場合には、患者やスタッフが離れていくことも考えられます。
開業医は勤務医と比べて、大きな責任を負うことになります。
クリニック開業の手順
実際にクリニックを開業する際は、以下の手順で進めていきます。
1. 開業のコンセプトを決める
2. 開業場所を決める
3. 開業資金を借り入れる
4. 設計事務所に内装を依頼する
5. 医療機器を選定する
6. 行政機関への申請・届け出を行う
7. 必要なスタッフを雇用する
8. 開業のPRをする
クリニック開業に必要な資金
クリニックを開業する際に、自己資金だけで賄えるケースは多くありません。多くの医師が、借り入れを必要とします。その金額は、戸建て開業の場合は1億円以上、テナント開業の場合は5000万円以上が相場といわれています。
しかし開業時にかかる金額は、あくまでも土地や建物の代金、内装工事費、医療機器代金など、初期投資のみです。実際には、開業したクリニックを営んでいくための運転資金も、毎月別途発生します。その点もしっかりと考慮に入れて、資金繰りをする必要があります。
クリニック開業する医者の平均年齢
クリニックを開業する医師の平均年齢は、約41歳です。(日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」より)しかし、20~30年ほど前の統計データによれば、平均年齢は約37.5歳だったため、近年は高齢化していることが伺えます。
40歳ともなると、ある程度勤務医としての経験を積んだ年齢になります。そこで次へのステップとして、開業を選択するケースが多いようです。また、「理想の医療を追求したい」「経営も含めた新たなやりがいが欲しい」という理由も開業理由として多く挙げられます。また、近年は減少していますが、親の引退を機に、クリニックを継承するというケースもあります。
クリニック開業を成功させるには
勤務医が開業医になることは、サラリーマンが独立事業主になることと同じです 。これまで雇用主(病院)が面倒を見てくれていたことを、全て自分でこなさなければならなくなります 。そのため開業に当たっては、確かな医療の腕前やまとまった資金、医療機器などが揃っているだけでは不十分です 。加えて、経営の知識や手腕、自分が雇用したスタッフと良好なコミュニケーションを取れる人間性など、幅広い知識やスキルが求められることになります。
クリニック開業支援を活用しよう
自分一人だけで開業を成功させようとするのは、かなり無理があります。もちろん医師には優秀な方が多いですが、それでもどこかにヌケモレは発生してくるでしょう。しかし、だからと言って開業を諦める必要はありません。
「開業はしてみたいけど、色々と不安がある」と考えている医師向けに、「クリニック開業支援」というサービスが提供されています。医師の理想の開業を、専門のスタッフが成功に導いてくれるサービスです。
クリニック開業の一番の近道は、プロを頼ることです。できるだけ無駄を省き、開業を成功させるために、積極的に活用していくことをおすすめします。
まとめ
開業医になることは、収入アップや自由度の上昇といったメリットもあれば、自分にかかる責任の増大などのデメリットもあります。そして、開業して成功させることは、決して容易なことではありません。開業を考える医師は「クリニック開業支援」という、開業の成功を後押しするサービスがあるので、それを積極的に活用しましょう。自分一人で挑戦するより、スムーズかつ正確に、開業への道を歩めるはずです。