コラム

2021.09.13

開業医は儲かるのか?勤務医との違いを解説|科目による違いも説明

目次

「開業医は勤務医よりも儲かる」というイメージを持っている人は、多いかもしれません。しかし、実際に細かく比較してみると、必ずしも開業医の方が高収入であるとはいえず、開業医ならではのリスクも存在します。この記事では、開業医を目指す上での注意点や、開業医に向いている人、向いていない人の条件について、それぞれ解説します。

開業医は儲かるのか

「開業医は勤務医よりも儲かる」というイメージを持っている人は、多いかもしれません。しかし、社会保険や退職金などを含めて考えると、一概に「開業医の方が優位である」とは言い切れないところがあります。「開業医と勤務医ではどちらが儲かるか」を比較する上で、注意すべき点について解説します。

開業医の収入は勤務医の1.7倍

引用元:厚生労働省:「勤務医の給料」と「開業医の収支差額」について

厚生労働省の調査によると、開業医は、法人・個人どちらで開業したとしても、「勤務医の収入の1.7倍」という調査結果となっています。しかし、この結果を受けてみても、「開業医の方が勤務医よりも、自由に使えるお金が1.7倍ある」ということではありません。

開業医と勤務医の違い

開業医と勤務医(年収などに関係する内容)の違いを、主な項目で比較してみましょう。

開業医

勤務医

所得

事業所得

給与所得

社会保険 ※1

年金:国民年金

公的医療保険:医師国民健康保険組合

年金:厚生年金

公的医療保険:協会けんぽ

雇用保険

なし

あり

労災

特別加入 ※2

あり

経費

事業に関連するものなら

経費計上可能 ※3

給与所得控除

ただし、特定支出控除を受けられる可能性あり ※4

退職金

 なし

勤務先による

1)医療法人の場合は、年金は「厚生年金」、公的医療保険は「協会けんぽ」になります。

2)労働保険事務組合に委託すると、特別に加入することができます。

3)詳細は必ず税理士等の専門家に相談してください。

4)特定支出控除…給与所得控除の2分の1を超えて経費を支払った場合、超えた部分を経費から控除することができます。

開業医は自身が事業主であり、勤務医は雇用されています。また、開業医は収入が勤務医の1.7倍あり、事業主であることから、使い道も自由に決めることができるため、一見メリットがあるように思えるかもしれません。しかし、開業医の場合、クリニックの設備投資、必要な備品の購入、スタッフの給料等をそこから捻出する必要があります。また、退職金も自身で用意する必要があります。

このように、年収は勤務医よりも開業医の方が高い傾向にありますが、自由に使えるお金がいくらあるかという視点で見ると、一概に比較することはできません。

開業医に「儲かる科目」はあるのか

開業医の収入は、どの診療科目を選ぶかによって大きく異なります。診療科目別の収入の目安を紹介し、主な診療科目の理由について解説します。

科目による開業医の収入の違い

以下の表は、厚生労働省の第22回医療経済実態調査の報告(令和元年度実施)を基に、診療科目別で年収の高い順に並べたものです。

年収が最も高くなっているのは産婦人科であり、不妊治療の治療費が高額であることが理由とされています。ただし、産婦人科は、分娩に伴う設備やスタッフが必要な上、訴訟リスクも高いため、敬遠されることの多い診療科目です。

眼科は、手術時間が短くて済む白内障手術を高齢者が受けるケースが増えていることや、各種検査点数が他の診療科目に比べて高いことから、収入が高い傾向にあります。

一方、最も収入が低いのは、外科です。理由としては、外科は一度手術をすると、一定期間の通院後に再度来院することが少なく、継続的な患者が見込みにくいといった点が挙げられます。

診療科

年収(万円)

産婦人科

4,552万円

眼科

3,380万円

整形外科

3,000万円

小児科

2,827万円

皮膚科

2,793万円

耳鼻咽喉科

2,597万円

内科

2,582万円

精神科

2,456万円

外科

2,021万円

参照元:厚生労働省:第22回医療経済実態調査の報告(令和元年実施)

需要があれば将来的に儲かる可能性もある

現時点で収入は高くありませんが、今後の将来性が見込める診療科目として、精神科が挙げられます。平成29年度の厚生労働省「患者調査」によると、傷病分類別入院者数で最も多いのは、精神および行動の傷害が最も多く、高止まりししている傾向があります。

また、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、経済的な苦境に立たされている人、飲食店などの経営者で債務が増えて精神的ストレスを抱える人が、今後さらに増加していくことでしょう。さらに新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、企業の新卒採用意欲の低下をもたらし、就職氷河期世代の第二波ともいわれています。かつての就職氷河期では、多くの引きこもりを生み出していることから、コロナ禍で就職活動の時期を迎えた比較的若い世代でも、精神的なケアが必要となる人が増加する可能性が十分あります。

精神科は、他の診療科目のように大きな医療設備を必要としないことが多いので、少ない支出で開業できる点もメリットであるといえるでしょう。

開業医と勤務医のどちらが儲かるとは言い切れない

収入面では、勤務医よりも開業医の方が有利ですが、選択した診療科目によって収入が大きく異なることや、すぐに経営が軌道に乗るとは限らないため、開業医と勤務医のどちらが儲かるかということは、一概に言い切ることができません。

開業医は、経営が軌道に乗って患者が増えてくれば、本人の頑張り次第で、収入は勤務医の1.7倍どころか青天井となる可能性もあります。

しかし、開業医は、勤務医と所得の仕組みが異なる他、クリニック経営、資金調達、スタッフ教育、営業活動など、診療以外に多くの仕事をこなす必要があります。また、患者からの訴訟リスクがあった場合においても、全て自身で対応しなければならないなど、大きな責任が伴うことも心得ておきましょう。

開業医は向き不向きがある

勤務医よりも儲かる可能性のある開業医ですが、開業医には「向き不向き」があります。開業医を目指す前に、以下の項目を確認しておきましょう。

  • 開業医が向いている人の特徴
  • 開業医が向いていない人の特徴

開業医が向いている人の特徴

開業医が向いているのは、次に挙げるような人です。

  • コミュニケーション力の高い人…開業医は、患者とのコミュニケーションはもちろん、診療以外の業務もが多いため、スタッフなどの他人の手助けが必要となります。他人にパフォーマンスの高い仕事をしてもらうためには、自分の意思や要望を明確に伝え、前向きに仕事をしてもらうためのコミュニケーション能力が必要です。
  • 経営者の視点を持っている人…医師としての技術はもちろん重要ですが、クリニックが永続的に順調であるとは限りません。そのようなときでも、改めて財務諸表から自身のクリニックの現状を知る能力、軌道に乗るまでの戦略を立てる力、クリニックとしての戦略をスタッフに落とし込む能力、自身が率先して行う実行力など、一般的な経営者に必要とされる能力を持っている人が向いています。
  • 地域医療への思いがある…開業医は、「地域医療に貢献したい」という強い使命感を持って、日々の診療に取り組んでいる人が多い傾向にあります。

開業医が向いていない人の特徴

開業医に向いている人の裏を返してみると、開業医に向いてない人の特徴が分かります。それ以外の点で、開業医に向いていない人の特徴について解説します。

  • 継続力がない…クリニックが不振なときなどに、自身が打ち出した戦略を必要以上にコロコロ変えたり、ちょっとした失敗ですぐにやる気をなくしたりしているようでは、事業がうまくいかず、スタッフの信頼も得られないでしょう。
  • 勉強をしていない…医師としての技術は申し分がなかったとしても、経営者としての経験不足、財務諸表の読み方が分からない、営業が苦手など、これまで経験したことがないことに数多くぶつかって失敗することも多いかもしれません。しかし、未経験のことも勉強し、克服することで、いずれはできるようになり、ミスも減っていきます。

開業医として成功するためのポイント

開業医への向き不向きはありますが、もし不向きな要素があったとしても改善していけば良いので、開業医になれる可能性がないというわけではありません。

開業医として儲けるためには、診療科目も重要ですが、立地、開業コンセプト作り、事業計画の作成、融資の交渉、集客方法などを工夫し、いかに早くクリニックを軌道に乗せるか、今後どのような診療科が儲かるのかという情報のアンテナを立てておくことも重要です。

また、中には、「診療に専念したい」と感じる人もいるかもしれません。そのような場合は、開業コンサルタントに相談し、アドバイスをもらうことをおすすめします。

まとめ

「開業医と勤務医のどちらが儲かるか」を実際に細かく比較してみると、「開業医が儲かる」とは一概に言い切れません。また、どの診療科目を選ぶかによっても大きく異なる上、時代の変化によって、儲かる診療科目も今後変化するかもしれません。また、開業医には、向き不向きもあるため、「開業したいけれど、不安だ」という人は、まず開業コンサルタントに相談してみましょう。

【診療科目別】開業医の生涯年収|都市部と地方の比較や勤務医との差 開業医向け医院開業コンサルタントの費用相場|スムーズに進めるコツを解説

株式会社日本メディカルキャリア ライフ支援事業部

福松 洋祐

医師人生の集大成とも言える「クリニック開業」という機会に多く携わって参りました。今後開業を検討される先生方に少しでも多くの選択肢をお示しできるようご支援いたします。

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