医療法人の譲渡は出資持分によって変わる!手続方法や譲渡契約書の例も紹介 | 医院開業バンク

コラム

2020.06.30

医療法人の譲渡は出資持分によって変わる!手続方法や譲渡契約書の例も紹介

譲渡をお考えの方の中には医療法人化されているケースもあります。また、医療法人の譲受けを希望されてている方も多くいらっしゃいます。ただ、一口に医療法人と言っても、「持分あり」「持分なし」によって譲渡の手続き等は大きく変わります。

医療法人の譲渡・M&Aのをお考えの方は、案件の獲得や手続きなども含め複雑になることから、ぜひ専門家にご相談ください。

無料で相談する

医療法人の譲渡

クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム「医院開業バンク」編集部です。

経営している医療法人の出資持分の有無により、譲渡の際に取るべき手続きは大きく異なります。特に出資持分がない医療法人を譲渡する場合には、一切の譲渡対価を受けられない、ということもあり得るかもしれません。医院のM&Aも活発に行われる現代において、その譲渡にかかる手続き内容をしっかりと把握しておくことは非常に重要です。この記事では、医療法人の譲渡において必要な手続きについて詳しく解説します。

【参考記事】医療法人にしない理由とは|法人化するメリット・デメリットを解説!
【参考記事】医療法人の種類による違いや特徴|それぞれのメリット・デメリット

医療法人の出資持分とは

医療法人の出資持分とは、出資者が出資額に応じて医療法人に対して有する持分割合=財産権のことです。株式会社の資本金に近いイメージです。法人の定款において、出資持分(設立時に先生が出した元手)に関する定めを設けているものを指していますが、平成19年の法改正において新規に持分ありの医療法人の設立はできなくなったため、現在医療法人化する際には持分ありの選択はできません。

平成19年3月31日以前に設立された医療法人を対象とします。逆に、平成19年4月1日以降に設立された医療法人には、出資持分は付与されていません。

出資持分とは、医療法人のオーナーということです。この出資持分の有無によって、医療法人を譲渡するときの手続きが大きく変わります。簡単に言えば、出資持分があれば出資割合分に応じて、医療法人財産を受け取ることができますが、出資持分がなければ、どれだけ財産のある医療法人だろうと払い戻しを受けることができないのです。ちなみに、この財産は国や他の医療法人に帰属されることとなります。

参考:医療法人の基礎知識(厚生労働省)

出資持分がある医療法人

出資持分がある医療法人は、前述の通り平成19年3月31日以前に設立された、比較的古くからある医療法人がその対象となります。出資持分がある医療法人には、以下の4つの特徴があります。

・医療法人の解散時に財産の返還を受ける権利がある
・(出資者が複数の場合)医療法人の財産の返還を出資割合に応じて求める権利がある
・出資持分を相続させることができる
・相続発生時には相続税がかかる

譲渡に必要な手続き

医療法人を譲渡、もしくは贈与する場合には、その事実を議事録に残す必要があります。そのため、社員総会を開催しなければなりません。また、複数いるうちの出資者が財産の返還を要求した場合には、医療法人として、その持ち分を買い取る必要が生じます。その買い取りに要した費用の出どころについても、しっかりと記録しておくようにしましょう。

また、譲渡が発生した場合には必ず贈与税が発生します。持ち分の譲渡が成立した場合には、指定の期日までに必ず申告を済ませ、贈与税を納めなければなりません。

また、下記で詳しく記載する「出資持分譲渡契約書」も作成する必要があります。

譲渡の注意点

複数の出資者がいる場合、一人の出資者が財産の返還を求めてきたときには注意が必要です。例えば、医療法人の財産が10億円あり、出資割合はAとBがそれぞれ2分の1ずつ有しているとしましょう。

ここでBが持ち分に応じて、財産の返還を求めた場合、医療法人としては5億円を支払わなければなりません。また、Bも相応の贈与税を支払う必要があります。贈与税は多額になる上、キャッシュで支払わなければならないため、医療法人としても5億円をキャッシュで支払う必要が生じます。

10億円の価値がある医療法人とは言え、大部分は設備投資に回していることが多いため、5億円をすぐにキャッシュで支払うのは無理な場合もあります。すると、キャッシュを作り出すためには、医療法人を解散させるしか選択肢がなくなることも考えられます。

開業コンサルタントに相談する

出資持分がない医療法人

出資持分がない医療法人の特徴は、出資持分がある場合とは真逆になります。つまり、平成19年4月1日以降に設立された医療法人です。比較的新しく設立されたできた医療法人が対象になると考えると良いでしょう。出資持分がない医療法人には、以下の3つの特徴があります。

・医療法人の解散時に財産の返還を求める権利がない
・権利の相続ができない(そもそも権利自体を有していない)
・相続が発生しても、相続の対象とはならない

譲渡に必要な手続き

出資持分がない医療法人の譲渡は、定款の変更や各種行政庁への届け出のみで手続きは完了します。持ち分の譲渡がないため、贈与税が発生することもありません。もちろん、持ち分相当の払い戻しを請求することができません。よって、出資持分ありの医療法人と比較すると、比較的簡単な手続きで譲渡を済ませることができます。

医療法人を手放す人が報酬を求める場合には、別途役員退職金を受け取るための契約を締結したり、相応の手続きを踏んだりする必要があります。

譲渡の注意点

出資持分なしの医療法人を譲渡する際には、他社へのM&Aによる売却の際に、出資分相当の払い戻しを請求できないという点に注意が必要です。

譲渡に対する対価の支払いを受ける場合には、譲渡が成立した後に、退職金という形で受け取ることになります。しかし、退職金には受け取れる金額の上限があり、具体的には以下の式により計算されます。

退職金=最終報酬月額×勤続年数×3

どれだけ医療法人の収益性を高めておいたとしても、上限を超える報酬は受け取ることができません。

出資持分譲渡契約書とは

出資持分ありの医療法人を譲渡する場合には、出資持分譲渡契約書を作成する必要があります。どんなタイミングで、またどんな内容の書類が必要なのか、具体的に解説をします。

出資持分譲渡契約書の作成

出資持分譲渡契約書の作成は、譲渡契約が成立する際に行います。口約束での契約は無効であり、きちんと書類でもって契約を締結しなければなりません。また、具体的な譲渡価格を定める際には、事前に社員総会を開催して議決をとる必要もあります。

契約書には譲渡期日を記載する項目もありますので、その他の手続きも含めて、期日までに終わらせるようにしましょう。

出資持分譲渡契約書の例文

出資持分譲渡契約書には、主に以下の内容を盛り込む必要があります。

・譲渡人
・譲受人
・医療法人名
・出資持分の金額
・譲渡価格
・受け渡し日
・受け渡し条件(支払い方法)
・契約締結日

手続きをスムーズに進めるためにも、書類の記載内容に不備不足がないように気を付けましょう。

まとめ

出資持分の有無による譲渡方法の違いについて解説しました。特に大きな違いは、出資持分相応の払い戻しを請求する権利があるか否かという点です。出資持分なしの医療法人を譲渡する場合には、退職金の支払いを求めるなど、別の手続きが必要になりますので、その点についてもしっかりと把握しておきましょう。

医院開業バンクへの無料個別相談

医院開業バンク編集部

編集部

医師の転職・採用支援に20年以上携わる医院開業バンク編集部が、開業に役立つ情報をお届けします。

一覧に戻る